#4_WANDSがガンズになった話

キョンシー時代を経て小学校中学年、ごくごく普通の子供。
昼休みは、友達と絵を描いたり好きな子の話をしてキャッキャした。
どんくさ子なので、一輪車には乗れなかったが、ドッヂボールは大得意だった。
顔面でボールを受けた時、大好きだったひろくんが心配してくれた。
おさむくん。顔に当ててくれてありがとう。

高学年になると流行りのテレビや歌手に夢中。
お小遣いは全てCDを買った。
シングルCDは折らずに透明のケースに入れた。
はじめて買ったCDはチャゲ&飛鳥。
何故チャゲアスなのかは今も謎だ。
妹はおばけのホーリー。
ラジカセの前で寝転んで二人で夕飯の時間まで歌った。

ある時、流行っていたWANDSのミニアルバムを買いに隣町のCDショップへ連れていってもらった。
いつもは1000円なのに、今回は3000円だ。
清水の舞台だ。

WANDSが大好きだった。
おませな私の脳内では、私のファーストキスの相手はWANDSだ。
WANDSの誰とかじゃない。全員だ。
ひょんなことからWANDSと出会い、私のために楽曲を制作し、とっても良かったよと言うと彼らが優しくキスしてくれるのだ。
いつも私が遊んでいる、くそ錆びれたまるさんかく公園で。
その年、WANDSはレコード大賞をとり、受賞のスピーチでは、私に愛を叫ぶまでが一連のストーリーだった。私は「もっと強く抱きしめたなら」と言わせてしまうほどの女なのだ。

そんな大好きな彼らが私のために制作したアルバムを買いにいくんだものご機嫌もご機嫌だ。胸がアツすぎて震えてたと思う。
やっと会えたねぐらいのテンションでご機嫌に岐路についたものの、買ってきたのは、まさかのガンズ&ローゼスだった。
違う違う、そうじゃ、そうじゃない。
ワンズだ。ガンズではない。
ろくに見もせず隣にあったCDを買ってきてしまっていた。

再生の三角のボタンを押したらまぁピーチクパーチク知らない言語。
私が求めていた3人組は、よくわからないどこかの国の男になっていた。
おひとりなのか、バンドなのか、&ってついてるし2人組‥?チャゲ&飛鳥のそれなのか。
もっと強く抱きしめたならと言っていない事だけは分かった。
この時、おそらく人生ではじめての「ズッコケ」をしたと思う。

だけどポジティブ小学生は、しょんぼりしない。
彼らからおあずけをくらったんだ。
まったくもう、次のお小遣いまで会えないよ?
「もう!」ではなく「んもぅ♡」だ。
WANDSったら!

なんなら「はじめての洋楽」にだいぶ浮ついた。
子供なのに洋楽を買っちゃう私ってばかっこいいと酔いしれた。
どこの国の何さんかもわからなかったが、気持ちはあがったし、ちゃんと自分で自分を強く抱きしめられたのでOK。

そもそも「買ったことに満足」しているので問題なしだ。
キョンシーの時からそう、何かしら手に入れたら満足なのだ。

今となれば。
陳列どうなってんだよと思わなくもないが、何十年も経った今でも酒の席ではいいツマミになってくれている。
5年生のちゃむちゃん、ありがとう。
WANDSさん、ありがとう。

そんなおてんばエピソード。
微笑ましくも逞しい小学生時代だったなと
これを書きながら改めて今WANDSを聴いてみる。

一期か。そうか。今はこんな感じなんだ。
歴史だねぇ。

嗚呼、こんな歌詞だった。
そうそう、これよく歌ってたな。
これ好きだったなぁ。
あれもこれも。

色褪せない歌と思い出に
時の扉を開けっ放し。


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