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SUGU プロジェクトスタートの日まで

毎度〜。
という挨拶をしたいところなんですが前回noteを書いたところから1年以上の月日が経ってしまいました。

なんと恐ろしくも早く進む時間、地獄的な日本の暑さに大きくやられながらのお届けです。毎度〜。

ぼくは三重県四日市市という場所を拠点に、BECK CREATIVE WORKSというギルド型のクリエイティブチームをつくっています。

同じく四日市市に、ぼくらの店舗型のプロジェクト、BECK COFFEE LOUNGEという珈琲屋があります。

今回はこの場所で、約2年かけてあたためてきた『SUGU』というプロジェクトの初お披露目があるということで、SUGUとはなんぞや?の説明を兼ねて、美杉の魅力をばっちりお伝えできたらなと思います。

飽きるところまできたらあと1歩先まで読んでください。


ジャーン。SUGUの商品たち。


『SUGU』とはなんだろう?

SUGUは三重県津市の美杉町という場所で、林業を営むNPO法人もりずむ(以下もりずむ)とBECK CREATIVE WORKS(以下BECK)の協同プロジェクトです。

もりずむは「森と林業を元気にしたい」という思いで2012年に三重県津市美杉町にて設立されました。

もりずむの林業は新月伐採、葉枯らし乾燥を採用し、材木としての高いポテンシャルを引き出し、かつ環境負荷の無い森と共存可能な方法です。

SUGUは美杉町という自然豊かな場所で林業を営み、杉を活かしたものづくりを通して自然との共生を目指すプロジェクトです。

出逢い

ぼくともりずむの出逢いはもう2年以上も前で、BECK COFFEE LOUNGEの立ち上げ準備のとき(厳密に言うとこの前にプロジェクト0である亀山のTSUMUGI舎のカフェ立ち上げのタイミング)にテーブルの天面に使う木材を探していて、ご縁あって紹介していただいたのがもりずむでした。

そこでカウンターの天面を選んでいる時に「林業興味あって….」って話をしたら「ぜひやりに来て!」とのことで翌月林業のお手伝いをさせていただくことに。

実際に体験しながら林業のことをたくさん教えていただきました。BECKはもともと、ブランドとして、環境問題に対して何かしらのアプローチをしたいよねっていう大雑把な目標があって、

でも今は具体的に何をしたらいいか分からないから、できるだけ農林水産に関わり、身体を使ってインプットをする時間はつくっていこうぜ。みたいな思想を持っていました。

いつも教えてくれる片山さん

美杉はほんとに水が綺麗で、山が青くて、生き物がたくさんいて、ずーっと景色と空気がいい場所です。広大な杉の人工林があります。とっても好き。

お世話になっているもりずむ、木こりの三浦林商さんは映画『WOOD JOB!(ウッジョブ!)』のモデルでもあります。

WOOD JOB!

林業と地球環境

もりずむの林業について。

みんな小学生のときに植物のはたらきについて学んだと思いますが、木って地球にないとあっさり全員死にます。

で、人間はもちろん、この地球を借りて生命を育んでいるわけなんですが、人間だけ食物連鎖の外側でコントロールできるポジションを何故か神に与えられてしまってるんですよね。

地球にとって植物はなくてはならないものですが、人間の生活にも木材は必要不可欠になりました。昔から、今もずっと、人間は地球の持ち物である植物を切り倒し、生活に使っています。

なので当たり前だけど、林業って地球の生命維持とすごく密接な場所にいる職業です。

人口の増加に伴い、建築物も増えました。木材が必要になりました。 

でかい機械を使って木を片っ端から切り倒し、化学燃料を使って乾燥作業を行い、材木として利用します。

木が全て切り倒され、山肌が見えた状態の場所を目撃したことはあるでしょうか?あれが元の状態に戻るには50年以上かかると言われます。土地の栄養は失われ、根が死に、山自体が脆くなります。

大雨があると土砂崩れが起こったりもします。食物連鎖は崩れ、生物の多様性を失います。

まったく異なる方法で林業をする人たちもいます。山は木が多ければ多いほどいいというものでもないそうで、適度に伐採をして太陽光を中まで入れてあげることでさらに健康な状態を保てます。

山と対話し、森の健康を守りながら人間の資源も確保します。「これは残して、これは切ろう。」「これを切るとここに光が入ってくる。」もりずむはそのように林業を営む組織の一つです。

新月伐採、葉枯らし乾燥って?

もりずむが採用している新月伐採、葉枯らし乾燥。

これらはなんでしょう?

もりずむは満月の状態から月が欠けていく期間に木を伐採します。

月と地球は目に見えない力で密接に関係しており、新月に近づくにつれて多くのエネルギーを木に蓄えるそうです。木の持つエネルギー値が一番高いタイミングで伐採するわけです。

伐採(ばっさい)
立木をそのまま一本、根元から切ることを指す。 林業においての伐採は材木を生産するために行うもので、材木を取るための丸太にする「主伐」や、人工林のコンディションを整えるために間引きをするための「間伐」や「除伐」と作業工程によって言い方が変わる。


そして葉枯らし乾燥。
先ほども少し述べた通り、ホームセンターなどで購入できる角材などのほとんどは、伐採した木を化学燃料を使って早期乾燥させ、製材し、出荷しています。

このような材木は「木の姿をしたミイラ」とも言われ、防虫作用やリラックス効果など、木が本来持っている能力はほぼ失われているそうです。

生産過程で化学燃料を大量に燃やすので環境への負荷も大きく、なので「現代建築で木をいっぱい使ってて、でサスティナブルっす。」みたいなものってたくさんあるけど、使ってる木材によっては製材までのプロセスで環境を汚しまくってる場合も全然あるってことですね。

で、葉枯らし乾燥って言うのは何かというと、、
木を切り倒した後に半年から1年、その場に放置します。倒して、一旦終了。森の中に放置して自然の力で水分が抜けていくのを待ちます。

水分が抜けていき、木の重さが伐採時の半分くらいになるそうです。そこからようやく、山から出してくる作業。その後、製材をする流れです。

製材(せいざい)
丸木から角材や板などを作ること。


ちなみに、雨が降ったらまた湿っちゃうジャン。と思って質問してみたんですが、木が体内に取り込んだ水分と雨で濡れて湿ってる状態の水分というのは全く別物で、後者はすぐに空気中に出ていくそうです。

※SUGUの製品の木材も多くは新月伐採、葉枯らし乾燥ですが、100%ではありません。


もりずむの想い

「もりずむの木材はとにかく良いが、触れてもらう機会が少ない!」

もりずむが伐採した杉の多くは建築材として加工され、住宅の一部になることがほとんどです。家を建てる方にしか触れてもらえない、家を建てても壁の中に隠れてしまう場合も多いというのが現状です。

本当に素晴らしい木材だと思ってやっているから、もっとたくさんの方、特にお子さんやそのご家族にも触れてほしい。

そんなもりずむの想いがきっかけで、建築材としてではなく、生活に近いところで木に触れてもらえるプロダクトをつくろう!

となったのがSUGUの始まりです。


試作中の様子



「ほんと、子どもたちって特に感度が高いんだよね。森に遊びにくるとさ、普段おうちでゲームばっかりしてる子がギャンギャン遊ぶんでお母さんお父さんがびっくりするんだよね。

だから子どもが触れるようなものが作りたいんだよねー。」

ってもりずむ理事長の藤崎さんが話してくれたのがもう2年くらい前ですね。早い。。。

SUGUの誕生

さてさて、こうしてプロジェクト『SUGU』はもりずむの皆さんとBECKのデザインチーム3人でつくりあげていくことになりました。

もりずむ理事長 藤崎さん
(代表の人)
もりずむ副理事/三浦林商 三浦さん
(木を切ってくれる人)


もりずむ副理事 水町さん
(SUGUプロダクトを作る人)


BECKデザイナー 高田颯平
BECKデザイナー 高田陸央
BECKデザイナー わたし

もりずむの木工プロダクトの「生産」を担うのは水町さん(写真3枚目)。
水町さんの制作は対話を感じます。

木の節や木目の流れを見ながら、それに沿ったり、避けたりしながら刃を入れ、削り出します。水町さんが形を決めて切り出すのではなく、木が形を選んで成る。

そして使い方は受け手が決める。SUGUが「これはこういう用途で使うんだよ。」って言うのではなく、感じたままに使ってもらいう。

たとえばスツールは、スツールとして使わなくてももちろんOK。寝室のサイドテーブルとして使ってもいいし、2つ重ねて空間のアクセントにしてもいいし、アクセサリー置きに使ってもいいよね。みたいな。

木の『素』のままを表現し、届け、『道具』としての用途は受け手(購入者)が感じて選ぶ。

素具。SUGU。

SUGUにはそんな意味が込められています。


SUGUの「Mokume Stool」

ロゴマークは、『美杉からの自然の恵みを届けていく』という想いのもと、入出国の際にパスポートに押されるスタンプがモチーフになっています。


掲示物の初期案



プロジェクト名を考える中で30案くらいのネーミングが出しました。

「SUGUいいんじゃない?」ってなってきたタイミングで、杉の語源は「空に向かって真っ直ぐに伸びる木(まっすぐ→すぐ→すぎ)」から来ていることを知り、「完璧やないか!!!」と決定打になりました。

ブランドコンセプトは、『森の恵みを素のまま届けます』

美杉の大地からの恵みをできるだけ素のままで、皆さんに届け、触れてもらう。SUGUがまず、目指していることです。

かたちが違うという美しさ

SUGUは、森から切り出された木材を、なるべく素のままで生活に馴染む道具に仕上げました。木材の特性を見極めながらかたちを決めていくため、一つとして同じプロダクトはありません。

左右対称の綺麗な美しさも美しいし、自然の流れによってつくられた偶然の美しさも美しい。

SUGUは一緒のものを作れません。一期一会を大切に、木と対話してお気に入りを見つけていただければ嬉しいです。


これもSUGUの「Mokume Stool」



これは個人的な意見ですが、自然界に100%同じは存在しないんだから、やっぱり生物的な美しさは好きだし、そういうものに惹かれるのは自分が生き物であるからだろうなと思います。まあぼくは数学的な美しさも好きですが。

プロダクト向きではない?

杉の木は水分量が多く、やわらかいのが特徴です。

建築材としては強度としなりがあり、火にも強くて適しているんですが、木工プロダクトとなると簡単に傷やヘコみができてしまうので適している材ではないのかもしれません。

加えて、SUGUのブランドコンセプト、『森の恵みを素のまま届けます』通り、基本的にはコーティング加工無しの無垢商品が主戦力となります。
(一部撥水セラミックの加工を施した商品もあります。)

一見プロダクト向きではないのですが、SUGUはこの『素のまま届けます』を大切にし、変化していく美しさを共有できたらと思います。

特にSUGUのスツールなんかは、ずーっと、長い時間をかけて家庭で育ててもらえる商品なんじゃないかなーと思います。

お子さんが産まれたタイミングで一緒に家に迎えいれ、子どもがたくさん触って色が変わり、少し大きくなったら椅子として使い、椅子としての役割を終えればベッドのサイドテーブルとして使って、孫ができたらまた触れる場所に置いて….と。

たぶん、表面の色は暗く落ち着き、小さな時についた噛み跡や、お茶をこぼした時のシミは残ったままになるはずです。

家族とずっと一緒に、いろんな想い出が刻まれ、育ち続けるような。歴史を一緒に振り返れるようなアイテムになればいいなと思います。

素のまま。
それは歯形がついていくことだったり、こぼした紅茶のシミがつくことだったり、乾燥してヒビが入ってくることだったり。それらを美として、変化を楽しみ、一緒に歴史を刻んでいく。

そんなものづくりをしていきます。

今回の展示に関して

今回はSUGUの初お披露目の場として、BECK COFFEE LOUNGEにて約10日間の展示です。スツール、カッティングボード、コップ、豆皿などの展示、販売をしています。

展示空間には美杉から本物の杉を大量に運び込み、森に入ったかのような店内に仕上げました。扉を開けた瞬間、杉の香りに包まれます。一生いれるぜ……


森になった店内

展示スケジュール

展示スケジュールはこんな感じ。

2023年8月
11日(金)13:00〜17:00/19:00〜23:00
12日(土)13:00〜17:00/19:00〜23:00
13日(日)13:00〜17:00/19:00〜23:00
14日(月)13:00〜17:00/19:00〜23:00
15日(火)定休
16日(水)19:00〜23:00
17日(木) 19:00〜23:00
18日 (金)13:00〜17:00/19:00〜23:00
19日(土)13:00〜17:00/19:00〜23:00
20日(日)13:00〜17:00

ちょっとすみませんなのですが、16日、18日の夜、19日20日終日は店主であるわたくしおりませぬ。デザイナー2人はいます。

タイミング合えばぜひ、美杉を感じに来てもらえると嬉しいです!
もちろん見るだけでオッケー、それだけで我々嬉しいので、買わないと!みたいなプレッシャーはゼロで来ていただけると幸いです。


SUGUの今後

ようやくスタートしたプロジェクト『SUGU』
まずは多くの人に実際にみていただく機会をつくっていけたらと思います。

三重県内と県外は同時並行で作品展示と販売会を組んで行けたらと。
BECKでの展示後は決まっていませんので、みなさまよかったらお力添えください。都内での展示も検討中です。

ではでは最後までお読みいただきありがとうございました!よきお盆ホリデーを。

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