いつもなら我慢するのに勇気を出してみたものの課題もできた話
電車の隣に座った男性のイヤホンから大音量が漏れていた。我慢しようと思ったが、終点まで乗る私は最後まで一緒なのは勘弁して欲しいなあ、と不安になった。一駅すぎて、やっぱり大きな音で音楽が聞こえている。周囲の乗客がみんなその男性を見ていた。同じ車両の遠くにいる人もこちらを見ている。あんなところまで聞こえているなんてやっぱり音量が大き過ぎるのだ。
つい先程まで、近視に乱視、遂には老眼まで抱えた目の悪さに対して耳だけは良い私だから、この音も神経質に考え過ぎる音量なのかと我慢していたのだ。でも、違うようだ。私以外の乗客の様子から私だけが気にするレベルの音量ではない事がわかった。乗客は度々その男性に目を向けている。気付けと言わんばかりに。
とても迷ったが思い切ってその男性の肩をトントンと叩いた。私を見た男性に「ごめんなさい、ボリューム下げてもらえますか」とお願いした。男性は何も聞こえなかったらしく、怪訝そうな顔をしてイヤホンを外した。そこで私は「音漏れてますよ」と言ってみたところ、「あ、そうですか」と言って直ぐに手元の操作をしてくれた。すっかり音漏れがなくなった。ただ音量を下げただけなのか、それとも自分だけ聞こえるように設定し直したのか、機械音痴の私にはわからなかったけれど、とにかく静かになった。
静かになったその中でこれで良かったのかと考えた。もう少しすスマートな言い方があったんじゃないかと。十分人生経験を積んだ年齢なんだよな私、と何の芸もないストレートな物言いしかできなかった自分の裁量のなさに呆れていた。誠にお粗末だったと思う。
「あら〜良い曲ね。なんて言う曲?」
なんて言ってみたらそこで会話が弾んだろうか。
いや、お喋り始めてどうするんだ。
音漏れしてたと気付いてもらえただろうか。
また電車で一緒にならないとも限らないと思ったら、なおさら考えてしまう。相手の気分を害さないお願いの仕方が絶対にあったはず!
私も若かった頃に注意された事があって恥ずかしかったから。大好きな音楽に酔いしれて、そう、こんなにいい曲なんだからみんなも聴いたらいい気分になるはず↑↑と思い込んでいた。周囲の迷惑を考えられなかった若気の至り。注意されて気分は下がったから、その男性も同じ気持ちになったんじゃないかと思うのだ。
気分を害さないようにお願いするのって難しい。
スマートな言い方、あるはずだよね。
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