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彷徨う白くて長い脚

   「落花流水」

段ボール箱に引っ越しの荷造りをしていると、一枚の手紙が出てきた。それは一年くらい前に私が彼に書いたものだった。結局渡すきっかけがないまま、今もこうやって私の荷物の一部になってしまっている。捨てようかと迷ったが、そのまま段ボール箱の隙間に押し込んだ。


「落花流水」という言葉を知った時から、ふと気が付けばその言葉がいつも私の中にありました。
自分の弱さや無力さや孤独感、願いや切なさや喜びを、私は誰かに知ってもらいたかった。
私は誰かの、苦しみや汚さや喪失感、優しさや楽しみや自由を、知って生きていきたかった。
私は自分だけの為に生きれないみたいです。
私は自分の価値を、たった一人の中に見出したかったのかもしれません。
今でもそれが私にとって幸せなことのように思えて憧れます。
だけど我が儘だから、未だに勝手に一人ぼっちを続けてる。
 最近、小さないいこと、細やかな思い遣りをちゃんと受け取れるようになりました。
望んでも叶わないのに、無くならない気持ちを知りました。
頭にフィルターが掛かって現実感の薄い私の視野だけど、私は私のままでしか生きれないんだと気付きました。
 嫌でも損でも辛くても、知らないでいるより知った先の人生を選ぶことを迷いません。
私と出会ってくれてありがとう。
あなたは私を形成する一部になってくれた特別な人だよ。
例え思い出して悲しくなったとしても、長い月日が流れて歳を取ったとしても、忘れたくない記憶ばかりです。
会えるかもわからないのに、クリスマスカードもバレンタインも早々と用意して微かに期待していた私は、期間限定の精一杯の女の子だったと思います。
自分の誕生日とFacebookは、コントロール出来ない程の独占欲が原因であなたと共有することが出来なかったけど、それもたぶん伝わらない乙女です。
自分の嫉妬心に負けてしまう私は本当に弱くて情けなくなる。
あなたは甘いと言うかもしれないけど、私はもう血だらけの迷子なのです。
殺すのも生かすのも、逃げ場がないタイミング次第みたいなもの。
一緒に最高の思い出を作って、大事な気持ちを育てて、でも最悪な出来事も続いて、取り返せないくらい捨てて、それでも愛しさだけが残った。
私はあなたと流れて行きたいです。果てを見たいです。流れた果てで溶けてしまいまい。
そのためには信じてもいない来世さえ作り上げてしまう。
未来の私たちは今の私たちをどんな風に思い出すのだろう。
私は女の子だから、狡くても逃げたいです。あなた任せに頼りたい。
あなたはそれをどういう風に思うのでしょうか。
私はこれからもやっぱり落花流水なのかな。
これは出会ってから二年が過ぎた、まだ寒い春の真夜中の手紙です。
不安定な毎日のちょっとした隙間に訪れる、穏やかな時間に書いた戯言みたいだね。
今夜は一緒に眠れることが嬉しいです。二人共、怖くない夢を見れたらいいね。

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