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金木犀の通学路
6
私は男には異常に人気があったが、女には異常に嫌われた。異性にモテて同性に嫌われるってよく最悪な性格の例えに使われている気がするけど、それが私だった。小さい頃には学校で女の子たちにいじめられていたし、職場でも嫌われて嫌がらせもされた。私は男にはひどいことや嫌なことをするけれど、逆に女にはまったくしたことがない。むしろ気を遣ってさえいる。なのに全然効果はなくて、今の職場で言えば、単純な無視から、財布盗まれる、変な飲み物を飲ませられる、とかいろいろ嫌いアピールをされた。もちろん何かした覚えはない。なぜ挨拶しても返事してもらえなかったり、ビールと焼酎混ぜたものをニヤニヤしながら出されたり、陰で悪口を言っているのを更にわざと聞こえるようにするのだろう。
「どうしてですか。私何かしましたか」と一度聞いたことがある。その人は店の女の子たちには中心的な人気があるが、お客には人気のない、私とは真逆の人だった。
「変だから。人と違うことばっかり言うからよ」と彼女は教えてくれた。彼女はいい人だった。だから事実を本心で言ったのだと思う。また、他の先輩からは「怖いから」と言われた。いつもニコニコしているけど、ふと真顔の時の顔が怖いと。それも本心であり、事実かもしれなかった。私は結局、普通にはなれそうになかった。私は普通の女の子になりたくて、でもそれは不可能だと納得した。薄々は諦めてはいたけど。
私だって普通のお母さんとお父さんがいる、普通の家庭の子供に生まれたかった。お母さんが当たり前にごはんを作ってくれて、休みの日はお父さんが家の壊れた部分の修繕をしてる、できれば犬なんか飼ってれば尚嬉しい、そんな家族のところに生まれたかった。
私も夢は、子供は3人くらいで、団地の主婦仲間と生協を利用して暮らす、子育てと家事と井戸端会議に忙しい主婦になりたかった。旦那の愚痴と子育ての悩みをママ友達と公園でしながら、家では旦那とマイホームの計画をコツコツしている、そんな女になるのが夢だった。でもきっとなれない。私は絶対にそうはなれない。幸せを知らないのに幸せは作れない。