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彷徨う白くて長い脚

   「次の場所」

トラックに積み込まれる段ボール箱や家具家電を、私は少し離れた場所からしばらくの間眺めていた。見慣れた私の持ち物が、次の場所へと移される違和感。選別された必要な物たち。私が選んだ物。

どんなに言い争っても、打撃を与えても、もう二度と会わないと言い合っても、それは無駄な抵抗であると二人共わかっていた。損害や傷は増え続け、取り返しがつかないものも増えていく。それでも離れることが出来ないのは、恋愛の甘さを大きく通り越して、依存や意地や情や慣れや呪いのようなものがドロドロに繋いでいるからかもしれない。
彼は今ここにはいない。これから行く先にもいない。でもきっと来るだろう。いつか。そのうち。私をまた見つけ、堂々とこっちに向かって歩いて来るに違いない。甘くて、そして何か覚悟を決めたような表情で私を見て少し笑うだろう。背が低い私は背の高い彼を、また首が痛くなる角度で見上げなければならないのだ。

荷物を積み終えたトラックは扉が閉められ、エンジンのかかる音がする。
私はゆっくり、次の場所へと歩き出した。



 今回でこの「彷徨う白くて長い脚」も終わりです。これは私が今までで一番精神的に病んでいた時期に書いたものです。その頃の記憶はほとんどなく、読み返しても自分が書いた気持ちにもなれなし暗いしキモいです。でも私が書いたものに間違いなく、そんな自分も受け止めなければなりません。

 私は病んだ時によく文章を書く傾向にあるみたいで、書くことで精神の安定を試みたり時間を潰しているんだと思います。私の古くからの友達を真似して自分の恥やキモさや暗さを曝け出して、ジタバタして生きて行こうと思ってます。友達っていいね!

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