金木犀の通学路
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真っ赤な夕焼けの中、赤とんぼのメロディーが聴こえる。
隣を見るとマモルの顔に夕焼けの赤が反射して陰影を浮き上がらせている。きっとマモルから見る私の顔も、高めの頬骨を浮き彫りにして真っ赤な夕焼けが反射して見えることだろう。陰影の途中に流れる涙が光っているだろう。
私はこの町で、夕焼けの赤とんぼを聴きながら祈った。幼い私は夕暮れの眠りから覚めて壮絶な闇を感じた。大人にも助けを求められない、誰にも伝えることができない不安に絶望した。
この世は、この世はなんて生き辛い。
愛おしくて厳しいものなのか。
私は確かにこの場所に生まれてきた。
今ここに生きている。
寂しいと思う気持ちや喜ぶ気持ちを持っている。
愛かもしれない原石もまだ捨ててない。
隣にはマモルがいる。
私の事なんて大事なことはほとんどわかってくれていない。マモルと私は、相容れない。
こんな人と愛し合えるなんて今の私には到底思えないし、この先の可能性を考えても暗澹としてしまう。そういうことについてマモルがどう思っているかはわからないけど。
それでも今、この瞬間に今ここで夕焼けの中、赤とんぼを一緒に聴いているのはマモルなのだ。何の廻り合わせなのか、でも絶対的なタイミングでこの二人がこの瞬間を共有してしまったという事実は、強いものだと思った。私の一部に潜り込まれてしまった。それは大事なことだ。この先、マモルは離れても、共犯者のような私の過去の侵入者なのだ。それはやっぱり愛のようなものではないのか。
また夢を見た。私は毎日必ず夢を見る。そして起きても覚えている。夢は時に現実よりリアルで、精神が不安定な時はどっちが現実なのかわからなくなったりする。そしてその日一日を夢が占領してしまう。私の夢は、似たような場所、同じような背景、決まった設定、繰り返すシーン、連続する確かさがある。だから私の夢は、重い。
~友達から夕泣きの続きが読みたいと言われ、過去のデータを探して、夕泣きに関連がありそうな散文を寄せ集めて投稿することにしました。投稿に時間がかかったり、順序間違ったりしてるかもしれないけど、なるべく物語が通じるように頑張ります。~