美術家と料理 : 春の筍
こんにちは、アーティストの新造真人(@makotoshinzo)です。
食事とは、食のことですから、口に運んで噛んで、はい終わり。ということではないと思います。食材の調達、調理、器の選定、盛り付け、そういったことが口に運ぶ前にあります。
また、食卓という言葉を思い浮かべれば、誰と食べるのか、何故その人か、何故その献立か、さらには会話などの交流も生まれます。ですから、食事は、実は一つ一つの選択に実は豊かな選択肢から選ばれた背景があり、そこに心を傾けると、とても豊かになると思います。調理はまだまだ練習あるのみですが、食材の選定や、盛り付け、さらには撮影といった時間がとても大好きです。これを、道楽と言えるように、もっと時間を注ぎたいです。
一皿目 : 食材の調達
今日は、春の食材を使った2品を紹介します。その布石として、まずはこちらの写真をご覧ください。家の裏庭から見える風景です。
私の家(今回は三鷹)の裏には竹林があります。左手には住宅が見えるかと思いますが、家のあたりは畑や林が多い地域です。この竹林はお隣さんのもので、家の窓からこの竹林と、果樹園が見えます。晴れの日に、窓から空を眺めて読書をしたり、お茶を飲むのは、とても好きな時間です。論文を書くときには、大変癒される風景でもあります。
今日は庭で筍を探していたら、30秒ほどで見つけました。一応竹林はお隣さん敷地ですが、敷地の境界線にフェンス越しに時々筍くれたり、果樹のお裾分けをもらうので、まあ大丈夫でしょう。困るくらい竹が生えてきますし、家の敷地内ですし。そんなわけで、スコップで掘ります。
こちらが本日収穫した筍です。掘ったことがある方はわかると思いますが、このサイズだと可食部がほとんどありません。気持ち的に1/7くらいが食べれるサイズです。今回見つけた筍は大きな石に囲まれていて、掘り進めるのが難しく、苦戦しつつもこのサイズが私には限界でした。掘りながら「よくこんな厳しいところに君は生きているなぁ」と、関心していました。
そして、掘りたての素晴らしいところは、鮮度です。八百屋やスーパーのは立派ですが、いつ収穫され、買って家に持って帰るころにはどれだけ時間が経過してるかわかりません。大抵は米糠と唐辛子でアク抜きをしますが、掘ってすぐ食べるので、必要ありません。
二皿目 : 焼き筍
まずは一品目。焼き筍です。掘りたての皮を剥いで、水で土を落として、アルミホイルで包んで、オーブンへ。良い匂いがしたら取り出して、醤油を垂らしていただきます。
上には、これまて庭で収穫してきた山椒の葉っぱを。摘んだものを水でサッとあらって、パッと両手で叩いて、スワァッと香りを広げて、筍の上へ。香りがあると、食欲が、唸りをあげます。お気をつけて。
三皿目 : 筍の天ぷら
こちらは、時が変わって晩酌。筍を天ぷらにしていただきました。左上にあるお猪口に入っているのは、実は水です。喉を壊していてお酒が飲めないので、せめて雰囲気だけでも、と、水を添えました。笑
小麦粉と水をシャッシャッと軽く混ぜ合わせて作った衣を筍にまとわせて、熱しておいた油の中に。香りと色とがどんどん変わっていきます。油の匂いと音はさながらディスコです。つくづく揚げ物とDJは似ているなぁと思いました。
天ぷらは初心者なので、まだまだ練習中ですが、今日は上手に仕上がりました(2年前に葉山に住んでいたときに食べた葉むらさんの天ぷらは、本当に美味しかった)。
四皿目 : 写真の説明
色数を抑える
今回は、赤い丸盆の上に、横長の角皿を配置しました。角皿はランチョンマットの色にあわせたものをつかい、全体的に色数を少なくしました。
四角と丸の対応
ランチョンマット(四角)→丸盆(丸)→角皿(四角)といった順序にすることで、一目でわかる規則性と気持ち良さを形から感じ、その中央に調理した竹の子を盛り付けました。
天ぷらは、揚げもので最初は紙をひいていましたが、四角→丸→四角の構図が壊れるので、簡単に表面の油を取ったあとは、紙は取り払いました。
食材を引き立てる舞台装置
今回は、焼き筍、および、天ぷらという非常にシンプルな調理です。見た目に派手さはありませんが、確かに美味しい食材です。なので、周辺環境によってその美味しさを引き立てる必要があると思いました。
また、焼き筍と、天ぷらとでは、角皿の位置を微妙に変えています。天ぷらの際は、左上にお猪口を配置しており、角皿を丸盆の中央に配置するとバランス(画面の左右の重さ)が崩れるので、角皿を若干ですが左上に寄せることで、バランスを整えています。
補色の赤と緑による品ある緊張感
山椒の葉っぱがあるかないかで、料理の印象も、味も、随分変わったものになります。この緑は、丸盆の赤と補色(12色相環の中で正反対に位置する色)にあたるので、色のコントラストがつき、画面にメリハリが出ます。引き締まり、品のある緊張感が写真から出ているのはこの緑によるところが大きいです。
また、箸置きには、私の足のコレクションを用いました。山椒の葉より、弱い緑を使うことで、画面の中の色彩の配分を壊すことなく、箸を馴染ませています。
今回はこちらで終わりです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
興味を持っていただいた方は、以下の「美術家と料理 : 深夜のペペロンチーノ」をご覧ください。