【創作SS】オリンポスでの日常②【ヘルメス】
オリンポスの宴にて
ディオニソス主催の宴は、オリンポスで最も華やかで自由奔放な集まりだ。酒の香りが大広間を満たし、音楽と笑い声が響き渡る中、神々は杯を手に歓談を楽しんでいた。
その時、大広間の空気が急に張り詰めた。
「おい、ヘルメス!」
アレスの荒々しい声が響き、神々の視線が一斉に向けられる。彼は杯を乱暴に置き、立ち上がると鋭い目でヘルメスを睨んでいた。
「お前、今夜何か企んでいるんじゃないだろうな?」
ヘルメスは他の神々の視線を受けながらも、いつも通りの軽薄そうな笑みを浮かべたままだった。椅子に腰をかけたまま、彼は片手に持っていた葡萄をつまみ、のんびりと口に運ぶ。
「え?僕?企むだなんて。そんなこと考えてないよ。」
「嘘をつくな!」
アレスが勢いよくテーブルを叩き、葡萄酒が揺れる。
「お前が居るときはいつだって何かある!」
周囲の神々はざわつき始めるが、ヘルメスは全く動じる様子がない。左耳に触れると、双蛇のピアスが淡い光を放ち、彼の手の中で瞬く間にカドゥケウスの杖へと変わった。
「やれやれ、僕を疑うなんてひどいなあ。」
ヘルメスは杖を軽く肩に担ぎながら立ち上がり、ゆっくりとアレスに向き直る。
「アレス、君ってばいつも直情的すぎるんだよ。」
「その口が気に入らないんだ!」
アレスは剣を引き抜き、殺気を漂わせながら一歩前に出る。
他の神々は動けずに見守るばかりだったが、そのとき黄金の光が大広間を照らした。
「そこまでだ。」
現れたのはアポロンだった。彼は威厳ある佇まいで二人の間に割って入り、アレスを睨む。その目には冷静さと同時に抑えきれない光が宿っている。
「アレス、落ち着け。ここは争いの場ではない。」
アレスは剣を握りしめたまま歯を食いしばったが、アポロンの言葉に逆らうことはできなかった。渋々と剣を下ろし、忌々しげにヘルメスを一瞥する。
ヘルメスはふっと笑い、皮肉交じりにアポロンを見た。
「兄さん、遅いよ。もう少しで僕、戦うところだったんだから。」
「君ならうまくかわすと思っていたけどな。」
アポロンは冷静に返しながらも、ヘルメスの軽口に軽くため息をついた。
「いやいや、僕って戦うの向いてないんだよね。それにしても、兄さんが来てくれて助かったよ。」
その場の空気が徐々に和らぎ始める中、ディオニソスが杯を掲げて笑った。
「ほらほら、皆もっと飲んで!今夜の宴はまだ終わらない!」
その声に神々が笑い声を上げ、宴の空気は再び賑やかさを取り戻していった。
ヘルメスは杖を再びピアスの形に戻しながらアポロンに小声で言った。
「ねえ、兄さん。こんな騒ぎを抑えるのも疲れるよね。」
「君が原因を作らなければ、もっと楽になるだろうな。」
アポロンは淡々と返しながら、杯を手に取って葡萄酒を一口飲む。
ヘルメスは笑いをこぼしながら首を軽く傾け、肩の力を抜いて椅子に戻ると、宴の続きに身を任せた。
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