田舎の猫 街に行く 第一話
プロローグ
「はぁ~、まいったなぁ……」
今日、何度目かになるため息をつく。
そして周りを見回す……んだけど、何もないんだな、これが。
「何で、こんな何もないところで迷うかなあ……」
森とか、山の中で迷うのならまだ分かる。
でも、ホント何にもないのよ。
遠くを見ても、見渡す限りの平原が続いているだけ。
私は軽い絶望感を感じながら、それでも歩き続ける以外の選択肢はなく……右足を一歩踏み出した。
私の名前は虹乃音子(にじのねこ)。
ただ今絶賛、道に迷っている最中なんだよね。
なぜ道に迷っているのかと言うと、もちろんちゃんとした理由がある。
私は、この春に田舎の高校を卒業した猫人。
育ての親はいるけど、生みの親はいない。
これについては複雑な事情があるので今は説明を省くけど、人間の優しい老夫婦に10年間育てて貰った。
私たちは実の親子のような関係だったの。
でも、人には寿命があるんだよね。
そう、私を育ててくれた老夫婦は、この春に亡くなったの。
2人とも時を経ずして……。
ホント、最期まで仲の良い2人だったのよ。
この世界には私のような猫人以外にも様々な種族がいるんだけど、やはり人間の数が一番多い。
私の住んでいたグリーンフィールドは山の麓にあり、畜産や林業が主な産業となっているどこにでもある田舎町なの。
ただ、私のような猫人はここでは珍しく、差別はされないけど息苦しく感じる事はあった。
そして、私は一大決心をしたんだ。