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田舎の猫 街に行く 閑話(2)
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「いたじゃん……」
「え……何がいたの?」
「魔王いたじゃん……アニメじゃないんだから、そんなのいないって言ってたくせに」
その日私はキャティの元に訪れていた。これまでの様々な事に決着をつける為に。誰の心が猫の額より狭いって? この偽情報発信者の『駄女神』が……
「偽の情報なんて発信してないわ。アレは魔王じゃないもの」
「じゃ、アレは何なのよ? あのアブラムシ」
「アブラムね。アレは……元は人間なのよね」
「う、嘘っ! あれは人間なんてものじゃ……」
「そうねぇ……ま、実際人間はやめてるわね」
そこからキャティが語った話の内容は私にとって衝撃的なものだった。
アブラム……アブラハムとも言うが、彼は神による人類救済の出発点として選ばれ、祝福された最初の預言者だったそうだ。「信仰の父」とも呼ばれ、この世界から失われた宗教の始祖でもある。
「待って待って……神なんてこの世界にいないんじゃなかったの? ホントはいるわけ?」
「だから無くす方向でって言ったでしょ? ペーパーレス化を推進するって」
いや、それは酷い駄洒落だとしか思えなかったんだけど……
「つまり私は神様の代理人に喧嘩を売って、殺っちゃったってことっ?」
「非常に残念ながらアブラムはまだ生きてるわ。アレは『ウリエル』に憑依してただけだから」
つまりウリエルは滅したけれど、アブラム本体は無事ってことか……。えっとウリエルって確か自分のこと四天使のうちの1人とか言ってなかったっけ? あんなのと後3回も闘うことになったりは流石にしないよね?
「それも非常に残念ながら、3回では済まないかもねぇ……」
「なんでっ? 四天使のうち1人は撃破出来たんでしょ?」
「貴女の元いた世界には、5人なのに四天王ってのがあったと思うんだけど?」
……確かにいた。五人揃って四天王って家臣がいた龍なんとかっていう武将が。でも、あれって4人目と5人目が部隊構成によって入れ代わるからじゃなかったっけ?
「ということは……」
「増えることはあっても減ることはないわねぇ……」
げっ、それキリがないって……
「大元を絶たない限り終わらないわね」
そんな『臭いニオイは元から絶たなきゃダメ!』みたいに。
「で……で、念の為に聞くけどその大元って……?」
「この世界の創造神よ」
「ナ、ナンダッテー!」
あまりの驚きに思わず棒読み口調になる私。
待て、待て待て待てっ!
創造神ってことは造物主ってこと?
え、生きとし生ける物を造り出した存在?
そんなのと戦って勝てるとマジで思ってんのっ?
無理ゲーに決まってんじゃん?
「1度は成功したのよ。あのロクデナシ……1度追放されたのに、また戻って来るなんて図々しいにも程があるわ」
創造神をロクデナシ扱い……それって大丈夫なん?
「あのロクデナシはね、この世界が自分の思い通りにならないからってリセットしようとしたのよ。自分のお気に入りだけを残してね」
その後にキャティが延々と語った創造神の話は、正直庇うことが出来ないなぁって思うものだった。
けどまぁ私が持った感想は、どこの神様も考える事は似た様なものなんだなというもの。きっと造物主にとっては人間なんてゲームの駒なんだろうなって思うと、少し哀しくなったくらいかな。
「仕方ない。喧嘩売っちゃった以上は最後まで面倒みますか……」
切り替えの早さは私の数少ない長所である。ま、明日は明日の風が吹くだろうし、ケセラセラよね。
キャティの淹れてくれたお茶を飲みながら、私はボンヤリとそんなことを考えていた。