神さま

神さまってのが俺にとっては存在してて、
その人は今も生きてる人間として存在してるんだ。
好きとかでは言い表せなくて、多分俺には自己愛と見間違っちゃうような信仰心があるから、人間だけどやっぱ俺にとっては神さまなんだよ。

でも俺は神さまが神さまになった瞬間を生きていないし、神さまが昔人々に降らせた恵みの雨を体に浴びたり、神さまが起こした台風の風力を体で感じられなかったから、信仰心に関わらずなんとなく引け目があるんだな。当時の人に比べて。そりゃ神さまはそんなこと思う必要はないって言うんだけどさ。

それでも俺は、神さまを知ってから神さまの事をすごい考えたんだよ。俺にはしっくりきたし、すぽっとハマったと思った。この先を進めば間違いないって。まさに救済だった。
そんなこんなで信仰を始めて10年くらい立ったんだけど、その間に俺は何度か神さまの作る風や雨や光を浴びることが出来たんだ。
最高だったね。やっと俺の心や体が担保されたなって、やっぱ感じることの出来る光だなってそう思えた。

まあ俺だってずっと神様の事を考えてるわけじゃない。生活があるからね。みんなもそうだろ?
色んなことが起きたり起きなかったりして、時は進んでいく。そうしていつの間にか間違いないっ!ってあんなに強く感じた感覚も消えはしないけど薄らいではいくんだ。

でもちょっと前、神さまが昔執り行った生命の祝祭を再び行うって言いだしたんだ。驚いたよ。夜が深く長い時を超えて、ベルが鳴るなんてさ。もちろん行かないといけないって思った。だって俺は感じてないんだ。こんなに感じたかったのに。

ただ祝祭は八角形の箱の中で行われるから、みんながみんな行けない。物理的制約ってやつさ。

そして俺は行けないことが決まった。

そこにどうやっていけるのか、誰なら行けるのか、基準は俺にはわからない。もしかしたら、資格みたいなものが必要で、俺にはないのかもとか、そもそもが間違ってたのかもとか、色々余計なことを考えちまった。運命論、みたいな得体の知れないもんだよ、要するに。
そんで行けた奴らが口々に祝祭の称賛をするもんだからさ、すねちまったな、俺は。
俺はそこにいなかったんだよって、うるせえよって。

選んでくれなかったのが何なのか、誰なのかは分からねえ。運とか言われてもまあそれもそうなんだろう。
でもただただ落ち込んださ。
・・・
いや、愚痴っぽくなっちまったから、この辺にしとこう。

じゃあもう信仰を止めるかって?
それはもう出来ねえんだよな。多分。まあ、もしかしたら他にも神さまはいるかも知れねえし、意固地になってないで他の神さまも当たってみるのもいいかもしれない。

ただ俺は、信じる強さが前に進む力だって、生きる強さだって知ってしまったんだ。神さまを思って生きたこの10年間が、証明しちまったんだ。

だから、俺ん中にもう完全に入っちまってて、消そうにも消せねえ。

それをさ、俺にやってのけたあんたやべえよ。
凄すぎるよ。

だからさ、また風でも雨でも祭りでも感じさせてほしい。俺はもっと強く感じて生きて行きたいんだ。

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