自己啓発の「とにかく身銭を切れ」は正しいのか?
「会社員はもっと自己の成長にお金をかけて、身銭を切るべき」
自己啓発書でよく叫ばれる。
そうすることで、お金の価値や意味合いが自分の中で明らかになってくるということだ。
これは一理あると思う。
セミナー受講なんて最たるものだ。何かを学ぼうとすれば、身銭を切れば何でも勉強になる。会社の経費か身銭を切るかで受講する姿勢そのものが変わる。
また少し違った角度から見ると、会社の経費か自己負担すべきかがはっきりしない時に、身銭を切ると周囲に宣言するだけで信頼を得る(勝ち取る)ことができる。
また成長には直接的には関係ないが、身銭を切ることで「見える景色」ですら違ってくる。
会社の経費で移動する出張と、自分でお金を出した旅行では、車窓から見える富士山の景色が異なって見える。身銭を切ったものには思い掛けずプレミアムがつくことが往々にしてあるのだ。
「本」に関しては「身銭切り」の効果は当てはまらない
先程の理屈で「書籍代は自腹で買ったほうがいいよ」と勧める人がよくいる。自分のお金で買わないと読まないで放置してしまうと言う。
僕は子どもの頃から本だけは大量に読んできた。「活字中毒」という言葉があるとすればまさにそれである。
昔から「良いと思った本はとりあえず買う」というスタンスでAmazonですぐにポチる。翌日には本が届く今の時代はとても便利である。
このプロセスの中で、僕は多かれ少なかれ、その本を読み終わった後の「成長した自分」をイメージしている。本だけは人並み以上に読んできたと自負する僕であっても、このプロセスだけで妙に満足してしまって読む気がなくなり、結果デスクや本棚に積んだままずっと読まないこともあるのだ。
そしてもっと声を大にして言うべきは読んだ本であっても、読むだけでは全然なにも身につかずに時間とともに忘れてしまうということだ。それは脳が歳とともに老化したからではない。若かりし学生時代でもそうであった。
「学びを結果に変えるアウトプット大全 (著 樺沢紫苑)」によると、脳に入力された情報は『海馬』というところに仮保存されその期間は「2〜4週間」とある。つまり何も使わなければ最長で一ヶ月で忘れてしまうのだ。
また1917年に、コロンビア大学の心理学者アーサー・ゲイツ博士が行なった実験では、インプットの2倍近く、アウトプットを行うと記憶が定着しやすいという結果が示された。
つまり中途半端に勉強したものは、雑談程度に使うことはできても、使わなければプロとして厳密な根拠が求められるビジネスでは使い物にならないということだ。
結局のところ本で学んだ「知識」と「ビジネス」の間は経験で埋めていかなければならない。本を「身銭切り」するかどうか自体に効果や価値といったものがあるのではなく、自分で動く過程で身に付けた「経験」にこそ価値があるのだ。
本の「身銭切り」は効果はないが、株で損する「身銭切り」は効果がある
ネットや本で僕たちがよく目にするものには景気よく「絶対稼げる!」などとキャッチコピーが書かれている。
こういった言葉には中毒性があって確かに僕もポチりそうになるが最後は我に返って必死に我慢する。甘い言葉で「うわぁ、稼げそう」と夢を見せるのもいいが、時には厳しく現実的な手段を紹介した方がいいのではないか?
当たり前だが絶対稼げるようになるには経験が必要なのだ。初心者がそう簡単に稼げるわけがない。ただただ経験者からは、初心者でも稼げるくらい簡単そうに見えているだけである。
僕はかれこれ16、7年も株式投資の世界にお世話になっている。25歳から始めたのでおそらく一般的にみて早いほうだろう。
20代の頃は本を読み漁った。
決算書やチャートの読み方、短期売買、ヘッジ取引。50万円から1億円にする極意。等々ありとあらゆる本を読んできた。
決算書についてはファンダメンタルズの知識が身についたことで今の投資の軸になったが、他はハッキリ言ってムダであった。
成功している人をディスっているのではないが、たとえばチャート分析はトレンドラインでもインジケーターでも、値動きに一つの描画的な指針を与えているだけであり、それ単体でも複数組み合わせてもこの先を予測するものというには精度に欠けるものである。
ただ、その描画的な指針を利用して一つの傾向を得ることは可能であり、そこを「優位性」という相場分析に重要な要素を割り出す事はできると思う。
しかし万人にとって再現性が高いかといえばそうではない。
短期売買はこのやり方で小さくコツコツ勝っても、一発大きくやられるとトータルで負けてしまうリスクも併せ持っている。
結局は、トレンドラインがどう、インジケーターがこうとかではなく、方法論はどうであれ株式の世界では1割の勝者と9割の敗者で構成される事実には変わりなく、成功した人は本には書かれていない経験に裏打ちされた判断材料やノウハウがあり、そこは一律で述べる本のように一筋縄には行かないものである。
実践せずに本だけ読んでわかった気になっても結局何も身に付かないし、本で読んだだけの知識は自分の物にはならないため、体験として人に話すこともできない。
僕が言いたいのは
「本には書かれていない経験に裏打ちされた判断材料やノウハウ」
を身につけるには本で完璧に勉強してからではなく、やりながら学ぶ方がずっと早く、そして確実に身に付くということだ。
本はきっかけに過ぎず、実際に色々と試して悩んで調べながら、何かを解決していく過程にこそ学びがあるのだ。
株において言えば一番良い経験とは失敗である。失敗しながらも折れずに続けていくことが、何事にも通じる上達のコツである。
僕自身も大失敗をしている。
ライブドア・ショック、リーマンショックで背筋が凍るような思いをしたことがあった。
数日で長年利益を積み上げてきた2000万円を溶かした。身銭を切って、自分で考えて、自分で全て判断してエイヤとお金を投入して失敗すること。
負けから学べることは大きい。
自分が負けて腹が立ったり、悔しかったりすることで本気になれる。
僕自身も、この大失敗がその後の東日本大震災、チャイナ・ショックそしてコロナショックで活かされた。実践しながら学び、失敗して反省し、次に活かす。実践こそが成長につながるとはこういうことだと思っている。
脱線したが記事をまとめよう
身銭を削っても実際にアウトプットしなければ本物にならないことは分かった。
そうするとあとはアウトプットする時間である。ここが一番の問題である。成長したくてもサラリーマンには時間がない。成功を謳うビジネス書は誇らしげに、
「時間がないというのは言い訳」
「効率化を考えろ」
「自分を律する力があれば」
なんてよく語ってあるが、普通のサラリーマンが作り出せる時間には限りがある。
例えばnoteだってそうだ。
毎日noteを更新することのメリットもあるが、デメリットも多分にある。
僕は2000文字を1つの目安にしているが、仕事が終わって家に帰って平均的に2時間、言葉が出てこない時なんて3時間超もパソコンとニラメッコすることがある。
note以外にも子どもをお風呂に入れたり、本を読んだり、ランニングをしたり。サラリーマンである僕はこれ以外のことをする時間を捻出するのは平日ではそう簡単ではない。
できない理由を述べる気はないが、やりたいことをやるためにサラリーマンは
「何をやらないか」
を考えることからスタートしなければいけない。心からやりたい仕事をしている人は別だが、理想を言えば朝から晩まで拘束されるサラリーマンから脱却することが時間を生み出す最大の効果を生む。
趣味以外で身銭を切ってスキルを身に付けて何をしたいのか。それは一般的には収入アップであろう。それが副業か、社内の資格等級が上がることによるものかは人によって違うだろうが、いずれにしてもスキルを金に変えるために身銭を切るのが一般的だ。
では「時間」をさらに作るためにはどうするか。時間が捻出されなければ新たな収入は得られない。
従って労働で得られた金を
「重い金」
に変えていくことだと僕は考えている。労働収入や、せどりやアフィリエイト、株の短期売買、FXなどで得た収益は不安定だ。
※労働収入は何らかの事情で働けなくなると途絶えるため大きな分類でみると不安定な収益である。
そういう不安定なものから得た収益を、配当が出る資産に変えていくのが理想だ。これこそが僕が定義した「重い金」なのだ。
たとえば不動産を買ったり、太陽光発電投資であったり、株式、ETFや投資信託にコツコツと分散投資していく。
真に時間が捻出されるのは、自分の生活費を、家賃収入や配当金で賄えるようになった瞬間である。
自分の資産が生み出す富で生活を回せるようにする。当然、その域に達するまでには地道な努力や節制が必要で、情報商材屋が夢見せる輝く自由な生活とは真反対の態度で人生に向き合う必要がある。
自分の「時間」をつくるために仕組みを作る。そのために頭を使う。計画を作り、淡々と実行するしかないのだ。
最後にもう一度まとめる。
身銭を切るかどうかだけを議論しても意味がない。アウトプットとセットでなければそもそもの効果が低い。
しかしそのアウトプットにかけられる時間は有限である。サラリーマンであれば尚更である。自分の思う方向に成長を促したいと思ったら、そこに多くの時間を確保する必要がある。
不労収入が入れば時間確保がしやすくなる。理想は自分の生活費を家賃収入や配当金などの不労収入で賄えるようにすることだ。
ここまでくれば好きなことを好きなだけ時間をかけて極めることができる。
身銭を削るかどうかはさほど問題ではない。
人がやらないことを極めよう。それこそが差別化につながる。
そのために面倒くさいことをやるんだ。地道にやるのだ。
そこに富が生まれると僕は信じている。
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