見出し画像

【若者と企業の挑戦ストーリーvol.2】石川県能登半島の、若者の挑戦の現在地

みなさまこんにちは。チャレコミ事務局の桐田です。今回は、おいしいもので地域の未来をつくっていくチャレコミの新しい挑戦「チャレコミサポーターズ定期便」のお便りに掲載した記事を、noteでもご紹介させていただきます。

今回お話を伺ったのは、石川県能登半島で地域コーディネーターをされている、株式会社御祓川(みそぎがわ)代表取締役の森山奈美さんです。

地域で働くこと、地元に貢献することに関心のある学生や若者たち、そして、地域内で新たな挑戦を仕掛けようとしている意欲ある企業。こうした方々はどの地域にも必ず存在します。しかし、この両者がお互いの想いを知らないために、新たな出会いが起こらないまま地域の閉塞感を打破できない状況が続いていました。

地域コーディネーターは、こうした地域の未来を担っていく若者たちと、地域の企業をはじめとした様々な人との出会いの場をつくり、インターンシップなどの実践的プロジェクトを通して両者をつないでいく存在です。

今回「チャレコミサポーターズ定期便」でお届けした能登のジビエソーセージを開発・販売している有限会社クリエイトさんも、森山さんがコーディネートした実践型プロジェクトを通して、若者とつながってきた企業のひとつ。

この記事では、森山さんがコーディネーターとして感じるクリエイトさんの魅力、これまでの若者との挑戦、森山さんがコーディネーターとして若者に残していきたい地域での働き方や生き方についてお話を伺いました。

森山 奈美(もりやまなみ)さん/ 株式会社御祓川(みそぎがわ)代表取締役

川を中心としたまちづくりに取り組み、その取り組みが日本水大賞国土交通大臣賞などを受賞。平成21年に、経済産業省「ソーシャルビジネス55選」に選出されました。近年は「能登留学」で地域の課題解決に挑戦する若者を能登に誘致しています。

森本 敬一(もりもと けいいち)さん/株式会社森本石油、有限会社クリエイト代表取締役

石川県鳳珠郡穴水町出身、1970年生まれ。ガソリンスタンド四代目。
食に携わるようになったきっかけは仲間との大人のクラブ活動。能登の食材を知ってほしく、イベントで屋台を出店。その時好評だった「能登牡蠣チャウダー」をレトルト食品として開発されました。令和元年度、農林水産省 地産地消推進協議会会長賞 食品産業部門受賞。

生産者の声が自然と集まる地域密着型のガソリンスタンドで生まれた、能登のジビエソーセージ

ーーコーディネーターから見た企業の魅力を教えてください。

実はこのクリエイト社長の森本さん、地元では「森本石油の森本さん」で親しまれています。つまり、本業はガソリンスタンドなんですね。

森本さんは、おいしいものが大好きなアメリカンサイズの男性で、NPO法人「チーム能登喰いしん坊」という、能登のおいしい食材をもぐもぐして地域課題を解決する団体の代表もしています。この団体の活動で、地元のイベントで能登の食材を使ったクラムチャウダーやカレーを出品したりしているのですが、そのうち好評だったものを商品化するという流れでクリエイトという会社を作ったんですね。

ガソリンスタンドって、地元の生産者さんたちがお客さんなんですよ。だいたいトラックでガソリンを入れに来るんですが、普段からそれぞれ作ってるものを持ってきてくれたり、「こういうものが余っとるんや」とか、地元の生産物に関するいろんな情報が集まるわけです。

そこで、ガソリンスタンドが地域のひと、もの、ことをつなげて新しい価値を生み出す地域コーディネーターのような役割を持ち始めて、「この材料とこの余ってるものを活かしたら、こんな商品ができるんじゃないか」と、地域の新商品開発の拠点になって、まるで道の駅みたいになってるんですよね。

ガソリンスタンドのレジのところも、すごくちっちゃいスペースなんだけれども所狭しと特産品が置いてあったりして、今時めずらしい有人サービスのガソリンスタンドなんですけど、ひっきりなしにお客さんがやってきてしゃべっては帰っていく、あたたかい地域の生産者たちの居場所になっています。

学生インターンが、マーケティング、SNS発信、販売管理システムの作成、展示会まで挑戦!

ーーこの能登のジビエソーセージで、学生インターンはどんな挑戦をされたのでしょうか?

最初は社長の森本さんが、森本石油のスタッフと一緒に本業の隙間時間を利用して商品開発に挑戦していたのですが、忙しいなかで進めているから何個売れたのかもよくわからずという状態だったところに、インターン生と副業の方が入ってくれて。

副業の方は遠方からオンラインで参加されていたのですが、学生のインターン生は現場に入って、半分ガソリンスタンドでの業務をしながら商品をマーケティングして、SNSを動かして、販売管理システムまで作ってくれました。ちょうどその時期にジビエソーセージが開発されて、コロナ禍だったのですが、インターン生は東京の展示会まで同行して商品を売り込みにいってくれたんですよ。

ソーセージに練り込まれたブドウの葉っぱも、椎茸も、すべて能登で採れたもので、生産者たちともとても近しい関係にある。ガソリンスタンド屋さんが本気を出すとこんな商品が生まれるんだという、最高の事例です。

まちの人々、自然、生産者たちとつながっている安心感を残していきたい

ーー森山さんが、普段コーディネートされる際に大切にされていることは何でしょうか。

私が社長を務める石川県七尾市にある株式会社御祓川(みそぎがわ)は、「小さな世界都市・七尾」を目指しています。小さい地方都市だけれど、一人ひとりの「挑戦したい」「作ってみたい」が実現できて、一人ひとりが自分の持っている世界観を表現できるようなまちにしたいと思っていて、その先に世界に通用するようなアイテムや考え方を生み出せるまちになったらいいなと思っているんです。

だから、まずは「その人が本当にやりたいことなのかな?」ということに耳を傾けることを大事にしています。「世界観」は、その人が本当にやりたいことかどうかに紐づいていると思っているので。

ただ、「世界に通用する」ということは、サプライヤー側ではなく受け手側から見るとどんなふうに見えるのかということも大切です。その視点も忘れず、日々コーディネートしています。

ーー若者に残していきたい、地域での働き方や生き方を教えてください。

地域で働いていると、暮らしの時間と働いている時間が地続きなんですよね。休暇中に仕事の話になるときもあるし、仕事の時間に遊びが入ってくるときもあったりして、そこにあるのははっきりとした線引きではなく、グラデーションなんです。それがとても人間らしい生き方だなと感じていて。そうした周囲の人々との連帯感、横とのつながりがあることによる安心感を、これからも地域に残していきたいと思っています。

あとは、自然とのつながりも。例えばお届けしたジビエソーセージの元をたどれば、石川の海や山にたどり着くわけです。食べているものと、自分が暮らしている地域の自然がつながっているという感覚、生産者の顔も見えるのが、実は大事なことなんじゃないかなと思っています。

ーーありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?