スーパーの店員がカゴを袋詰め台まで運ぶサービス!「それが盗まれたらどんな問題が生じるのか?」考えてみた。
1、スーパーマーケットでのサービス問題
貴方はスーパーマーケットを利用しますか?
私は普段から頻繁に利用しています。
愚問と思うかもしれませんが、中には
「使ったことがほとんどないよ」
って人もいるんですよ!!!
実際に、産まれも育ちも東京日本橋の知人家族は
「日用品はデパートで買うよ!」
って家庭でした。
それはともかく、今回の本題はそこではなく、
スーパーマーケットのレジで【勝手に】商品の入ったカゴを袋詰めする台まで持っていかれた経験はありませんか?
これについてです。
2、レジで買い物かごを店員が台まで運ぶ行為
このサービスには賛否あるようです。
「断りもせず、勝手に運ぶな!盗まれるかもしれないし、何か落ち着かない」
と言う意見や
「私は助かりましたよ」
とか
「あれはサービスじゃなくて、遅い客を早く行かせるためののモノ」
等、様々です。
私は
「無断で勝手に運ばないでぇ~」派ですが、毎回疑問に思うことがあります。
あのサービスは大前提に
【盗まれない】
と言う考えが存在します。
では、それが崩れて、盗まれた場合どうなるのでしょうか?
言われてみればで、貴方も気になりませんか?
これについて一緒に考えたいと思います。
3、買い物は売買契約
普段生活をしている中では意識していませんが、スーパーマーケットやコンビニ等で買い物をするのは契約行為になります。
売買契約ですね。
売買契約については民法が規定しています。
売買契約とは
売主が所有権等を買主に移転することを約束し、買主は代金を支払うことを約束する契約です。
この文章からもわかるように、売買契約は約束だけで成立します。
つまり分かりやすく言うと
買主 「これ下さい」
売主 「いいですよ」
このやり取りで成立します。
契約書等は不要です。
しかし、スーパーで買い物をするときにこのようなやり取りはほとんどしませんよね。
無言でレジに持っていく場合は、
レジに商品を出し、それをレジを通す
この一連の動作で売買契約が成立すると考えられます。
先ほどのような言葉のやり取りがなくても成立するので、黙示の同意と言います。
さて、この中で、カゴを店員に勝手に運ばれて、その商品が盗まれた場合、問題になるのはどんなことでしょうか?
もう少し具体的に考えて行きましょう。
4、勝手にカゴを運ばれる問題で考えるべき部分
まず既に代金を支払っている商品を盗まれるわけですから、窃盗犯罪の被害になります。
ここで重要なポイントが【所有権の所在】です。
窃盗被害者は所有権を持っている人ですので。
売買契約はレジを通した時点で成立していると言いました。
このケースではレジを通して、代金まで支払っていますので当然契約は成立しています。
売買契約は、売主が買主に対して所有権を移転する契約と言いました。
と言うことは、契約は成立しており、買主である貴方はすでに購入代金を支払っているので、盗まれた商品の所有者は貴方でしょうか?
貴方はどう思いますか?
5、所有権はお店にある?
この所有権がどこにあるのか?には意見の違い(争い)があるかもしれません。
そのため、これは私個人の勝手な意見ですが、恐らく所有権はまだお店にあります。
売買契約で売主であるスーパーの所有権を引き渡す義務は、商品を実際に引き渡して完了します。
今回のケースでは貴方はまだ、レジを通した商品を実際に手に取り、受け取っていません。
その前に、店員が勝手に商品を運んでいます。
つまり、まだ貴方は実際の引き渡しを受けていないと言えるかと思います。
引き渡しが完了していないなら、まだ所有権は移転していませんので、所有権はお店にあると言えます。
売買契約は契約が成立した時点で所有権まで移転するモノではなく、契約はただの約束です。
なお、もしも所有権が貴方に移転していると解釈するなら、店員は貴方の所有物を貴方の意思に反して勝手に扱っているわけですから、別の問題が生じます。
6、債務不履行問題
さて、貴方が買った商品を受け取る前に盗まれたわけですから、貴方はまだ商品を受け取る権利を持っています。
つまり、まだお店は貴方に商品を引き渡す義務を負っているわけです。
しかし、商品は盗まれて無くなっています。
この場合に問題となるのが債務不履行問題です。
要は、商品を引き渡すと言う約束を果たせなくなってしまうことです。
この場合、お店は代わりの商品を引き渡し、求めに応じて損害の賠償もしなければなりません。
つまり貴方はまだ
「早く買った商品を下さい」
と言えるわけです。
しかし、レジを通したその物は盗まれて無くなっているので、カゴに入れていたのと同じ種類の商品を受け取ることになります。
(このケースで特別な損害は出難いでしょうから損害賠償は省略します)
7、危険負担問題
先ほどはお店が商品を引き渡せなくなるから債務不履行と言いました。
実はもう一つ別の可能性があります。
それが危険負担と言うモノです。
今回のケースのように、引き渡しの前に何かの理由で商品が無くなった場合、その無くなった理由に【お店に責任がない場合】が危険負担の問題になります。
先ほどの債務不履行は【お店に責任がある場合】で商品が無くなると問題になるモノですので、
「商品が盗まれたのは、お店に責任があるか?ないか?」
が違いです。
つまり、レジを通したカゴを店員が勝手に台まで運ぶ行為は、
【盗まれるリスクを高める行為と一般的に認識できるような行為かどうか?】
と言うことかと思います。
もしも危険負担の問題となった場合、場合によっては貴方は商品も、支払ったお金も返して貰えなくなります。
貴方にとっては債務不履行(お店のせいで盗まれた場合)の方が補償はキチンとされます。
8、債務不履行か危険負担か?
今回のケース、私は債務不履行だと考えます。
つまり、商品を盗まれたのはお店に責任があると考えます。
普通に考えて、不特定多数が行き交う場所に店員が商品だけを【勝手に】持っていってしまうんですから、盗まれるリスクを高める行為と言えると思います。
貴方に対して「お運びしましょうか?」と聞いて、貴方が依頼したなら話は変わってきますが、今回のケースでは【勝手に】持っていってしまいますので。
これは
「お店に責任があると言えるのでは?」
と考えます。
9、最後に
色々と言ってきて訳が分からなくなってしまった人もいるかもしれませんので、簡単にまとめます。
レジを通した商品を店員が勝手に袋詰め台まで運んでしまう行為で、その商品が盗まれた場合。
◎ 商品の引き渡しが実際にはされていないので、所有権はまだお店にある
◎ 貴方は商品の引き渡しを受けていないので、商品を受け取る権利がまだある。
◎ お店のせいで商品が盗まれたと考えれば、貴方は問題なく商品を受け取れる
◎ 盗まれたのは、お店のせいではないと解釈すると、場合によっては貴方は商品も支払ったお金も、返して貰えず一番損をする。
この状況で、私は、
「商品が盗まれるのはお店の責任だと解釈するので、お客である貴方は確実に補償されると考える。」
と言うことです。
身近な何気ないことでも考えていくと結構ゴチャゴチャしていて難しいですね。
このサービス関連で今後何もないとも限りませんので、是非頭の片隅にでも入れておいて下さい。
お客である貴方はもちろん、実際にスーパーでレジをしている貴方もですよ!
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