「人間の営業マンを採用するな」?
筆者が10月末に行ったサフランシスコでのベンチャー会議(Disrupt)では、セールス自動化企業の一つ、Artisanによる、「もう人間のセールス担当を採用するな」という衝撃的なブースがありました(上の写真)。
「Stop hiring humans」というメッセージを掲げた企業「Artisan」のセールスロボットです。このロボットは、LinkedInなどからメールアドレスを取得し、顧客の興味に合わせたEメールを自動で送信します。人間の担当者はその次の、反応があった人だけを相手に仕事をすれば良い。と、そんなデモでした。
しかし、これが単なる「スパム」との境界線が曖昧に思えませんか?興味深いことに、同じ展示会場にはスパム防止のAIロボットも並んでいました。こうした技術の進展が進むと、セールスは「AIロボット vs. AIロボット」の戦いに変わっていくかもしれません。
たまたまベンチャー業界向けの情報誌、The Informationにもこれについての記事があったので簡単にまとめてみました。
営業業務におけるAI自動化の進展と課題
AIを活用した営業業務の自動化が急速に進んでおり、企業において顧客対応やリード生成といった業務の効率化が図られている。特に、メール作成やリードの収集、電話対応などを自動化するAIツールが導入されることで、営業担当者の作業負担が軽減され、より高度な業務に集中できる環境が整いつつある。Runway、11x、Artisanといったスタートアップ企業がAIを駆使した営業支援を提供しており、その結果、効率や生産性の向上が報告されている一方、AI生成のメッセージが「機械的」に感じられ、特定市場でのコンバージョン率が低下するリスクも指摘されている。
AIによる時間短縮と効率化:AIは、カスタムメールの作成やリードの収集など、営業担当者の作業を大幅に短縮する効果を発揮している。これにより、より付加価値の高い業務に専念する時間が増加する。
スタートアップの活用例:11xやArtisanといった企業は、AIを使ったメール生成や電話対応の自動化に成功しており、効率と生産性の向上を実現している。
機械的なメッセージの課題:AI生成のメールやメッセージは、時に「ロボット的」な印象を与えることがあり、特定のニッチ市場ではコンバージョン率が低下する傾向が見られる。
伝統的な営業ソフトウェア企業の反応:一部の従来型営業ソフトウェア企業はAI導入に対し懸念を示す一方、Salesforceのような企業はAIを積極的に取り入れ、営業スタッフの効率を向上させる取り組みを進めている。
さて、ここから以下は米国で事業をしている筆者の感想です。
米国ビジネスでのコールドメールの現状
ここ数年で顕著になってきたのが、米国ではもはやコールドEメールが効果を失っていることです。ほとんどの人が、見知らぬ相手からのメールを開くことすらしません。また、電話での接触も同様で、知らない番号からの電話はまず取られず、たとえ留守電を残しても、折り返しの連絡はほぼ期待できない状況です。
日本のセールスと米国からの影響
日本では、今でも電話によるセールスアプローチが比較的成功しやすい側面があります。多くの企業では親切で有能な受付が対応し、担当者に取り次いでもらえる可能性も高いです。しかし、米国で見られるビジネス変化が5年ほどで日本にも広がるケースが多いため、将来的には日本でもAIセールスロボットの普及が進み、企業間のセールスがAI主体になる可能性を想定しておく必要があります。
まとめと今後のセールス戦略
AIによるセールスの自動化は進行中ですが、スパム化との境界線が問われる課題があります。
コールドEメールや電話が効かなくなった米国の例は、日本でも数年以内に同様の傾向が見られる可能性があります。
日本企業は未来のAI主導のセールス環境に備えた準備が必要であり、特に効果的な顧客接触方法の模索が求められます。
参考記事:「Fear and Skepticism: AI Automation Arrives for Salespeople」
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