能登半島地震の被災地で1次避難所の集約や閉鎖が進んでいる。30日で126か所となり、最大時の3割まで減った。地域の復興や生活再建に向け、自治体が統合したことなどが大きい。一方、1次避難所には今も約2400人が身を寄せる。閉鎖で移動を強いられ、環境の変化に悩まされる高齢者も出ており、細やかな支援が求められている。(赤沢由梨佳、橋爪悦子)
石川県が定期的に公表している避難所数を集計したところ、最大15市町で計404か所あった1次避難所は、8市町の計126か所に減った。3万人を超えた避難者は2420人(2次避難除く)となった。
内閣府の指針では、避難所運営について「ライフラインの復旧を目安に解消に努める」としており、避難所となった公共施設は早めに機能を戻す必要がある。集約が進むと、物資配布や保健師巡回もしやすくなるという利点もある。
3月上旬に200か所を下回った1次避難所は、4月にかけて集約が本格化した。七尾市では最大時の約2割に。避難所ごとに職員5人を配置していたが、生活再建業務の準備のため、早くから集約に取り組んできた。
職員が避難者に避難所を出る条件を聞き、仮設住宅の案内などを支援。年度末には数日で18か所から半数にした。市は「人手をかけるべき所を整理できた。避難者自身も必要な申請を把握し、再建の一歩につながっている」と効果を語る。
移動が負担、体調不良も
一方、避難所の移動を強いられた被災者の負担は軽くない。
能登町では新学期に合わせて体育館などの学校施設を優先的に閉鎖・集約した。女性(79)は上下水道が復旧していない自宅に戻れず、3か月いた小学校から集約先の観光交流施設に夫(80)と移った。小学校の3倍近くの避難者がおり、いびきなどが気になって寝不足が続く。「日中気分が悪くなることもある。どのぐらいで仮設住宅に入れるだろうか」と話す。
珠洲 ( すず ) 市では作業員の宿泊所設置のため、自主避難所だった旧温泉施設が閉鎖。男性(68)は顔見知りもいて、精神的に助けられたという。閉鎖後、避難所に行かず、被災した自宅に戻った。「余震が来たらつぶれる恐怖はあるが、自宅の方が落ち着く」と語る。
避難所閉鎖は進むが、全てがなくなるには時間がかかる。東日本大震災で10か月、熊本地震で7か月を要した。石川県は保健師による健康チェックの強化など市町と連携していく考えで、災害関連死の防止などにつなげるという。
兵庫県立大の阪本真由美教授(被災者支援論)は「閉鎖を無理に急ぐのは避難者の負担になる。自治体は当面、運営を民間に任せるなどして、職員不足を補う工夫が求められる。退去に向け、個別の悩みや次の生活の相談に乗るなどきめ細かく支援するべきだ」と指摘する。
◆1次避難所=災害時、一時的に避難する施設。災害対策基本法に基づき、自治体が事前に定めた体育館などの「指定避難所」のほか、被災者らが自宅近くの公民館などに設けた「自主避難所」がある。生活環境が整ったホテルなどは「2次避難所」となる。