恋愛も性交も縁がない 超草食男子が増えている 識者「若者の向き合い方は二極化」Xに賛否「なんでも『学校』か」「教育の放棄」~私たちが子供いらないと思う理由2024/2/17 12:30篠原 那美の写真篠原 那美今は満足、将来不安…Z世代に広がる「子供いらない」 識者「結婚や子育て楽しいと思えない社会は増えない」 Xに反響「感覚めっちゃわかる」~私たちが子供いらないと思う理由等産経私たちが子供いらないと思う理由PDF魚拓



ニュースサイト「産経ニュース」で先月配信した特集「私たちが子供いらないと思う理由」では、男性不妊の実態にも注目が集まった。身体的な障害だけでなく、「子供の作り方が分からない」といった〝超草食〟男性が増えているという。専門家は思春期の性教育不足なども背景にあると指摘する。

悟、30代半ばで「子供の作り方分からない」

「子供の作り方が分かりません」

夫婦で都内の不妊治療クリニックを訪れ、こう打ち明けたのは、30代半ばの悟=仮名=だ。夫婦は結婚後、一度も性行為をしたことがないと語った。

「正直、そこからかと思った」と医師は振り返る。

クリニックを訪れる夫婦の事情はさまざまだが、中には性行為ができないという理由で、いきなり不妊治療へと進むケースもある。

「性的なことにはまったく興味がなく、アダルトビデオも見たことがない」と話す男性もいた。教育の現場で、『性行為は避けなさい』というトーンだけが強調されている面もあるのでは」と医師は語る。

日本財団が令和3年に17~19歳の男女を対象とした調査によると、性に関する知識が十分にあると答えたのは2割強にとどまった。学校でもっと深く学びたかった内容として、「恋愛や健康な性的関係に関する知識」が約41%、「性的反応の仕組みや性行為(セックス)に関する知識」が37・6%だった。

悟の例は珍しくはない。

「手を使った自慰行為をしたことがないので、精液検査ができない」

浜松市の聖隷浜松病院で、リプロダクションセンター長を務める泌尿器科医の今井伸医師は、男性の不妊治療に長く携わる中で、射精や性行為ができない男性を数多く診察してきた。

原因を探ると、男性が思春期に正しい方法で自慰を行い、射精をする経験を積んでいないことが分かった。思春期になっても性に関心を持つことをためらうケースもある。

「恋愛をトラブルのもとと考えて遠ざけ、そのまま自慰行為を覚えずに大人になる。『寝た子を起こすな』というが、適切な性教育がなければ『寝た子は寝たまま』だ」

誤った自己流を身につけてしまい、性行為がうまくいかない例も少なくない。

「手を使わずに壁や床にこすりつけるなどして、性行為で得られる刺激とは異なるきっかけで射精することを覚えた結果、膣(ちつ)内射精ができなくなる」

また、インターネットにあふれる過激な動画を見すぎて、実際の女性相手に性行為や射精ができない人も多いという。

平成27年度の厚生労働省調査によると、男性不妊の原因で、勃起や射精ができない割合は13・5%を占めた。

今井氏は「学校も親も、女子には生理のケアを教えるのに、男子の射精は『勝手に覚えるだろう』と放置しているが、大人の無責任ではないか。将来、子供を持ちたいと思ったときに困らないためにも、射精を教えることは大切だ」と語る。(篠原那美)

X反応「スマホで調べれば」「『勝手に覚える』は教育の放棄」

記事に対して、X(旧ツイッター)上では賛否が割れた。「そんなことある?スマホで調べればなんとなくわかるだろうに」「なんでも『学校が~』か」など、学校でこれ以上踏み込んだ性教育を行うことに慎重な意見が目立った。

一方で、「『勝手に覚えるだろ』というのは教育の放棄でしかない」「必要なものを提供できていない意味で義務教育の敗北だ」「子供=性教育タブーの認知のなれの果てだ」として、これまでの性教育の在り方を見直すべきだとの声も多かった。

「これまでの性教育に問題」産婦人科医 北村邦夫氏

若者の性への関心や向き合い方は二極化している。セックスに積極的な人がいる一方で、まったく関心がない人が増えている。

日本家族計画協会で日本人の性意識・性行動の実態を探る「男女の生活と意識に関する調査」の平成18年と28年の結果を比べると、未婚男女(18~34歳)のうち性交経験がない割合について、男性は33%から42%に、女性も30%から46%に増えていた。

18年というのは、関西大学総合情報学部の深澤真紀特任教授が「草食男子」と命名した年だ。ここから10年後の調査で、傾向が加速していることがわかる。

背景には、これまでの性教育が、計画外の妊娠や性感染症を回避させるメッセージが中心だったことが考えられる。

若者のコミュニケーションスキルにも課題を感じる。スマートフォンで簡単に連絡を取る時代だが、失敗や傷つくことを恐れ、深いコミュニケーションを面倒くさいと感じる。その結果、性交からも遠ざかる。

大人が先回りして、子供同士の衝突の種を摘むようなことをしていると、子供たちは失敗を恐れ、コミュニケーションを避けるようになる。男女関係に限らず、幼いときから、人と人との触れ合いの厳しさや、分かりあったときの喜びを肌で感じられる学びの場が必要ではないか。



少子化問題に関するご意見をお寄せください。あて先はメールdigitalhodo@sankei.co.jp

今は満足、将来不安…Z世代に広がる「子供いらない」

https://www.sankei.com/article/20240217-XBUUTZNBTVHUVEO6M4R43AKS5Y/?dicbo=v2-aedryZD
恋愛も性交も縁がない 超草食男子が増えている 識者「若者の向き合い方は二極化」

Xに賛否「なんでも『学校』か」「教育の放棄」~私たちが子供いらないと思う理由

2024/2/17 12:30



ニュースサイト「産経ニュース」で先月配信した特集「私たちが子供いらないと思う理由」が大きな反響を集めた。深刻な少子化の背景には、出会いや結婚、働く環境など、現代のライフスタイルが複雑に絡んでいる。岸田文雄政権がまとめた新たな少子化対策には児童手当の拡充など、子育て世帯への金銭的な支援が目立つが、真の処方箋になるのか。(水内茂幸)

夏穂(24)「結婚や子供と無縁の人生送るだろう」

東京都内の大手商社に務める夏穂(24)は、入社2年目の営業職だ。独身で現在は交際相手もいないが、今後も「結婚や子育てと無縁の人生を送るだろう」と考えている。

子供が嫌いというわけでもなく、身体的な問題もない。大学時代には同学年の男性と交際した経験もある。今の職場は、出産や子育てに関する制度が「恵まれすぎるほど」充実しており、一度職場を離れてもキャリアは遅れない。

それでもなぜ結婚や子供と無縁だと思うのか。

夏穂は子供を持つ前提として結婚があると考えるが、今は「長く特定の人と一緒に暮らすことが考えられない」という。大学時代の交際相手からは「2~3年後には結婚だね」と強く言われたことが響いたのか、就職後に自然消滅した。

仕事は充実している。休日は1人で街歩きをすることも多く、プライベートでも満足した日々を送る。隣県に住む両親も結婚をせかさない。

夏穂が子供を考えないもう一つの理由が、教育費の懸念だ。「自分が大学を卒業するまでの間、両親が与えてくれたものと同じ教育環境を、わが子に用意できる自信がない」というのだ。

夏穂は大学時代、平均的な教育費のデータなどを参考にシミュレーションをした。大学を卒業するまですべて公立学校に通っても1千万円以上、私立なら2千万円以上かかりそうだと判断した。これに自らの収入の将来見通しを重ねると、子供を育てられる確信を持てないというのだ。

ただ、夏穂は子育てする未来を完全に閉じてはいない。仮に将来子供を持つならば、30歳くらいでパートナーを探し、35歳までには出産…という人生設計も考える。しかし、今は充実した毎日を送るだけに、「30歳になったときに改めて考えればいい」と思う程度だ。

夏穂の同世代では、似たような考えが増えている。インターネット情報提供会社「ビッグローブ」(東京)の昨年の調査では、18歳から25歳までのいわゆる「Z世代」で未婚で子供もいない人のうち、「将来結婚したくないし子供もほしくない」と考える人が36・1%に達した。「将来結婚したいが子供はほしくない」との答えも9・6%あり合計45・7%が子供を持たない将来を描く。



やりがいのある仕事環境と充実したプライベート、教育費への漠然とした不安があいまって、夏穂は子供を持つという考えから離れている。「今はまったく寂しさを感じない」と笑顔で語る姿には焦りが感じられない。

「結婚がめんどい」「教育環境は義務…考えると無理」

先に配信した記事には、X(旧ツイッター)に「この感覚めっちゃわかる」「子供はほしいけど結婚がめんどい」といった声が寄せられた。「自分と同等かそれ以上の教育環境は義務だと思うし、そう思うと子供は無理」「身近に支えてくれる親族がいて、仕事と子育ての両立ができた。安心して両立できる制度の更なる充実を望む」といった意見もあった。

社人研・福田節也室長「共働きの育児、若者には負担に映る」



国立社会保障・人口問題研究所の福田節也研究官(三尾郁恵撮影)

国立社会保障・人口問題研究所が令和3年に実施した「第16回出生動向基本調査」でも、結婚や家族に対する旧来的な考えを支持する未婚男女の割合が6年前の前回調査から大きく低下し、若い世代の結婚・出産離れの傾向を裏付ける結果がみられた。こうした流れがZ世代以降に定着してしまうのか、あるいはコロナ禍という大きな社会変化を経験したことによる一時的なものなのか、今後注視する必要がある。

従来、未婚者の結婚・出生意欲低下の要因には、非正規雇用などにより十分な経済的基盤を築けないことや、出会いがないといった男女交際における障害が原因とされてきた。近年では結婚や出産を経ても共働きを続ける夫婦が増えている。

共働きで子供を育てていくとなると、夫婦間でさまざまなすり合わせが必要となる。若い世代にはそれも負担と映るのかもしれない。結婚や出産はあくまで個人の自由な選択の結果であるべきだが、1人で生きるより結婚や子供を持つ人生の方が楽しいと思えるような社会に変えていかないと子供は増えない。

若者の価値観が結婚や子育てから離れていってしまうと、仕事と子育ての両立策を充実させても子供を増やすことは難しくなるだろう。



少子化問題に関するご意見をお寄せください。あて先はメールdigitalhodo@sankei.co.jp

30代で「子供の作り方分からない」~私たちが子供いらないと思う理由

38歳の妊活 晩産化懸念も「結果に後悔しない」

今は満足、将来不安…Z世代に広がる「子供いらない」 識者「結婚や子育て楽しいと思えない社会は増えない」 

Xに反響「感覚めっちゃわかる」~私たちが子供いらないと思う理由

2024/2/16 15:10



水内 茂幸



社会で活躍する女性が増えるに連れ、女性が初めて出産を経験する平均年齢は遅れる傾向が目立つ。女性の身体的特性を考えると、若い方が妊娠しやすく、第2子以降の誕生にもつながりやすいとされるが、どのタイミングが「出産適齢期」なのかは千差万別だ。2回目は、政府が改善を急ぐ「晩産化」を考える。

ゆかり、38歳 アパレルで勤務後、スタートラインに

「ようやく道が定まった。今はホッとしている」

東京都内で暮らすゆかり(38)=仮名=は昨年12月初め、体外受精による妊娠に向けて、薬の服用を始めた。約10年前の結婚以来、子供を持ちたいという思いは抱き続けてきたが、なかなか自分ごとにはならなかった。風向きを変えたのは、夫の不意な言葉だった。

平成25年、同じアパレル関連の仕事が縁で知り合った1歳下の夫と結婚。翌年に自然妊娠した。その後も出勤を続けたが、妊娠確認から約1カ月後、残業中に腹痛に襲われた。

病院では、お腹の赤ちゃんが亡くなっていると告げられた。処置後の全身麻酔から覚めると、目の周りに涙のあとがあった。

手術に付き添った夫は、「ものすごくうなされていた。このまま死んでしまうかと思った」。ここまでして子供が必要か。夫はゆかりに「子供は先送りにしよう」と持ち掛けた。互いにまだ20代だった。

「病院行ってみようか」

ゆかりは職場復帰後、自然と、仕事に打ち込んだ。夫はほどなく、規模の大きい会社へと転職した。

わが子への思いが途切れたことはない。親戚の子供を抱いたとき、友人の子供のお守をしたときー。ただ、職場での立場も重くなり、「今は仕事から抜けられない」とも感じた。

転機は昨年9月に訪れた。夫に「病院に行ってみようか」と声をかけられた。子育て中の同世代の友人から「体外受精で授かった」と聞いたことがきっかけのようだった。

ゆかりは、ちょうど人生の転換点を迎えていた自らの現状を、夫がしっかり見定めたことも転機につながったと感じている。ゆかりは職場でのストレスから適応障害を発症し、一昨年末に退職。療養を経て落ち着いてきたところだった。自由診療だった体外受精が昨年度から公的医療保険の適用対象(43歳未満まで)となり、費用の懸念が和らいだことも背中を押した。

38歳で再び妊娠のスタートラインに立ったゆかり。湧きあがったのは喜びでも不安でもなく「安堵感」だったという。

ゆかりは晴れやかな表情でこう語る。「やれることをやったならば、結果がどうであろうと後悔はしない。今が、私たちにとってのタイミングだったのだと思う」



厚生労働省の令和4年の人口動態統計によると、第1子の出産時点の女性の平均年齢は30・9歳。前年と並び統計を始めた昭和50年(25・7歳)以降、最も遅い水準だった。



男女とも、加齢は妊娠したり、させたりする力を弱める。日本産科婦人科学会によると、女性は30歳を過ぎると自然に妊娠する確率が減り、35歳を過ぎると顕著に低下するという。晩産化が進めば、第2子につながらなかったり、第1子も抱けないケースが増えたりする。

女性の社会進出が進み、ライフスタイルが多様化した社会では、そもそも妊活に及ぶかどうかも個別に異なる。カップルがもし、「子供を持ちたい」と考えたとき、サポート態勢がどれだけ整っているか。「これなら…」と現実感を抱いてもらえるか。それが、分岐点になりうる。(中村翔樹)

夏穂 24歳「結婚も子供も考えない」

38歳の妊活 晩産化懸念も「結果に後悔しない」

2024/1/16 11:30



少子化に歯止めがかからない原因はどこにあるのか。昨年の民間調査では、18~25歳までのいわゆる「Z世代」の45%が、「将来子供を持ちたくない」という衝撃的なデータも明らかになった。彼らの生の声を聞くと、経済的な理由だけにとどまらない、社会の構造的な問題が浮き上がる。

夏穂、24歳「結婚や子育てと無縁の人生送るだろう」

東京都内の大手商社に務める夏穂(24)=仮名=は、入社2年目の営業職だ。独身で現在は交際相手もいないが、今後も「結婚や子育てと無縁の人生を送るだろう」と考えている。

子供が嫌いというわけでもなく、身体的な問題もない。大学時代には同学年の男性と交際した経験もある。今の職場は、出産や子育てに関する制度が「恵まれすぎるほど」充実しており、一度職場を離れてもキャリアは遅れない。

それでも、なぜ結婚や子供と無縁だと考えるのか。

夏穂は子供を持つ前提として結婚があると考えるが、今は「長く特定の人と一緒に暮らすことが考えられない」という。大学時代の交際相手からは「2~3年後には結婚だね」と強く言われたことが響いたのか、就職後に自然消滅した。

仕事はやりがいを感じるほど充実している。休日は1人で街歩きをすることも多く、プライベートでも、今は満足した日々を送る。隣県に住む両親も結婚を急かさない。

「自分と同じ教育環境用意できないのでは」

夏穂が子供を考えないもう1つの理由が、教育費への懸念だ。「自分が大学を卒業するまでの間、両親が与えてくれたものと同じだけの教育環境を、わが子に用意できる自信がない」と不安を感じるという。

夏穂は大学時代、子育てにいくらかかるのか、平均的な教育費のデータなどを参考にシミュレーションをしたことがある。出生から大学を卒業するまですべて公立学校に通っても1千万円以上、私立なら2千万円以上はかかりそうだと判断した。これに自らの収入の将来見通しを重ね合わせると、子供を育てられる確信を持てないというのだ。

ただ、夏穂は子育てする未来を完全に閉じてはいない。仮に将来子供を持つならば、30歳くらいでパートナーを探し、35歳までには出産か‥という人生設計もおぼろげに考える。ただ充実した毎日を送るだけに、今は「30歳になったときに改めて考えればいい」と思う程度だ。

夏穂の同世代では、似たような考えが増えている。インターネット情報提供会社「ビッグローブ」(東京)の昨年2月の調査では、18歳から25歳までのいわゆる「Z世代」で未婚で子供もいない人のうち、「将来結婚したくないし子供もほしくない」と考える人が36・1%に達した。「将来結婚したいが子供はほしくない」との答えも9・4%あり、合計45・5%が子供を持たない将来を描く。

やりがいのある仕事環境と充実したプライベート、教育費への漠然とした不安があいまって、夏穂は子供を持つという考えから離れている。「今はまったく淋しさを感じない」と笑顔で語る姿には、少しの焦りも感じられない。



岸田文雄首相は昨年、「若者人口が急激に減る2030年代に入るまでが、少子化トレンドを反転させるラストチャンス」と訴え、約3兆6千億円の財源をかけた新たな少子化対策「こども未来戦略」を策定した。対策には児童手当の拡充など金銭的な支援強化が目立つが、真の処方箋になるのか。少子化のリアルな背景を連載で探る。(水内茂幸)

=随時掲載します。

18~25歳の45%が「将来、子供ほしくない」 仕事は充実、結婚も急がない

2024/1/15 11:30