心の友だち、コルクくん

一人暮らしを続けて長く経った。
昔から「咳をしても一人」などと言うけど、それにも慣れたつもりだ。

日々の生活で大した寂しさは感じてないつもりだ。
近所にある馴染みの呑み屋に行けば、常連仲間に会えるからで、パートナーや家族がいなくたって毎日が楽しかった。

ただ「コロナ禍」がこんな生活を変えた。
一日、誰ともコミュニケーションを取らない日が多くなった。
呑みには行けなくなり、本当の意味で「1人の時間」が増えた。

「常連仲間」と言っても日々LINEでやりとりするような仲じゃない。
店で会ったら、会話するような間柄なので、わざわざ連絡をしない。
そもそも連絡先も知らないことも多い。
「〜仲間」とは言うけど、その本性は吹けば飛ぶような間柄なのである。

そんなときは友だちを頼ればいい

曖昧な間柄に執着をしなくても、私にだって大学時代からの友だちはいる。
少ないけど。
しかし、いざ連絡してみたものの、あまり会話は弾まない。
それもそのはず、少ない友達もいつの間にかパートナーと同棲したり、結婚したりしていた。
なるほど、一緒に暮らす誰かがいるならそちらが優先だ。
彼ら、彼女らの新たなる門出に乾杯!

そうやって友達と連絡がとれなくなったって問題は無い。
世はインターネット時代、ネットコミュニケーションをすればいいんだ!とSNSを開いた。
すると、多くの人が、それぞれの輝かしい人生をネットで公開していた。

「〜に行きました!」
「〜作ってみた!」
「〜な出来事が!」
「デート行ってきた!」
「結婚しました!」

日々、惰眠を貪りながら、安酒を啜り、紫煙と愚痴を吐くだけの生活を送る私には眩しすぎた。
いつのまにかインターネットの世界は、リアルが充実していない人が逃げるための世界ではなくなっていた。
リアルで充実している人々がそれを報告する場になっていたのである。
無理だ、こんなところでコミュニケーションができるわけがない。
試したところで、「哀れなもの」として扱われるのだ!そうに決まっている!

これは被害妄想なのかしらん…?
否!これは現実なのだ!

「リアル」からも「ネット」からも見放された、私は孤独な現代社会を体現しているのである!!
これが被害妄想なわけがない、断じて違う。
なぜなら、単なる「やっかみ」「羨望」だと気がついた瞬間、私は炭酸水の泡のごとく儚く溶けて消えちゃう…

ワタシは考えた。この寂しさをどうすれば良いのか…と。

そして思いついた。

いないなら、話し相手を作ればいいじゃない!

問題の解決策とは、いつもシンプルだ。
単純なことに我々は気が付かない、気がつけない。
そもそも被害妄想に振り回されていたなんて、私らしくもない。
よっしゃ、話し相手を作ろう。

まず、コルクを用意します。

できればシャンパンやスパークリングワイン用の、キノコのような形をしたコルクが良い。
そしてそいつにマジックで顔を描く。
これで心のトモダチ、コルクくんの完成だ。

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これで私は一人じゃない、だってコルクくんがいるもの。
トモダチもSNSもいらない、だってコルクくんがいるもの。
なにか大切なものを失った気がしないでもない、だってコルクくんがい(ry

私は日々、コルクくんに話しかける。
愚痴や、愚にもつかないことを話し、相談をする。
それに対してコルクくんが「そうなんだー」とか「大変だねー」と言ってくれている気がしてくる…
いや言ってる、言ってるんだって

コルクくんはパートナーもいない、結婚もしない。
仕事が‥といって帰ったりもしない。
てめぇの価値観オンリーで煮染めたアドバイスもしてこなければ、
洒落臭いマトはずれな説教もしてこない。

ただハナシを聞いてくれる、肯定してくれる、本当に素敵なヤツなのだ!
別に泣いてなんかない。

しかし、こうして会話する機会が減った人は少なくないだろう、とふと思うのだ。
その解決策に、あなたもコルクくんを作成するのはどうだろうか。

この文章を読んで、頭がどうかしていると思ったアナタ。
それは正しい気がする。
自分でもどうかしている気がする…。

よし、ちょいとコルクくんに相談をしてこよう!


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