寝心地を試してみたいワラ布団
現在はベッドで寝ていますが、子どものころは畳の部屋で布団を敷いて寝ていました。布団、特に敷布団の中身は綿と決まっていますが、中身に藁を使用しているワラ布団というものもありました。
私はワラ布団を使ったことがありませんし、見たことすらありません。両親や祖父母たちからもワラ布団に寝ていたという話を聞いたこともありません。
私にとって全く見当のつかないワラ布団ですが、案外優れものらしいのです。
ワラ布団とは
麻や木綿の布団皮に、乾燥させた藁の葉などをたたいて柔らかくして入れたものです。
暖かく柔らかくて肌なじみが良いそうです。たたむことはできないので万年床になってしまいますが、それはベッドと同じですね。
稲の収穫時期になると、藁を新しいものと交換します。古い藁は肥料として利用します。全く無駄がありません。
ある医療機関では、昭和60(1985)年ごろまで病床にワラ布団を使用していたそうです。その理由は床ずれができにくいから。
これはすごいことだと思います。病人や高齢者は、食欲が落ちて痩せてくるとすぐに床ずれができてしまいます。看護する人、介護する人がとても気をつけていても。だからワラ布団はとても優秀な寝具だと言えます。
寝心地を試してみたいものです。
どなたかワラ布団を商品化しませんか。
出産とワラ布団
祖父母たちもワラ布団を寝具として使用していなかったのですが、父方の祖母は出産のときにワラ布団を作ったと話していました。
これは藁束を布団の中に入れて作ります。祖母は35束入れたと話していました。そして出産したあと1日1束抜いていくのです。藁束がなくなれば「床上げ」といい、普通の生活に戻ります。
出産の準備として藁束を入れたワラ布団を作る慣習は全国でみられました。布団の形にせず、藁束そのものを積み上げたところもあります。
この布団は前述のワラ布団とは違いますね。祖母にはきちんと聞かなかったのですが、敷布団として使用したのではなく、出産のときの背もたれに使用したと思います。藁束そのものを使用しているところもありますし、布団の中に藁束があればゴロゴロして眠れそうもありませんから。
祖母は10回、この方法で出産したのです。小柄な人だったので、本当によく頑張ったと頭が下がります。
この時代(今から100年ほど前)は「産めよ増やせよ」と出産を奨励している時代でしたから、女性は多産でした。母方の祖母も6人産んでいます。
ただ、母方の祖母が出産時にワラ布団を用いたのかわかりません。母方の祖母とはこういう話をしてこなかったなあ、と残念に思っている今です。
参考資料
宮崎清著『図説藁の文化』法政大学出版局1995年