『幼児教育』男性保育教諭の現状と課題と
私の園では男性保育教諭が私を含めて4名います。他園と比べてみても割合は多いのではないでしょうか。2020年4月時点での保育士全体に占める男性保育士の割合は5%に満たないので男性保育教諭の数は多いと思います。
男性保育教諭の権利
そもそも保育士という資格が「保母」から変わったのは1999年のことです。名前を見ればわかるように、保育士という職業はほぼ女性の仕事でした。1985年に男女雇用機会均等法が制定され、翌86年に施行、1998年に児童福祉法施行令が改正され、保育士という呼称が誕生しました。1977年の児童福祉法施行令によって保父という呼称は存在していましたが、職業欄などには保母と書かなければならないといったこともあり、形式上だけのものであると言わざるを得ませんでした。男女雇用機会均等法などはもっぱら女性の権利を向上させることが狙いでしたが、保育士という職種は逆に男性側の権利が問題となります。
男性保育士の社会的立場
さて、現在の男性保育士の社会的立場ですが、これは窮屈な思いをしていると言わざるをえません。時折ニュースになる男性保育士によるおむつ交換の際に、保護者の方が女性保育士を指名したなどの出来事もありますが、これは保育教諭という職業が専門職として認知されていないことによるところが大きいと思います。保育教諭の専門性について、社会全体が理解をしているということが重要です。今回のえんちょうだよりの発刊もそれの一歩です。おむつの交換もプール等でのお着替えも当たり前ですが保育現場の仕事として必要なものです。医師が病気を抱える全ての方を診断するように保育教諭の仕事は保育の必要な子どもに対し、教育・保育を提供することです。保育教諭は保護者の皆様から大切なお子様をお預かりするために大学を卒業し、国家資格を取得、勤めだしてからも業務の合間で研修を重ねて保育に邁進しています。そこは少しずつ認知されるよう頑張っていきたいところです。
男性保育教諭だからできること
自園の男性保育教諭メンバーは、社会的な理解の不足を理解した上で効率的な業務ができるようにミューティングを始めました。研修内容は主に男性保育教諭だからこそできることについてです。例えば防犯(不審者)に対してやはり女性では不安な側面がありますが、男性だからこそできる対応があります。2011年に宮城県で発生した不審者侵入の事件も園外をウロウロする男性を早めに不審者と断定し、最終的に刃物を持った男性を取り押さえることができました。それから保育教諭の仕事は存外力仕事が多いものです。プールの組み立てや重たい荷物の運搬など男性保育教諭だからこその適正もあると考えています。4名の男性保育教諭は力仕事や怪我をしやすいような業務に関しては自ら積極的に行うように話し合いをしています。そうすることが働きやすい職場にもつながっていると思います。
社会から見られる目
もちろん私たちは男性保育士による犯罪が起きた事例があることを理解しています。そして行動によっては否定の目を向けられる可能性があることもわかっています。他の職員の目が届かない密室で子どもと二人きりにならないなど前回のMTでも話し合いを行いました。疑惑を持たれないように職務を全うすることも保育業務の特性上必要であると考えております。そのような積み重ねが保護者の皆様から信頼を築いていく方法と思っています。信頼が築かれた上で、保育教諭の仕事が本質的なところで平等になって行けばよいと思います。おむつ変えや着替えは保育の業務の一部であり、全てではありません。そこだけにフォーカスが当たり、男性保育教諭を否定的にみられてしまうのは悲しいことです。そうならないように私たちは学び続けていきたいと思います。
※自園は認定こども園ですので保育士を保育教諭と呼んでいます