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「本気!」の温故知新 〜セサミンEXの広告変遷〜

最初に言います。
この記事、過去一番で書きながら楽しかった&すごく学びになった内容でした!
健康食品での広告の教科書みたいな内容だと思います。それではいきましょう!

改めましてこんにちは、チャボです。
健康食品会社では、販売に向けての広告会議でよくこんな話が上がります。

「大手の広告はうまい」
「機能面の訴求だけではダメだ」
「情緒を得ることが今の時代には必要だ」
「このコピー、もっとこうできるのでは?」

こういう話、聞いてて本当にパーツの話だなといつも思います。お客さんにどう思われるか?が起点になってないとか、そもそもどういう目的でやるのか?などいろんな観点ありますが、、、

でもふと思う。
大型商品や昔からの商品ってなんで魅力に感じるんだろう。

こういう時は、法令も一緒ですが過去を知ることが重要です。
過去にあったこと・その積み重ねを知ることは、なぜその商品が受け入れられてきたのか?についてを時系列で知ることができ、かつそれを知ることが今後のマーケティング活動に活きると考えます。

そんな中で、前々からやろうと思ってた「大手企業の大型商品の過去からの変遷」 それをこの8月では少し腰を据えてやろうと思ってます。

第一弾は、サントリーウエルネスさんの「セサミンEX」です。

セサミンEX

この商品ですが、通販ビジネスのお手本のようなモデルです。
最近はDHAが入った商品やロコモアなどを稼ぎ頭にして、セサミンはブランドイメージを牽引する役割(シルバーブレット)の役割になっています。

GRAMCOより引用

前段長くなりましたが、それでは内容に入っていきましょう。


①市場導入時期の当時の環境

セサミンというものについて、この時代の認知はどのようになっていたのでしょうか。

1990年〜2000年はちょうどこの時健康ブーム真っ只中で、いろいろな食品が流行っては流れていくような時代でした。「赤ワイン」「黒酢」「ココア」「ケフィア」など非常に様々な素材が認知されました。
少し話ずれますが、今の40〜50代付近が、さまざまな健康悩みが現れてきた結果、「食」に立ち戻るのはこういう背景もあるのでしょうね。

その中に「黒ゴマ」もあり、この時期にゴマ=健康に良さそう。という認知がついたと考えられます。

②市場導入期(2002年〜) 商品や素材中心の広告

そんな中、セサミンEXは1993年に初代セサミンが発売されます。そして、1996年に今の前身の「セサミンE」が発売されました。
当時TVが広告の中心だったのでインフォマやCMを中心にコミュニケーションが組み立てられます。
市場に導入する際、広告で語られることは以下のような内容でした。

●胡麻には色々な健康パワーがある
●健康パワーの源はセサミン。しかし胡麻成分にわずかしか含まれない
●健康パワーに注目がされており、博物館などでも商品が展示されている

当時セサミンCMのカット

え、これだけ?と思うかもしれませんが、この導入時期から数年でこの広告・インフォマを回しまくって、「セサミン=サントリー」と、「セサミン=希少で良いもの」というイメージに絞って強固にしました。

③市場成長期(2007年〜) 著名人を立てて「若さ・活力」に重点を置いた広告

ごまは、錆びない。(2007年〜)

ここからがサントリーのお家芸。有名人を起用しながら製品で謳いたいことをその方に憑依させて語っていくやり方です。(別途YouTubeで紹介します)

2003年頃、三浦雄一郎さんが70歳という年齢でエベレスト登頂を成し遂げました。サントリーは2007年から三浦さんをCM起用して以下のような広告を展開します。

当時セサミンCMのカット

広告の中では三浦さんが冬の険しい山登りをしているシーン。
出てくる言葉はこの2つだけです。

●老いは怖くない。目標を失うのが、怖い。
●ごまは、錆びない。

どうですか?多くを語らないですが「こういう年の取り方をしたいという憧れ」「(直接的には言わないですが)ゴマをとっていれば錆びない」などの感情・イメージが感じられます。

ちなみに余談で、薬機法観点で「ごまは、錆びない」はうまい広告です。
一般的な胡麻の話&セサミン=錆びないとは広告内で謳ってない→根拠出せと言われても、ごまの抗酸化成分の話出せば終了。
製品広告でこれやれるの本当にすごいです。

かつ、この頃は三浦雄一郎さんのCMと並行で以下のようなテーマで製品と合わせて広告を実施します。

●日本で古くから食されてきている(日本のスタンダード)
●いろんな人が年齢を感じている(若さの秘訣)

当時セサミンCMのカット

このくらいから、セサミンにいろんなお客さんの認識が溜まっていきます。

具体的にはこんなイメージでしょうか。
●エベレストに登頂した三浦雄一郎さんが飲んでた。ごまって凄い。
●昔から食されてきてるので安心。
●年齢感じてるけど、皆感じることは一緒なのか。セサミン。

このベースを蓄積した上でこの後、サントリーは一気に駆け上がります。

私は何歳でしょう?(2012年〜)

2010年以降、アンチエイジング・若々しさに比重を置いた広告を展開。
おそらくここが今のサントリーの核を作った時期です。

具体的には著名人を多く起用し、年齢を寄せ付けないような方々の広告で以下の展開を行います。

当時セサミンCMのカット

この時期に30秒CMで上記のような展開を行います。
取材形式のような広告で、CMの中では以下の2点だけを話しています。

●年齢についての著名人が感じること(本人の口から話す)
●セサミンは40代からの年齢食品であること

年齢に対して、著名人が感じることを打ち明ける。でも決してそれを遠ざけようとはしなくて、大切なのはうまく向き合っていくこと。
そのような人生をお手伝いをするのが「サントリーの「セサミン」」

おそらくこの時期に、今よく言われる「情緒」が形成されたのだと思います。商品や企業本意でなく、お客様の口から出てくる言葉をCMに載せて共感を得ること。これは企業本意でなくて素敵なあの人になりたい。そう自然と思えるようなコミュニケーションであり、同時にこの企業なら任せられる。良い企業だ。という印象もつきます。

かつ、同時期にお客様センターの広告などもインフォまでは行っており、サントリーウエルネスとしての起業姿勢を打ち出し。今まで蓄積した素材への信頼などRTBと合わせて、ここでポジティブなブランドイメージが一気に定着したのだと思います。

④市場成熟期(2017年〜) 若さの秘訣=セサミンの定着

色々試したけどやっぱりセサミンでした(2017年〜)

ちょうどこの前後でDHCや、やずやなどの後発部隊が「黒セサミン」などの商品で追随してきます。
しかし、ここまでのブランドイメージ・信頼性が蓄積された状態だとそんなのもはや関係ありません。さらにサントリーは王道を進むべくコミュニケーションを強化します。それがこちら。

当時セサミンCMのカット

おそらく知ってる人結構多いのではないでしょうか。加山雄三。
「(色々試したけど)やっぱりセサミンでした」で有名かと思います。

年齢を感じさせない若々しさ。にまさにぴったりの采配。
若さの秘訣というメッセージを王道ど真ん中で展開します。

セサミン自体がトップラインに来る中でも、今のお客様を逃さないように&過去使ったけど実感がなかった人に向けてのコミュニケーションとしてこれも大当たりします。「色々使ったけどやっぱり〇〇」というのはよっぽど信頼性のあるブランドでないとできないコミュニケーションですが、サントリーはこれをマス広告でやってのけます。「若さの秘訣。」を王道で走り抜けた時期です。

しかし、このくらいの時期から機能性表示が拡大を進め、新勢力に少しずつ規模が削られていってしまいます。
そのため、サントリーとしてはロコモアやオメガエイドなどを機能性化にシフトさせ、この商品については商品を売る広告から「セサミン=若さの秘訣」を維持するコミュニケーションに転換させます。(その証拠に、このくらいの時期からは製品の特徴や研究の話など、いっさいマス広告でしていません)

歳をとることは魂が老けることじゃない。(2022年〜)

その転換を表すのが直近の広告。矢沢永吉を起用したセサミンの広告。
約30年にもなるブランドで多くの語りは不要と言わんばかりのコピー。

「実感年齢」

当時セサミンCMのカット

これだけセサミンのイメージが蓄積されて、永ちゃんが「実感年齢」「セサミン、実感してます。」って言ったら、それだけで「若さの秘訣」って伝わりますね。

また別では「ビタミン、ミネラル、セサミン」のような広告も展開し、必須のものというイメージを発信しています。

当時セサミンCMのカット

しかし、少しこの辺を見てると苦しくなってきてるイメージを感じます。
おそらく数十年かけて整えた土台ですが、これからの40代50代はなかなか同じようなメッセージ・展開ではうまくいかないと感じてるのでしょう。足場を維持しながら「いけてない」「古い」と感じられないような最低限の投資をしている印象です。この商品崩れると、DHA側にも影響出ると見込んでのことでしょう。

しかし、あまり細かい話をしてしまうことは積み上げたブランドを崩すことにもなりかねないので、どのように今後広告展開されていくかが注目です。

まとめ

今日の内容を簡単にまとめると以下のような形になるかと思います。

まとめ

これをみて、私が主に感じたことは以下の3点です。いずれも当たり前なのですがあらためて成長した商品の歴史を見ると感じることが多いです。

●プロダクトライフサイクルの各時期で、獲得すべきイメージが明確(いきなり情緒的なイメージから入ったり、ブランドイメージ定着してきたら商品の語りは控えめにしたり全体バランスを見る)
●目的に合わせて広告のやり方・手法も変えている(導入期は製品語り、成長期は「若さの秘訣」のイメージ獲得に全突っ張り。代理店が提案してくる内容全部やるみたいなバカなことしていない)
●おそらく3〜5年単位で目標を立て、それをやり切ってる(単年でダメだからって撤退してない)

目標とする到達点設定、誰にどんなパーセプションを獲得したいか?言語化(WHO・WHAT)、それに合った広告作り(HOW)で整理されているのが印象的です。

これって結局結果論に見えるのですが、上記3点はどの時代でも必要な要素ではないでしょうか。それをちゃんとやり切ったことが今に繋がってる印象です。

しかし、今の時代は法令もそうですし、お客様のありたい姿、コミュニケーション手法など30年前とは全然違います。そのため今の時代にあったコミュニケーション・方法が求められていくのでこれをそのままトレースはできないかと思います。

まとめのまとめ 個人的に、ここ大切だなぁと思ったこと

大切なのは、どういうふうにお客様の認知転換が行われていったのか?それを強くしたのはどういう広告で、なぜそれがお客様にとって良かったのか?という、「①お客様を起点に」「②その合理を考察する」そして「③得たことを実行する」ことです。

この内容は、考察する上でのたたきの1つでしかなく、時代背景なども加えて考察できるとさらに広がりのある内容となると思います。また考えるだけではなく、実行することが重要。健康食品の業界は昔から変遷ありますが、古きを温めて新しきを知ることの大切さを改めて感じました。

連休これから始まるので、読みだめできるようにいくつかこういう記事作ろうと思います。
いやー、楽しかった! それではまた。

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