茶ノ机
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第一話 悲しき一族 第二話 門出① 第三話 門出② 第四話 門出③ 第五話 学園への扉 第六話 最初の舞台 第七話 アホお嬢 第八話 怒りはエビのしっぽの先に 第九話 ほの暗い森の甘い誘惑 第十話 優しさと冷たさの交差地点 第十一話 傷口を狙われる檻の中 第十二話 戦うものの性 第十三話 恐怖×尊敬=◯▲X 第十四話 回り道の近道 *絵師さんへ 当小説は挿絵を募集しております。描いて頂いたささやかなお礼として、挿し絵を掲載するページ内にてご紹介と宣伝をさせていただきます。対
伊賀晃とは女子寮の門の前で別れた。お互いに簡単な挨拶だけを済ませすぐさま背を向け会った。伊賀晃も自分と同じように早くこの場を立ち去りたいと思っているように感じた。唯一違うのは私をよく知る人が顔を見たら私と気づかないくらいぐしゃぐしゃに顔が腫れた惨めな姿をこれ以上見られたくないと思っていることだ。 玄関でスリッパに履き替え、部屋に戻る間にも私の目からは自動的に涙が溢れ続けていた。私は厳重に隙間なく確実に誰にも見られないように2段ベッドのカーテンをぴちりと閉めて横になる。 伊賀
▷概要 働きながら1人の息子を育てる母。 16年以上、ゆるやかに同人小説やブログ、オーダーメイド小説、会社のメールマガジンなど何かしら文章を書き続けている。とても病弱で運動音痴。 ▷noteの活動について 小説を中心に載せて行きます。 以上
厳しい冬も過ぎ去ろうとする2月末。 私は卒業アルバムの個人写真の撮影とその下に載るメッセージを書くために大学に訪れていた。 「”卒業後は地球一周してカフェ開くからみんな来てね☆”っと。よし、今日はこれで終わり」 意気揚々と財布や鍵といった必要最低限のものしか入っていないバックを手に取り、書いた紙を職員に渡し教室を出た。特にやることもなかったので、近くのミスドでのんびり小説を読むことにした。 「ああ、本当恥ずかしい」 後ろから呆れた声が聞こえた。 独り言にしてはあまりに大き
次の日の放課後、私は早速、伊賀晃に会いに行った。 「1年生?誰か待ってるの?」 入り口の近くをうろついていた私に3年生の女子が声を掛けてきた。 香水、整髪料もしくは化粧品と思われるフローラルな匂いが鼻をくすぐった。 「伊賀晃に話がある」 3年の女子は少し眉をひそめて急に態度を変えてきたことに私は違和感を感じた。 友人と談笑していた伊賀晃が私に気付くと急に表情を曇らせ、教室の出入り口にきた。 3年の女子は、それをみて私にだけ聞こえるよう舌打ちし、その場を去った。先ほど
伊賀晃は男子寮から見えないくらい遠ざかった場所で古い小屋の付近で立ち止まった。 私は大小様々石が足裏を刺激するのを感じ、靴でそれをどかした。伊賀晃がきょろきょろと周りを見渡している。 足裏の痛みが無くなると、今度は固く握られた手がきしみ始めた。 「伊賀晃、そろそろ離してくれないか」 「ああ、すまん」 伊賀晃は握りしめていた私の手を離した。赤くジンジンと余韻が残っている。 何か言いたそうな彼の顔を見て、もどかしく思い私は整地した地面に膝をつこうとしたら慌てた顔でそれを阻止さ
今日の晩飯のメニューはハンバーグ。 付け合わせにゆでたにんじんとブロッコリー。ポテトサラダに味噌汁はわかめと油揚げ。ご飯はもちろん大盛り。 それらを全て2人前ずつ頼み、晃は意気揚々と食べ物で埋め尽くされた二つのトレーをテーブルに並べた。 「君はそれを全部食べるのかい?」 斜め前の席で丁度食事を終えた霧生白狐(きりゅうびゃくこ)が引き気味に口を抑えながら言った。 「当たり前だ。それでも夜中に腹が鳴るけどな」 「そうか」 白狐はお茶をすすり、珍しい生き物を見るかの様に晃
窓から差し込む強い日の光で三希は目を覚ました。 既に同室二人の布団は綺麗に整えられていた。 ベッドの脇には椅子、その上にはご飯、味噌汁、焼き鮭、漬け物、納豆、焼き海苔、卵、サラダがトレーに乗っている。 ご飯と味噌汁の間に一枚、可愛らしいクローバーの絵柄が描かれた紙に、丸い文字が刻まれていた。 きっと千成が書いたのだと三希はすぐに分かり文字を読む。 "先に教室行ってるね" 三希は随分と丁寧だなと思いながら、綺麗に器に被せられたラップを一つずつ取り外していく。 味
「よーやく会えたわね。東雲三希、今日こそ逃がさないわよ」 なんとも寝覚めの悪い朝だと三希は思った。 今までの彼女の人生で一度も自分の寝床の真横で仁王立ちされ、小言を言われるなんて経験はない。 「もう少し寝かせてくれないかな。疲れてるの」 「そんなこと許されると思ってるの?」 「春菜……東雲さん怪我してるんだから喧嘩はだめだよぉ……」 「怪我だって?」 三希は思わず起き上がる。しかし、全身くまなく針に刺された様な痛みが走り、顔を歪めた。 服は着ていたはずの制服が灰色のス
「ここにいたか。手こずらせやがって」 冷たく闇に響く声。 声に反応し、その巨体をぐにゃりとくねらせ声の主を認識する一瞬の間に、伊賀晃(いがあきら)は手に持っていたハンドアックスをその赤黒い首筋めがけて振りかぶる。 しかし、晃の予想以上に皮膚は強靭だった。分厚い肉に刃は突き刺さるも骨まで断ち切る事ができない。 痛みで暴れもがく肉塊の隙を探していると、奴の両手から振り飛ばされ、近くにある木に叩き付けられた人がいた。 その人がぴくりとも動かない様子を見て晃は焦り始めた。 晃はハ
この話のもくじ 太陽の光が地上を覆い尽くす時間でも暗く、木々が競う様に伸び合う森。 一歩ずつ進めるごとに時間の感覚を狂わされ、徐々にこの世から隔絶したもう一つの世界が広がる。 元の場所に戻れないかもしれない恐怖よりも、森が放つ誘惑の方が強い。 この先にある新世界を求めて、三希は助蔵が追いついていないことに気付かずぐんぐん前へ進む。 三希は授業に行かなくなってから、助蔵を連れ学園中の強い人を探しまわった。しかし、ほとんどの生徒が授業に参加していたので誰も相手をしてくれない。
この話のもくじ 「メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと……」 三希は退屈で仕方がなかった。 「0より小さい数は負の数と言います」 これも、あれも、どれも。授業の全てが既に自宅学習でやった事であったからだ。 「I am from Japan. この意味が分かる人!」 こんなくだらない質問にみんな一生懸命手を挙げて我先に答えようと努力するのか全く分からないと。 時間は有限である。 ぐだぐだ無駄な時間を過ごしている間に、憎き父親との差が生まれ
この話のもくじ うららかな春の陽気に浮かれているのか、それともただ単に落ち着かないだけなのか。 教室に戻った生徒達は各々固まり談笑し合う。 ガラリと教室のドアが開き、教師が入るとすぐ散り散りになって生徒達は自席につく。 「全員揃ったな。私は千曲ナガレだ。1年間よろしく」 ナガレは大きな背中を生徒達に向け、黒板に大きく大胆な文字を書く。 その文字を見た生徒達はまるで地獄に落とされた死者の様な顔をした。 「さぁ、入りなさい」 自信たっぷりに胸を張り、一つ一つが力強い足
この話のもくじ 気付いたら暗闇にいた。 目を閉じて数秒、開いても黒以外の色は何も見えない。 手足を動かしても塵一つ当たらない。 自分がどこにいて、どうしてここに居るか思い出せる気がしなかった。 ぴちゃり ぴちゃり 手に何かが落ちて来る。 流れる感触と音で固形物で無い事は確かなのだが、水ではない。 時折どろりとしたスライム状の固まりを感じる。 生暖かいところが余計に気持ち悪い。 これは何?と自分に問いかけた。 答えは分かっているのに、そうであって欲しくないという気持ちと
この話のもくじ 厳しい寒さを越え、春の暖かい日差しを受けながら、道無き道をひたすら突き進む。日が落ちるにつれ、徐々に季節が冬を思い出したかのごとく様変わり、日中、衣服に蓄積された汗も手伝って三希は一気に冷えを感じた。 「あれが青龍学園かな」 「恐らく、そうだと思います」 地図と高度計と目の前にある長い壁を見比べ、自信なさげに応える助蔵に三希はいら立った。それだけが理由ではなく、長い旅路にろくな休息も取らずはしり続けたので心身共にぼろぼろであった。だから余計に助蔵の回答に
ベジタリアンな2歳の息子をトリコにした肉料理。 またリピートしたいので備忘録かねて記事を作成しました。 材料(2人分)とり肉(から揚げ用) 200g 調味料◎岩塩 少々 ◎酒 大さじ1/2 △砂糖 大さじ1/2 △味噌 大さじ1 △みりん 大さじ1/2 △水 大さじ1 オリーブオイル 適当 調理方法1.とり肉はジップ