実戦将棋問題#16(沙久耶道場・伝統の一戦特集 その4)
このペースでいつ特集が終わるのかと思うかもしれない。大丈夫だ、数えで30回目くらいまで続くかもしれない。それでも紹介に値する内容が多いので、構わず進めていく。
伝統の一戦:三局目(2020年9月16日対局) 先手番
第46問
第47問
第48問
ヒント
第46問
先手は馬を使って、金を守りにきたところ。後手としては金銀が豊富なので、着実に相手の守りを剥がしていきたい。ここでも金を狙った好手があるのだが、それを考えていただきたい。
第47問
馬の守りは金銀三枚と言いますが、駒としては一枚でしかないのは変わらない。でもこの位置に飛車を下ろすのはマズくないですか?数少ないチャンスをきちんとものにしていただきたい。
第48問
ここは先手にとって最後の踏ん張りどころ。大駒は占有しているが、金駒がない。ちょうど都合よく補充して守りに活用できないだろうか?
答えと解説
第46問
△4四飛打
金と馬を両方同時に狙うこの手がちょうどいい。先手は馬を逃していると4筋を突破されるだけであり、そうなっては勝ち目がない。ということで差し違える覚悟で ▲4七角打 と粘ることを考える。この角打ちに対しては、△4六金打 と上から押さえ込んでいく手が一つ考えられる。
先手としたら角と馬の両あたりになっており、かなり忙しい。この後の展開を考えるならば、▲5六角 △同金 に ▲7一飛打 と下段を狙ったりする手がある。それでもかなり厳しい勝負になる。後手のそっぽに行った飛車が戻るが早いか、先手の細かい攻めがつながるが速いかの勝負である。
もちろん金で抑え込むのではなく △8四飛 と馬を抜いても十分である。この場合、先手は ▲5六角 と桂馬を取り、次の ▲3五桂 から王手を絡めた攻めを狙う。ただそこで △5四飛 と回って角を追いかけていけば、後手玉はやや狭いもののすぐ詰まないことを考えれば十分に指していける。
第47問
▲3五桂打
いきなり桂馬で王手をかける。その狙いはもう見えているだろう。みんな(決めたらまず嬉しい)王手飛車である。かといって、この手に玉を逃げると一気に後手玉が危なくなる。金銀が手持ちに豊富であるし、桂馬も手に入るということで、ここは大人しく △同歩 ▲6七角打 △3四銀打 ▲8九角 と後手の攻めの中心となるはずだった飛車を一瞬で抜く。
先手は大駒を全部せしめたものの、後手には金銀桂と細かい攻めを敢行するのに役者が揃っているようにも見える。ただ、8九にいる角がまだ後手玉を睨んでいるので、その勢いをできる限り維持したいところである。
第48問
▲3四角
この盤面に対してはこの一手であろう。△同銀 に対し ▲5六銀打 と「桂頭の銀」を決める。
これでも先手が不利な形勢であることに変わりはないのだが、最後の粘りを見せていきたい所。とは言え後手は金銀が豊富にあるので、ここで △4六銀打 と自分の桂馬を守りつつ4七の地点を狙うような筋が存在する。ただしその場合は、後手の持ち駒の金銀を使わせつつ、4八地点の馬が守りに効果的であることを先手としては主張したい。そして後手の5五地点にある桂馬が質駒になっているので、必要ならば回収しつつ、後手の攻めの銀には引いてもらうようにすれば、まだ立て直すことは可能であろう。