実戦将棋問題#19(沙久耶道場・伝統の一戦特集 その7)
引き続き伝統の一戦の対局より。
伝統の一戦:五局目(2020年9月30日対局 その2) 先手番
第55問
第56問
第57問
ヒント
第55問
竜と後手玉が同じ段にいる。ということはその間にある駒を攻めるのが常套手段というもの。その駒をお手軽に攻める方法はないだろうか?
第56問
先手の竜が自陣内に堂々と居座っているが、攻め駒不足もあるのですぐに暴れることはなさそう。ここでは後手からズバッと切り込む気持ちの良い手がある。浮いている駒に狙いを定められないだろうか?
第57問
香車の頭に歩を叩いてきて金への直撃を形ばかりに防いだところ。後手としては自陣が盤石なので決めてしまいたいところ。
答えと解説
第55問
▲5二歩打
この歩打ちがお手軽ながら後手玉に素早く迫る一手。仮に △8二玉 と早逃げしても ▲5一歩成 △7一金 ▲5二と と迫っていけば良い。まさに「と金の遅早」である。相手玉に近い分だけ、早く迫ることができる。無理に受けるなら △6二玉 とするのだが ▲3五桂 と浮いている金にターゲットを絞れば勝てるであろう。
第56問
△5五角成
ここはズバッと桂馬を取りながら馬を作る。なんだ、歩で取れるではないか、と ▲同歩 とすると、止まっていた角の利きが生き返り △7八角成 と切り込んでいきなり終盤戦が始まる。
かと言って、元の △5五角成 に対して先手から有効となるような適当な手は見当たらず、渋々馬を取るしかない。この前後数手が本局の結果を決定づけたと言っても過言ではないであろう。
第57問
△6七馬
一度馬を引いて王手をかける。よく見ると先手の持ち駒は歩しかないので合駒をすることができない。仕方なく唯一の逃げ場所である ▲3九玉 とするのだが、そこで △3六桂打 と援軍を送る。
これで先手玉は必死である。形ばかりに ▲3七桂 として △4八金打 ▲同金 △同桂右成 ▲2九玉 △2八金打 までで詰む。
なお本譜は先に △3六桂打 であった。
この一手でも勝負は決まっている。ただ ▲5九玉 と逃げた瞬間に逃しかねない少しばかりの不安がある(もちろん馬が睨んでいるのもあって、まず逃げられはしないのだが)。そういう意味では、本題の解答の方が見通しの良さに関して勝っているかもしれない。とはいえ、大差はないので確実に勝ちきれば良いであろう。