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断熱性能を上げる前に、おひさまに素直な設計をした方が断然省エネだよっていう話
自己紹介
・東京にある工務店で働いています
・注文住宅やリフォームの設計をしています
・父が社長で、そのうち私にバトンタッチする予定です
今回は、皆さん建物の性能にお金を使おうとするけど、その前に自然のエネルギーを活用した家づくりをした方が断然省エネで、コストも抑えられるよって話をしていきます。
お客さんと打合せをしていると、多くの場合で「御社の住宅の断熱性能は?」「換気システムは1種ですか、3種ですか?」というような建物の性能の話をまず中心に聞かれます。
おそらく他のハウスメーカーさんが、その点を強く押しているため、営業マンから比較するように言われているんだと思います。
(うちにも時々、一◯工務店からあて馬としてお客さんを紹介されます笑)
ただ、そういう会社に限ってお客さんが持っているプランを見せてもらうと、屋根形状や窓の位置がおひさまの光や風通し等をほとんど考慮されていない非合理なプランになってたりします。
自然エネルギーを活かす設計は、住宅を高性能化するよりも、遥かにコストパフォーマンスよく快適にできる手段です。
さっそく自然エネルギーを活かす設計とは、どんな家づくりなのかを説明していきます。
おひさまの光に素直な家づくりをする
パッシブデザイン、という言葉を聞いたことがある方もいるかと思います。
パッシブデザインとは簡潔にいうと、「自然環境を上手に利用して建物の快適性を高める設計の手法」です。
自然環境というのは、太陽の光や風、水などの自然要素のことです。
例えば、太陽の光を上手く取り入れて、明るさや暖をとったり、
窓を適切に配置して、風通しを良くしたりというのが代表例ですよね。
これらを上手に活用すると、冷暖房や照明などの人工的なエネルギー消費を減少させることができます。
つまり、電気代を大幅に削減できるということです。
こういった自然エネルギーを上手く活用すると、どれほどのインパクトがあるのかを説明していきます。
パッシブデザインでこたつを無料で毎日つかう
自然エネルギーを活用するということは、毎日タダでエネルギーを利用できるってことなんです。
例えば、真冬で暖房をしていない部屋でも、日当たりが良ければあまり寒くならないですよね?
その原因が、おひさまの熱エネルギーが窓を通して家に入ってきて部屋を温めているから、というのはなんとなく想像できると思います。
具体的にどれほどのエネルギーが入ってきているかというと、、、
よくあるサイズの大きな掃出し窓(幅1.65m 縦2.0m)を家の南面に設置した場合、家の中に入ってくるエネルギーの量は、約500W になります。
この500Wというのは、こたつ1台分に相当します。
つまり、南面にきちんと大きな窓を設置するだけで、冬の間、ほぼ毎日、日中は無料でこたつ1台分つけっぱなしにさせてもらえるってことです。
窓1ヶ所なら、こたつ1台。
窓2ヶ所なら、こたつ2台が無料です。
こう考えると、結構すごくないですか?
パッシブデザインにはこのぐらいの威力があるんです。
無料のこたつが2台も動いていれば、そこそこの熱エネルギーがある状態なので、暖房もガンガンつけなくてもすぐに温まりやすいので、電気代が削減できます。
高断熱住宅であれば、冬場逃げていく熱量が少ないので、おひさまのエネルギーを逃がすことなく、温めることができます。
しかも、エアコンの温かさよりもお日様の温かさの方が、何倍も心地よいです。
これまでの説明で、理解の早い方はおわかりだと思いますが、
家から熱を逃しにくくする高い断熱性能や熱交換換気システムは、パッシブデザインがきちんとできていて初めて、効果を発揮するものなのです。
性能の高い魔法瓶を買ったところで、温かいお湯を入れなくては意味がないのです。
夏場は壁掛けエアコン1台だけで暮らしてみよう
夏場でも、パッシブデザインは威力を発揮します。
冬季は、積極的におひさまの光を室内に取り入れて、暖房にかけるエネルギー量(暖房負荷といいます)を減らしましたよね。
これを、日射取得と呼びます。
それに対し、夏場に室内に入ってくる太陽光を遮ることで、室内の温度を下げることを日射遮蔽と呼びます。
日射遮蔽ができると、家のなかに入り込んでくる熱エネルギーの量が減るため、冷房がそこまで頑張らなくても良くなります。
真夏日に日が当たるところに、車をしばらく置いておくと、乗ったときにサウナみたいになってますよね。
あれがおひさまの熱のパワーです。
日射遮蔽はあの熱エネルギーが家のなかに入ってこないようにカットすることで、エアコンの効きを良くするイメージです。
少し応用ですが、
日射遮蔽が十分にされており、断熱等級6レベルの高断熱高気密の住宅であれば、冷房負荷をかなり小さくすることができます。
そうすると、空調計画によっては壁掛けエアコン1台で家中を冷房することが可能です。
壁掛けエアコンでの全館空調ができれば、大手ハウスメーカーから提案されるような、ダクト付きの高額な全館空調システムを入れる必要もありません。
年数がたって、エアコンが壊れたとしても交換するのはただの壁掛けエアコン1台分の費用で済むので、余分な費用もかかりにくいです。
ちなみに、日射取得と日射遮蔽の両方を実現することも可能です。
(むしろ両方実現することが必須です)
日射遮蔽と日射取得は矛盾しているように感じられるかと思いますが、
太陽の角度を十分に理解したうえで、適切な設計をすれば両立することが可能です。
その具体的な方法は、次回解説いたします。
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