ばあちゃんとじい
私は、3LDKの部屋で、50以上歳の離れた祖母と二人で暮らしている
この集合住宅は築四十年、あちこちに不便を来してはいるが、それなりに快適に過ごしている
しかし、夏の季節になると話が変わってくる
我が家のエアコンはリビングに一つあるのみで、私の部屋を冷やすためには、一度リビングを冷却し、その冷気を扇風機でこちらに流す、という二度手間を経る必要があるのだ
要は、我が家全体を涼しくするかしないか
冷房効率最低の我が家のシステムだが、ここには二つの大きな落とし穴がある
まず、基礎代謝の違いだ
祖母は言ってみれば生きているだけの死体のようなもので、代謝は著しく低い
昔気質なことも相まって、真夏日でも「冷房の風はなんだか気持ち悪いからね」と冷房をつけず、冷やし中華を食べて涼をとっている
余談だが、祖母は極度の不精であり、冷やし中華とは名ばかりで茹でた麺を冷やすことなく食べることも多々ある
ともかく、基礎代謝が極めて低い祖母は、よほどのことがない限りエアコンをつけようとは言い出さない
むしろこちらがつけたエアコンを平気で消してくる
消すな
こっちがつけたってことは入用なんだよその冷房が
代謝の違いで、共有する家の温度で揉めるという問題は非常に重大だ
もう一つ、さらに重大な問題がある
先ほども述べたようにエアコンをつけている間は、私の部屋の扉を全開にして、扇風機で冷気を送り込む必要がある
とても暑い日には、一日中そうしている必要がある
するとどうだろう
私の部屋のプライバシーはまったくないことになる
できないのだ
自慰が
祖母は基本的にテレビの前の座椅子から動かないが、万が一ということがある
なるたけ閉ざされた空間で自慰をしたいというのが人情というものだろう
しかし、私が自慰をするために扉を閉めると、祖母はその間にも冷淡に冷房を消してしまう
私が自慰を終え冷房をつけようとすると
「部屋閉め切るんだったら冷房いらないでしょ」
という始末
祖母はおそらく何十年も自慰をしていないのだろう
年頃の男の子が部屋を閉め切る理由なんて皆目見当もつかないのだろう
どうすればいいのだろうか
みんな、助けてくれ