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子どもと男らしさ・女らしさ

長閑な15時過ぎ、私の職場では、自閉症の男の子が、おやつの皿をひっくり返して癇癪を起こしていた。 多分皿の色が気に入らなかったんだろう。 「お皿を投げるのはいけません。だめです。」と目を見て叱った。 彼は不貞腐れつつ、ごめんなさぁいと小さな声で謝って見せた。 「嫌な気持ちになった時は、私にお話しして。何が嫌だったの?」 と聞くと、 「だって僕は男の子なのに!ピンクのお皿だった!青がいい!僕は女の子じゃない!」 と答えた。 なるほど、と思い 「じゃあ次からは投げずに、青のお皿が

    • アルコ&ピースの深夜ラジオに規定された人生を生きている

      中学生の時。私はジョジョの奇妙な冒険に夢中だった。 それを理解してくれる友達なんて周りには居なかったけど、別にかまわないと思ってた。ディオの決め台詞をネットミームのように面白がって教室で叫んでみてるやつらと一緒になりたいとは思わなかったからだ。 荒木先生お気に入りのアルバムを片っ端からTSUTAYAで借りて聴いてみた。そうしたら、まあ正直何が何だか分からないのもあったけど、デフレパードとガンズ・アンド・ローゼズだけは世界一かっこいいバンドのように聴こえてしまった。そこからど

      • 映画考察:パンズラビリンス

        ※重大なネタバレを含みます。 ①パンズラビリンス/ギレルモ・デルトロ(2006)  舞台は1944年、スペインは内戦真っ只中。(ピカソのゲルニカの時代。)父親を亡くした主人公は母親の再婚によって、義父となった大尉が居る内戦基地へと引っ越してくる。戦争、受け入れ難い冷徹な義父に囲まれた主人公は、ファンタジーの世界を夢見て現実から逃避していた。ある日守護神パンに出会い「君は地底の国の王女様だから、試練をクリアしたら地底に連れて行ってあげる」と囁かれた彼女は、その試練に熱中する

        • 2023邦楽個人的名盤10選

          私が住む北海道の冬は、硬質で、つん裂くような痛さを帯びている。ただ夜、虫も獣も居なくなり人間も眠りについた冬の夜は、反対に不思議な暖かさを含んでいる。あまりの静けさが、孤独を、優しく抱いてくれている気がする。 思えば私が好きなアルバムはその多くが冬を連想させる。風のように鋭いギターやノイズが走り、雪崩れのように性急に転がり出したかと思えば、しんしんと降り積もる雪で温かく包み込んでくれる。今回紹介するアルバムにも、そのような要素が含まれているかもしれない。 ①『SPERIOR