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長男との旅-4月3日
天気予報通り、この日は雨となった。
ひさしぶりに、雨が屋根をたたく音で目がさめた。
カルガリーは雨はあまり降らない。
日本の小雨がカルガリーの雨。
日本の普通の雨がカルガリーの大雨
これくらい感覚が異なるので、日本の大雨予報では、屋根をたたく音で目が覚めるのも当然かもしれない。
本来は、宿坊を5:30頃に出て奥の院手前まで行く予定でした。
生人供
空海上人へ毎朝6:00と10:30に食事を運ぶ儀式。
1200年以上毎日続いている儀式。
その様子を本当なら見たかったのですが、あまりにもひどい雨だったので諦めました。
コスパやタムパが言われる時代かもしれませんが、1200年以上続いている儀式。
台風であろうが雪であろうが、この日のように土砂降りの日であろうが、毎日毎日空海上人へ食事を運ぶ。
恐らく、コスパやタムパとは全く正反対の世界。
そんな世界を間近で見せてあげたかったのですが…
この先の旅の行程で、体調不良になる恐れもあるほどの雨でしたので、致し方なく断念。
7:00からの勤行に参加。
長男は初のご焼香も体験しました。
その後、護摩焚きも別の場所で経験。
その厳かな雰囲気は、カルガリーでも見る事が出来る『ゆく年くる年』の世界。
その中に自分が身を置いているということに、現実なのか夢の中なのか。
長男には少し戸惑いもあったかもしれません。
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昨晩の夕食に続いて、朝食ももちろん精進料理。
全く飽きることの無い食事でした。
カルガリーでは梅干しに手を伸ばさない長男でしたが、紀州の南高梅
名産であるので食べる事を促すと、
「この梅、うまい」
既製品のとんがった味とは異なり、まろやかな梅の味にさえ驚いていました。
朝食を頂いたあとは、宿坊では当たり前と言ってもいい、写経。
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私自身も初めての体験でした。
不慣れな筆ペンで文字を書く。
字が綺麗とか汚いとかではなく、心を込めて書くことを長男にも伝え、無心で一文字一文字を追う。
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息子も頑張って書きました。
住所や願いは英語で…
なので最後は横書きで。
この写経は追加料金を支払うと、高野山の奥の院へ納めて頂けるとのこと。
もちろん追加料金を支払って奥の院へ納めて頂くことにしました。
日本語を勉強し、日本語検定試験N1を挑戦中の長男ですが、漢字を書く機会が無いわりには、頑張っていました。ここまで長い時間、集中して何かに打ち込む長男の姿を始めてみた気がしました。
この写経が奥の院へ納められるということをとっても喜んでいました。
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今回お世話になったお寺の本堂の屋根の吹き替えの為の銅板
ここにも願いを記載することが出来るとのことから、銅板を寄付しそれぞれの思いを掻き込みました。
(字の汚さはきにしないでね。)
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チェックイン後に食べなかったお菓子
写経が終わり、ひと段落した時に頂きましたが、とっても美味しかった。
お土産として購入したかったのですが、賞味期限を考えると、まだまだ続く旅の長さを考えて購入を断念しました。
派手さは無いけど、日本の心にしみる味でした。
お世話になった宿坊を出て、奈良市内に向けて車を走らせることに。
この日、どこに立ち寄るかは決めていませんでした。
桜の状況によっては、吉野の千本桜を見ることも検討していましたし、明日香古墳、棚田、大神神社、法隆寺、薬師寺、唐招提寺などなど。
候補に挙がっている中から、天候などを考えてその場の状況で行く場所を決めることにしました。
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高野山の大門
この付近に駐車場が無かったことから、息子に車内から写真だけでも撮るようにと…
歴史を感じさせるこの大門もとっても素晴らしい門でしたね。
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山の下にも雲が広がる景色。
日本では当たり前の景色でも、カナダでは見ることがなかなか出来ないので、そんな景色も楽しみながら長男は車窓を楽しんでいました。
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高野山から十津川村方面に戻り、168号線から五条市に出る予定でした。
が、前日山道で運転しながら乗り物酔いをするという苦い経験をした身としては、少しでもクネクネしていない道をということで、予定とは異なるルートで下山。
五条市に入り、名物である柿の葉ずしと柿の餡の最中を頂きました。
柿の葉ずし
私は食べなれているというか、好物でもあるのでどんな味かしっかり記憶しているのですが、初めて長男。
サバのお寿司ではあるものの、南紀1号で食べたサバの棒鮨とはことなり、また違った美味しさに気が付いたようです。とっても気に入っていました。
カナダでは食べる事が無い最中。
上あごに最中の皮がくっついたと言っていましたが、優しい甘さにこちらもご満悦。
ゆずの香も入ったこの最中は、カナダには無いスイーツの感覚のようでしたね。
夕方に奈良市内で逢う予定の元同僚
彼の家族が好きだと言う柿の葉ずし
もちろんお土産に購入しました。
五条と言えば、柿の葉ずしに加えて、五条新町
雨じゃなければ、ゆっくり歩いてその街の風情を楽しむ所でしたが、残念ながらの雨でしたので、車でゆっくり通り抜けただけで終わりました。
江戸時代から続く街並み。
カナダの歴史より古い町並みをみた長男は、
「スゲー」の連発
想像し得ない日本を見せるというテーマでの前半戦は、やはり長男にとって想像が出来ないことの連続のようで、彼の心にどれだけの物が残るのか、親としてもとっても楽しみでもあります。
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悪天候のなか訪れたのが、大神神社(三輪神社)
最も古い神社の一つとも言われ、山全体に神が宿るとされる場所
森全体に異なる空気を感じながらも、拒絶されたり、敷居が高く感じることなく、大きな懐に招かれているような場所でしたね。
新宮から始まってこの大神神社までが、何か神々が宿ると本当に思える場所であった気がします。
紀伊山地の中にある神社仏閣、その全てを巡ることは出来ませんでした。
本宮奥の院とも呼ばれる玉置神社も行きたかったのですが、運転しながらの乗り物酔いに悩まされると言う、予想だにしない状況に、訪れることが出来なかったというのも事実としてあります。
今回はご縁が無かった神社仏閣を、次の機会があったとするならば訪れてみたいと思いました。
十津川の夏の盆踊りも、体験するには値するものだとも思いますし、季節によっても変化に富んだ日本ですから。
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大神神社のある場所は、三輪。
三輪と言ったらそうめん。
柿の葉ずしをほんの少しにしたのには理由があって、ここを訪れること。
店内に入った瞬間、長男の顔が緩んでいました。
他のテーブルで行われいている流しそうめんを見て、目を見開き、食べ方さえも楽しい日本があることを察知して、注文する前からテンションが爆上がりでした。
これまでのなかで、食べる前からテンションが上がっていたのはこの時が最初かもしれませんね。
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炊き込みご飯つきでしたので、鯛と浅利をそれぞれ注文。
ほっそい三輪そうめんですが、ちゃんと腰があって、さすがだと思いました。
カナダで食べるそうめんは、腰は無いものばかりですので、三輪そうめんというブランドになるのも頷ける美味しさでしたね。
外は雨で肌寒い中ではありましたが、我々にとっては全く気にならず、流しそうめんを楽しみました。
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雨のなか次に訪れたのは法隆寺
世界最古と言われる1300年以上前に作られた木造建築
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カナダの歴史の8倍以上もの年月が刻まれている木造建築。
土塀なども含め、とっても雰囲気のある場所でした。
カナダの歴史の8倍以上も長い年月、地震のある国でありながら建ち続けていることに長男も驚いていました。
人々が柱に触れ、年輪が浮き出ている様子も。
長い年月を経てのはなし。
日本の歴史の長いこと。
古くから信仰が現在にも伝わっていること。
何か感じているようでしたね。
カナダでの歴史的建造物と呼ばれるものは、日本でいう明治時代のもの。
未だに日本各地には明治時代に建てられた石造りの銀行などが点在し、普通に使われている所もありますが、カナダでは歴史的建造物に登録されるもの。
時代の深さ、人々の営みの意味、信仰、全てが別格だと感じたようです。
コンビニやスーパーだけじゃなくてよかったと思いました。
日本での運転自体が実に20年ぶり位でしょうか。
新宮から始まり、紀伊山地の中を走り、都会に出てきました。
雨の運転ということもあり、この後他に寄ることなく、奈良市内でレンタカーを返却し2泊するホテルへ
意外にレンタカー屋さんからホテルまでの距離があり、長男は文句を言いながら雨の中を歩いていました。
雨も日本の文化の一つ。
周囲を海に囲まれた日本は雨が多いことでも知られている国。
カナダでは傘をさす人は殆どいませんが、日本では当たり前。
そんな中、雨用のジャケットにフードを被って、おっさんと日本語が少しへんな若者二人が雨の中を歩きました。
JR奈良駅前で元同僚と合流し、東向き商店街方面へ
長男に
「おまえ、何食べたいんだよ。お前の食べたいお店に入るから言えよ。」
そう伝えて街中を歩くも、どの店に入りたいかを伝えない長男。
「どこが良いの?」
の再度の問いに。
「全部入ってみたいから決められない」
との回答。
まぁ、そうだろうね。
目に映る全てが初めての光景で、店先に並ぶ食品サンプルだけでも目を奪われ、我々が進む方向を見失いそうになる長男。
かつて日本で暮らした父親と、今日本に住んでいる元同僚が歩くペースでは、一つ一つのお店を見る暇もない程だったのでしょうね。
東向き商店街にあるとんかつと牛かつの店が並んだ場所まで来て。
「どっちがいい?」
と長男に聞くと
「分かんねーよ。」
とのこと。
暫くして、
「家でいつも食べるとんかつはどっち?」
と聞いてきたので、牛ではなく豚であることを伝えると、
「じゃ、とんかつで。」
ようやくとんかつ屋に入ったものの、メニューをみてどれにしたら良いのか決められない長男。
全てのメニューが魅力的であり、全てのメニューが見た事が無いメニュー。
捲るページ全てのメニューの写真に魅せられてしまい、全く決められない様子。
紀伊山地の中では、宿泊先で出て来る物を食べていたことから、自分で選択できるという状況に、逆に困っている様子。
こういう店には、欲張り系のメニューがあるはず。と。
長男に、とんかつ、エビフライ、カキフライの乗ったメニューを勧めた。
そうでもしないと、一生メニューを選べない様子だった。
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長男にとっては夢のようなメニュー
カキフライを食べて、昇天。
エビフライを食べて、ホテルでの夕食との違いに仰天。
とんかつを食べて、我が家と違いに、目が点。
「やばーい。うまーい」を何度も何度も口にしていました。
私が頼んだ、黒豚ロースかつをひと切れ食べて、自分のカツとの違いにも驚いていました。
恐らくカナダにこのようなメニューがあったら、50ドル以上するであろう内容が、日本では2000円もしないで食べられる。
円安も考えると、実際にはもっと安く感じる値段でもありました。
成田に到着したあと、カナダのコンビニとスーパーを糞だと言った長男。
カナダのレストランについては言及しませんでしたが、日本のレストランのクオリティーと値段の安さに驚きを隠せないでいました。
この後、モスによって季節限定のスイーツを。
私が一口食べ、友人と話をしていて気が付いたときには、長男が全て平らげていました。
写真を撮る暇も与えず。
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長男の携帯に残されたのは、この額縁だけでした。