おばあちゃんから受け継ぐもの
私の母は人混み(デパート)や狭いところ(地下鉄)が嫌いで、ジャージを愛していた。私と妹弟の服はイトーヨーカドーで 680 円で買う T シャツとかで、それも流石に小学 5 年生くらいになれば、これは嫌だと思っていた。
デパートに連れて行って服を買ってくれるのは、いつも父方の祖母だった。だからエンジェルブルーといった子供向けのブランドが大流行したとき、私は祖母の好きな KENZO や agnès b. を着ていた。中学生になってピンキー&ダイアンのロゴが入ったお財布が大流行した時も、それは買ってもらえずに、私は一人で祖母のおさがりの LOEWE と Ferragamo の財布を使っていた。なんてこった、今使ってる財布より高い!
小さい頃から祖母は何度も言っていた。「いいものは全部とってある。あなたたちのところに行くのよ」と。
私と妹はずっと「ダイヤモンドも、パールも、好きじゃないからいらない!」。さぁところがどうだろう。ダイヤモンドもパールも、必要な時はやってくる。カジュアルになってきてるとは言え、冠婚葬祭は定期的にある。
その度に私と妹は祖母の家に駆け込んで、「パールが必要!」「ちゃんとした数珠ある?」だ。こうして着実に祖母の家から私の家へ、「いいもの」は引っ越している。
そんな祖母がもう 1 つ、ずっと言っているのが「靴は手入れすれば 30 年持つ」だ。そんなこと言ったっておばあちゃん、働けばまぁまぁお金がもらえた時代とは違って、とてもで良い靴に投資なんてできないよ。と思っていても、もうファストファッションで靴を買おうなんて絶対思わないし、周りの同世代に比べれば靴に投資している方な気がする。中学生でみんなと同じ財布を買ってもらえなかった頃に、実は気がついていたのだ。みんなの財布は 1 年でボロボロになるけど、自分の財布はやたらとチャックが動かしやすくて、3 年使ってやっとボロボロになることに。
どうやら幼い頃から着実に「いいものイズム」は祖母から受け継いでいて、歳を重ねると開花していくシステムのようだ。今は 30 歳だから、まだ五分咲きくらいかな。この先このイズムをどう感じていくんだろう。幼い頃みたいに、またいいものより今欲しいもの!と思うときもあるのだろうか。だけど、おばあちゃんから譲り受けたものはずっと手放さないだろう。良い年の重ね方をして、いいものの似合う人になっていきたいと思う。
最近、祖母から受け継いだのは FENDI のバッグ。流行りすたりのないスタイルのものを集めた祖母に感謝だ。古く見えずにいつでも使える。靴もいいものが揃っているらしいが、あいにくサイズが合わない。
ちなみにこのバッグを持って出かけると、敷居の高いブランドショップにもずんずん入っていき、さらにきちんと接客をしてもらえる気がする。私の魔法の入場パス。