C22数千本のリンゴの木と付き合う
今日も快晴です。見渡すと、3日間の作業でずいぶんとリンゴの子供たちは枝を広げるようにS字フックがセットできています。みんな手を広げて、私に手を振っているようにも見えます。いつかまた大きくなったこのリンゴの木たちと会ってみたいとも思います。まだ10時までには時間があるので、できるだけ今日中に作業を進めようと決意しました。
ふと気が付くと明日は金曜日です。初の給料日であることに気づきました。はたしてどのくらいの給料になるのでしょうか。少なくとも一週間の食費が稼げれば良いのですが、急に現実味を帯びて少し心配になってきました。今の時点で考えてもしょうがないと自分に言い聞かせ、こつこつためればきっと日本に帰れるくらいのお金になるだろうと思いました。でも、高福祉国家のイギリスだからガッポリ税金とられたらどうしようなんて、えらく世知辛いことを今日は考えるなぁ~と思いました。
とにかく日が傾くまでリンゴの木と向き合いました。最後に遥かに丘の向こうまで続くリンゴの若木たち見渡した後、広い広い農園の真ん中で手を振りました。「みんな元気に大きく育つんだよ!」と少し寂しい気もしましたが、次の日には新しい同居人も来ます。給料日でもあり、初めてのこの地でのウェークエンドです。やっぱり、みんなでパブに行くのかなーと考え、生ぬるいということで有名なラガービールでも飲んでみるかなと思いました。
帰りがけに職員特典のリンゴ、マッシュルーム、西洋梨、プラム、ブラックベリーをしこたまバッグに詰め込んでドラッグストアに寄ってみました。おばちゃんは外出中ということで、高校生くらいの女の子がカウンターにいました。名前を聞くとシャーロンという名前でした。久しぶりに若い女性と会話をして、ガラになく恥ずかしかったです。私宛に郵便が来ていないかととりあえず聞いてみました。まだ、こちらから出した手紙を出した日から数日しか経っていないので、日本に着いてもいないだろうと思いつつ、会話する事が見つからなくて、とりあえず聞いてみたのです。シャーロンはアングロサクソン系のきれいな目をしていて、いわゆるイギリス美人の典型でした。私が聞きやすいように、ゆっくり話してくれる優しさも持っています。しばらく会話を楽しみ、週末用の牛乳と食パンを買って帰りました。
充実した一日でした。ボスに信頼されて社用車のミニクーパーを運転し、イギリス美人と知り合い、かつてないいい日でした。ただし明日から始まる大変な共同生活などまったく知らずに安らかに寝りにつきました。
今日は充実した一日でした。ボスに信頼されて社用車のミニクーパーを運転し、イギリス美人と知り合い、かつてないいい日でした。明日からの大変さなどまったく知らずに安らかに寝入りました。
【補足情報】イギリスの農場の囲い込み運動について
囲い込み運動(エンクロージャー)は、16世紀から19世紀にかけてイギリスで進行した農地の再編成運動です。これは農業生産性を向上させるために、小規模な農地を統合し、大規模な農場に変えることを目的として行われました。この運動により、農業の効率化が進みましたが、一方で多くの農民が土地を失い、都市への移住を余儀なくされました。
囲い込み運動は、初期には地主が自分の土地を囲い込む形で行われましたが、18世紀後半から19世紀初頭にかけて、法律による強制的な囲い込みが増えました。これにより、農地の集約が進み、農業の機械化や大規模化が可能となりました。結果として、イギリスの農業生産は飛躍的に向上し、農業革命が進展しました。
しかし、この過程で多くの小作農や農業労働者が土地を失い、失業や貧困に苦しむこととなりました。囲い込み運動は、イギリスの社会経済構造に大きな変革をもたらし、産業革命の基盤ともなりましたが、その一方で農民の生活に深刻な影響を与えました。この歴史的背景を理解することで、現在のイギリス農業の成り立ちや社会構造の変遷を知ることができます。
続く