人工衛星の高度を地表距離に置き換えて比較してみた
高度の異なるプラットフォーム
こんにちは
Google Mapのサービス開始以降、上空から地上を捉えた画像を見る機会が至極普通になっています。古くは飛行機やヘリコプターによる撮影でしたが、その後、衛星による観測が加わり、最近ではDroneによるものが増えてきましたね。
これらの比較をする資料として、撮影高度をplatform別に比較したものがしばしば使われています。
他の図も数値自体は違えど、高さ方向の対数表記をしている形で示しています。距離が大きく違うものを1枚の絵にしないといけないですし、多少誇張していたとしても、そんなものかなということで、理解には特に問題はないのかと思います。
そもそも高さは、なかなかイメージしにくいですよね。
ただ今回はこれを改めて地上距離に置き換えて比較して見ようという試みです。もちろん地上距離と言っても、ビルや山などの障害があれば近くても見通せないですし、そもそも地球は丸いので遠くは見ようがありません。
170cmくらいの位置からだと、まっ平らな場所でも5km先まですら見えません。
実際はそうなのですが、我々が距離考えるときに地球の曲率を考えることはほぼありませんし、この事実はとりあえず脇に置いて、地表に沿った距離で比較してみたいと思います。
また、GIS的厳密性で言えば、遠い距離の計測や図解は、地図投影法なども含め注意が必要なのですが、そこの厳密性もある程度許容して表現しています。測地線の距離では示しています。
中心をどこにする?東京駅の0キロポストにする。
距離を測るには基準点が必要になりますがどこがいいでしょうか?
どこでも良いのですが、基準として馴染みのある場所にしてみようと。
そこは東京都庁や東京ドーム、日本橋などではなく東京駅かなということで、しかも西にも北にも伸びる東海道線(上野東京ライン)の0キロポストを基準にしてみます。
ではどこなのかということですが、それを緯度経度で測ったものはありません。インターネットで検索した所、東京駅0キロポスト(上野東京ライン0キロポスト) | 東京とりっぷ (tokyo-trip.org)や東京駅のゼロキロポストを探して : kenのデジカメライフ (exblog.jp)にその写真がありました。
その東京駅6番線と7番線の線路の間にあるという情報をもとに、Google Street Viewからその場所の緯度経度を調べてみました。
東京駅 - Google マップ
対向ホームの方を見て下さい。ちゃんと見えますね。
インターネット情報及びGoogle Street View恐るべしです。
ただ、ここで示されている位置は写真を撮った位置で、正確にはホームの間ではありません。そこで、6番線、7番線の中間になるよう点を地図上でずらし、そこを基準点としました。最終的なその場所の緯度を35.68109894、経度を139.76699829となりました。(この位置は実際に現地で測量したものではなく、あくまで想定値ですのでご注意下さい。)
比較対象として使用する軌道高度
次の高さを地表面上の距離で置き換えて比較してみました。
表の中には建物や山、地球の半径などが入っていますが、それこそ認識しづらい高さ、距離の例示としてあげたものです。
衛星の選び方に恣意的なものはありますが、それほど意味はありません。
またDRONEや航空機については、実際にはいろんな高度で撮れるわけですが、高度規制の上限だったり、よく使われる高度を使ってみました。
軌道高度を地表距離で比較
軌道高度、撮影高度を同じ距離を水平距離に展開し、東京駅0キロポストを中心にした同心円で地図に表示する形で示しました。
勿論、この同心円の面積、大きさには意味がありません。
境界の位置、距離だけに着目して下さい。
なお、背景地図には国土地理院の地理院地図(淡色地図)を使っています。
まずはDRONEスケールから。東京タワーは建物ですが、例示として。
150m(0.15km)までは、南北では東京駅をまだ出てもいませんね。
ついで航空機撮影スケール。ここでは3kmとしています。
東京スカイツリーも建物ですが、例示として。
東京スカイツリーですと皇居の敷地まで届きます。
航空機 高度1,500mですと、地上距離で神田や築地まで到達します。
航空機 高度3,000mですと、地上距離で東京ドームや増上寺、晴海まで到達します。
3kmだと、結構離れたなと思うのではないでしょうか?
続いて8,849mで離れます。はい、エベレストの高さです。
富士山の高さ(3,776m)も図示してみました。
高度3,776mですと、地上距離で上野や豊洲、六本木まで到達します。東京スカイツリーまでは達しません。
高度8,849mですと、地上距離で北千住や葛西臨海公園、大井町、中野、王子まで到達します。
正直全くピンとこないのですが、円の半径で表示しているので2倍大きく見えてしまうことを考慮しても、山の壮麗さと比べると、そんなに遠くないのだと私は思いました。
ここからが本題です。
衛星の軌道距離まで離れてみる
今度はSentinel-2の軌道高度786kmまで離れてみます。
8,849mの距離はもう小さくて見えません。
衛星といいつつ、国際宇宙ステーションISSも図示してみました。
ISS 軌道高度400km 地上距離で、北は「あの」大谷選手を生んだ岩手県奥州市や山形県にかほ市、西は大阪府吹田市や羽曳野市辺りまで到達します。
WORLD LEGION 軌道高度450km この衛星はWORLDVIEW-3,4の後継として期待される衛星です。将来目にすることが多くなると思うので入れてみました。これですと、地上距離で、北は秋田市、西は明石市、淡路島、南は紀伊半島の先まで到達します。
WORLD LEGIONの地上分解能は、白黒で29cmですので、そう考えると凄いなと思えてきます。
同じことの繰り返しになっているので、飽きてしまったかもしれません。
以下箇条書きで示します。
WORLDVIEW-3,4 軌道高度617km 地上分解能白黒31cm 北は津軽半島の先端、西は宍道湖、岡山県尾道市、高知県高知市など
LANDSAT-8,9 軌道高度705km 地上分解能30m 北は北海道駒ケ岳南部の大沼、西は島根県浜田市、足摺岬など
Sentinel-2 軌道高度786km 地上分解能10m 北は北海道苫小牧市、西は山口県山口市、大分県大分市、佐伯市など
小笠原諸島まではたどり着かないのですが、ここまで来ると遠いですね。
LANDSAT-8,9とSentinel-2の北と西の端の位置を示してみます。
Google Earthの定規、円ツールで計測してみることもできます。
最後にひまわり-8,9号の軌道を、と言いたいところですが、ひまわりの軌道高度は35,800kmもあり、地球を3/4周以上して、地球の裏側に回ってしまうので、うまく地図で表現できません(正距方位図法などはありますが)。
そこで、地球の半径(6378.137km)を比較として図示してみました。
なお、Google Earthの定規、円ツールでは20,000kmまでしか定規で計測できないようです。知りませんでした。
オーストラリアの北部まで到達しますね。これを逆に見れば地球の上を衛星が回る軌道をイメージできると思います。
つまり黄色の線を基準に赤の点を地表としてその上の半円を見るイメージです。
まとめ
今回は、人工衛星の軌道高度を地表の距離に置き直して比較してみる、という、やや強引なことを行ってみましたがいかがでしょうか?
人工衛星は結構遠いところを飛んでいるわりには、分解能が結構高いんだな、LANDSATの軌道高度は東京駅から北海道大沼くらいまでの距離なんだな、と小ネタ程度に読んでいただければ幸いです。
人工衛星の高度(ひまわり除く)は地球規模で見れば近いけれど、人間規模で見れば結構遠い。しかも、分解能は高い。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
いつもは北海道に本拠地を置くNPOに所属し、環境保全を主な題材としてGISやリモセンに関する仕事をしています。
コンサベーションGISコンソーシアムジャパン の活動もその1つです。
この分野の仕事や活動でなにかお困りのある方、ご相談ごとのある方など、是非コメントをお寄せいいただくか、上記WEBサイト掲載のメールアドレスまでメールをお寄せください。
おまけ
Google Earth Proで東京駅0キロポストから705km(LANDSAT-8,9の軌道高度)の距離を、定規の円ツールで計測してみました。同じく、北海道大沼付近になっています。
こちらは手動計測ですが、大体同じところになっています。