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「桜、咲いてますよ」〜看取り〜

今日は、珍しく平日のお休み。
雨が続いていたので今年はあまりゆっくり桜が見れないかなと思っていたけど。
井の頭公園は、平日なのに沢山の人が
待ってましたーとばかりに桜を見にきていた。





 
白鳥もぎゅ〜ぎゅ〜やん



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桜の季節になるといつも思い出す。
緩和ケア病棟に勤務していた時のこと。
奥様の希望もあり、末期がんの60歳代の男性と奥様と一緒にちょっと離れたところにある公園に桜を見に行く計画を立てた。

ご本人は、医療用麻薬の持続皮下注射をしながら声を掛ければ目は開けられるくらいだった。

もう1人の看護師と休みの日に行く予定にしていた。そしたら緩和ケア病棟の先生も「僕も休みやから行こかぁ?」と申し出てくれた。

桜日和で穏やかな春の空気を今でも思い出す。
みんなで介護用タクシーのストレッチャーを押しながら桜の木の下を歩いた。
ジャリジャリとところどころ砂利の音。
彼にとって外の音は久しぶりだった。

奥様も連れて行けてよかったと言ってくださった。

それから数日後、彼は静かに息を引き取った。
あのタイミングであのメンバーでいけてよかったなぁと今でも懐かしく思い出す。
素敵なみんなと働けたことも桜が思い出させてくれる。

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そして、今年の春の桜。
桜というだけで景色全体が明るくなる。
菜の花やモンシロチョウやら…

以前の記事にも書いた
(あちらに逝くのは)暖かくなってからがいいと言っていた一人暮らしのおじぃちゃん。

ある暖かくなってきた日に桜の写真を何枚か撮り
桜を見せてあげようと思って部屋に入った。

部屋に入ったら
たった1人で逝ってしまった。
桜の写真も見ずにたった1人で。

身体は、硬くなっていたけれど
お腹はまだほんのり温かかった。

本当に暖かい日を
選ばれた。

1人で逝かせてしまって
ごめんね。

ごめんね。

お酒ばかり呑んで
親戚からもちょっと疎まれていたけど

私は、憎めなくてとっても好きだった。
彼が間もなく居なくなることは
わかっていたから
毎日の訪問、今日が最期かもと
思いながら前日も訪問した。

親戚の方が難聴の彼に大きな声で
「看護師さん達は、○○さんのことが好きだって言ってくれてるよー、ありがたいね」というと
痩せ細った顔がクシャっとなり乾いた頬の皮膚がゆっくり動いた。
そして、やけに目立つ入れ歯もニヒっと笑った。

あれだけ水みたいに呑んでいたお酒も
最期の数日は、要らないと言われた。

なんで要らないの、呑んだらいいのに…
ともっとお酒をすすめたくなった。

元気な頃の彼をあまり知らない。
だから普段どんな格好をしていたのかも
あまりわからない。

あちらに逝くときの服を探していた。
とても几帳面にハンガーに服がかけられていた。
沢山のベストが吊るされていた。
きっとベストが好きなかただったのね。

春っぽいベストを着よう。

そして

桜を見ながら大好きなお酒を呑んでね。

今日は、私も久々にワインを頂こう。
一緒に呑もうね。

また一つ、桜の思い出が増えた。
寂しいけど、順番にね。


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にゃむ
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