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366日のあなた / ツイトウ

お客さまがまた一人、また一人と旅立って行かれている。

以前はよく訪問していたけどここのところ1年くらい訪問していない女性の80歳代のサキさんというお客様のこと。

サキさんは、華奢な体からバリバリの関西弁を発し、個性全開の女性だった。

社会的にも成功されているかただった。

性格は、良い言い方をすると我が道をゆくタイプ。言い方を変えたら我儘。

イヤミを言うのも絶妙にうまい!とにかく物事をハッキリ言う人。
でも、お節介で人情はある人。
私は、訪問する時に緊張感はあるものの嫌いじゃない。

こんな風に言えるようになったのも…。

最初の数ヶ月の訪問の時には緊張感が強いあまりサキさん宅に着くまでに魔法の言葉を唱えながら訪問していた。

このnoteを読んで頂いた皆様にも魔法の言葉をこっそりお伝えしよう。


「大好き、大好き、大好き、愛してる、愛してる、愛してる」

たったこれだけ。
この魔法の言葉を言いながらサキさんの家まで行き、深呼吸して玄関のピンポンを押す。
これをひたすら繰り返した。

これを重ねていると不思議とサキさん宅に行くことが苦手ではなくなってきた。
同僚も皆、緊張していたので、この方法を伝授した人も何人かいる(笑)
他のお客さまにもこれを使ってみたところすごくよかったと感想をもらった。

あれ?すごく好きかも!と思えてくるから不思議。
ハワイの問題解決法でもあるホ・オポノポノを勝手に変形させてみたものだ。
侮れないので実験をお勧めします。

*      *

サキさんとの色んなシーンを思い出す。

まずお宅に伺って「今日はご体調はいかがですか?」と聞いて「ずっとしんどい。もうあかんわ」しか聞いたことがない。本当にしんどいのだろうとは思う。

ただ、あらゆる事柄に対してよくこれだけネガティブな物の捉え方ができるものだと感心しきり。それだけ寂しい人だったのだろうなぁと今になって思う。

サキさんはここ何年も家から出ることが殆どなかった。

一日中、家にいてテレビを見ているので芸能情報はすごかった。
若いアイドルの子達の情報を知らずに「え?知らんの?」と言われたり(笑)


入浴介助の時にも久しぶりに行くと小さな手順を忘れてしまったりすることがある。そんな時に「あんた、忘れたんか?ふっ、忘れてしまったんか」と言われたり。サキさんからはとても細かい指示が飛び、入浴一つをとっても100項目くらいの注意事項があるかもしれない。

サキさんの中では、私は“料理も作れない可哀想な人”という位置付けなので、いつも帰りに「あんたこれ持って帰り」と食糧を渡そうとしてくれる。そして「ありがとうな、またきてな」と言ってくれる。

この“ありがとうな“でそれまでのことは全て帳消しになるくらいの威力がある。

*     *

そんなサキさんが実にあっけなく逝ってしまった。



え?あのサキさんが?という感じで、今もキツネにつままれたままの状態になっている。
みんなにあれだけからんできたサキさんが、誰にも絡まずに逝ってしまった。

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もう1回会いたかったなぁ。サキさんのネガティブ発言も今となっては懐かしい。

サキさんが「この歌、知ってるか?めっちゃいい歌やねん」と言われた曲があり。サキさんがその音楽を聴かせてくれた。

その歌は、美空ひばりとか五木ひろしとかではなかった。

HYの『366日』だった。

366日
HY

それでもいい それでもいいと思える恋だった
戻れないと知ってても 繋がっていたくて
初めてこんな気持ちになった
たまにしか会うことできなくなって
口約束は当たり前
それでもいいから・・・

叶いもしない この願い
あなたがまた 私を好きになる
そんな儚い 私の願い
今日も あなたに 会いたい

それでもいい それでもいいと思えた恋だった
いつしかあなたは会う事さえ拒んできて

一人になると 考えてしまう
あの時 私 忘れたらよかったの?
でもこの涙が 答えでしょう?
心に嘘はつけない

恐いくらい覚えているのあなたの匂いや しぐさや 全てを
おかしいでしょう? そう言って笑ってよ 別れているのにあなたの事ばかり

恋がこんなに苦しいなんて 恋がこんなに悲しいなんて
思わなかったの 本気であなたを想って知った

恐いくらい覚えているの あなたの匂いや しぐさや 全てを
おかしいでしょう? そう言って笑ってよ 別れているのにあなたの事ばかり

あなたは私の中の忘れられぬ人 全て捧げた人
もう二度と 戻れなくても
今はただあなた・・・ あなたの事だけで
あなたの事ばかり


最初は、サキさんと366日が全く結びつかなかった。
でもこの曲を一緒に聴きながらサキさんが話してくれたエピソードを思い出した。

ご主人と結婚する前に好きな人がいたと教えてくれた。

サキさんは、「あの人と一緒になったらよかった」とご主人のいる前で言った。

ご主人は無反応だったので「なぁ、お父さん、そうやんな?聴いてへんかったん?」と言った。

ご主人は笑った。ご主人と友達だったようでいろいろドラマもあったようだ。
ご主人は、いつものことだという感じで「はいはい、そうだね」と笑った。

ご主人の前の好きな人も確かに好きだったのかもしれない。
この366日を聴いてるとその人を思い出して聴いていたようにも思えるけど、実は、ご主人と心をちゃんと通わせたかったのではないかなぁと感じた。

これを聴いてやきもちを妬かせたかったりしたのかなぁとか。この曲を聴いている自分をご主人がどんな風な反応を示すのか試しているようにも感じられた。

日常的には、ご主人には言いたい放題でご主人もストレスだったと思う。
あのご主人だったからなんとか一緒に居れたのだと思う。また、サキさんがあれこれと悪態をつきながらもそれ以上に可愛らしい部分も沢山ご存知だったからこそ一緒に居ることができたのかもしれない。

結局は、ご主人は病気になり、家を離れて暮らすことになった。
その後は、サキさんは一人暮らしになり寂しい毎日を過ごしていたと思う。

真相は今では知る術もないけど、この曲を選んだサキさんを好きになった。
いつもの知っているサキさんじゃない一面が見れたような気がした。

サキさんを思い出して今朝はこの曲を聴いて朝が始まった。

こうして、いろんな方の人生の一部をご一緒させて頂いていることに感謝。

(サキさん、安らかに・・・そして、癒えたら思い切り元気いっぱい動き回ってくださいね。)




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にゃむ
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