旅人が林業と農業の違いを考える。
今回はおなじ植物を育てる産業である林業と農業のちがいを考えようと思う。それは自然的にみた場合と社会的にみた場合でそれぞれ違う。それを踏まえて林業が他産業とは全く異なるな点をあげる。
今回のそれぞれの定義は、農業はお米や野菜をつくる営みを指し、林業は木材生産を行う営みを指す。それぞれの定義がざっくりしているかもしれないが許してほしい。
私が考える林業像はつぎの記事で一部紹介しているので、もし興味があればそちらも読んでいただきたい。
林業と農業の視方のちがい
林業と農業どちらも植物を相手にする第一次産業であり、社会的にみれば補助金産業である点が同じ点になるだろう。他にいったら専業が少なく、兼業が多いという職種でもあるだろう。また小規模事業者が多い。
つぎに自然的、社会的視点の違いとなる。
自然的条件の違いとは?
それは、植生遷移に対する考え方だと思う。
そもそも植生遷移とは、
「火山活動や洪水などで出現した裸地も、時間が経つにつれて草原や低木林となり、やがて森林になっていきます。このように、時間の経過とともに環境などが変化することによって、植物の集団が変化する現象。」
林業と農業の違いは、この植生遷移をスピードアップさせるか、ストップさせるかの違いになる。
農業は、植生の初期段階にあたる草原を仕立て、長期的に維持すること。例えば、ムギ畑はずっとムギ畑であってほしいし、水田はずっと水田であってほしいのだ。
一方で林業は、通常人の手が入らなければ、何百年とかかる高木林の状態に、人の手をいれて何十年に仕立てることを目指す。つまり植生遷移を早めることになる。
この違いが自然的にみた林業と農業の違いなる。
社会的条件の違いとは?
つぎに社会的にみた場合だが、これは多くの違いがあるが、今回は生産者と販売者の違いの一点に絞り書く。
まず、生産者とは立木、農作物を生産する人のことを指し、販売者とは消費者に届けるものを指す。
以前、農業は農協を通さなければ、販売できなかった。しかし現在はIT技術の発展によって、生産者から消費者への販売が可能となり、生産者=販売者の図式が成り立つようになった。
一方で、林業は生産者=販売者の図式が成り立つことは、一部の場合を除き決してない。それは二つの理由がある。
まず林業の生産物、丸太をそのまま消費者にとどけることは決してできない。丸太を消費者のもとに届けるためには、製材所で木材に加工して、その後、工務店が木材を使い”建物”という形で届ける。また家具工房に届き、家具という形で届く。このため生産者=販売者の図式が成り立つ場合は、家具工房など、販売商品があり、所有林がある場合になる。この場合一定の事業規模があることになる。
このあたりの流通経路の話は、若干この記事で触れている。
林業は長期産業だ
もうひとつの理由が、林業の特徴として生産の長期性というものがある。いくら植生遷移の速度を速めたからといって、丸太一本育てるのに、最低35年はかかり、いま目の前に植わっている木は、50年以上前に植えられたものになる。だから植えたのはおじいちゃん、売るのはお孫さんみたいなことが起こる。
この特徴は、主に二つのリスクをもたらす。
ひとつはマーケットの不明確性。まさか50年前に針葉樹を植えたときは、こんなにも代替材が出現して、木材価格が低下すると思われていなかった。
もうひとつは、自然災害のリスク。長期にわたる生産活動は、台風や地震などの自然災害の影響をより受ける確率が高くなる。
だから私は、この先が見えない時代で、先を見据えて行動しなければならない林業という産業に挑戦し続ける方々を尊敬している。
自分で山を持ってみたら、また視点が変わるのだろうか。
コロナ禍が終息したら、また旅にでたいと思う。
本日も読んでくださりありがとうございました。