スタートアップ経営者が知っておくべき人員調整と合理化の手法

前回となる第3回では採用や人事評価制度について触れさせていただきました。

人事領域である採用や評価制度は『組織の成長を支える光の部分』です。
一方で、時には経営の合理化を目的とした人員調整、すなわち『影の部分』に向き合う必要がある局面も訪れます。

特にスタートアップ経営者にとっては事業がジェットコースターのように急に拡大するシーンもあれば、失速するシーンもあります。
事業が失速しない事を期待しつつも、いつ何時どうなるかわかりませんので、今回はスタートアップ経営者として知るべき内容になると思います。

私自身、複数の企業での経験を通じて、やむを得ず人員整理プロジェクトに関わってきたことが幾度もあります。
決して望んで行うプロジェクトではありませんが、会社の存続や事業の縮小など避けられない状況で対応を余儀なくされました。
その結果、今では他社への多面的なアドバイスも可能となっています。

なお、誤解のないように冒頭として記載いたしますが、本noteは安易に人員整理等を促しているわけではありません
ただし、これらの選択肢を知ることで、従業員や顧客への影響を最小限に抑え、会社が再起のチャンスを得る一助になるようお伝えしています。



はじめに

経営が成長する中で、従業員数を増やし活発な組織を築くことは大切ですが、事業環境の変化や経営の合理化を求められる局面では、逆に人員を整理する決断も必要になることがあります。

事業状況による要因とはいえど苦楽を共にした仲間に対して、離脱を促したり、解雇を伝えるのは想像以上に気を遣いますし、精神的な負荷が大きくなります。
また、会社自体が社会の公器であると考えた場合にも、人員整理を行う事は概念的に反する部分も含めて、選択肢として持たない経営者の方々もいらっしゃいます。

しかし、会社や事業という船自体が沈んでしまえば、乗組員である従業員全員や顧客を救うチャンスすら絶たれてしまいかねません。
そのような場合には、人員整理も視野に入れて会社として再起を図るための決断を下すのも経営者としての責任ではないでしょうか?

本記事では、人員整理がもたらす経営的な意義や留意すべきポイントについて解説します。
合理的で健全な経営を維持するための人材調整の手法と、組織に対する影響を最小限に抑えるための考え方をお伝えします。

1. 人材調整が必要になる理由

事業の変動や収益改善の必要性に応じ、組織体制の見直しを図ることが求められる場合があります。
経営の持続可能性を保つためには、組織を適切な規模に調整することも重要です。
成長段階では組織拡大が望まれますが、次のような状況では人員調整も選択肢となり得ます。

  • 事業の方向転換や縮小
    戦略変更や採算性の低い事業の整理に伴い、人材リソースの適正化が求められる場合。

  • 効率化と生産性向上
    技術やプロセスの改善により、少人数で運営可能となり人員リソースが余剰してしまう場合。

  • コスト削減
    資金繰りや経営資源の最適化のため、急務での固定費の削減が必要になる場合。

2. 人員整理の具体的手法とそのプロセス

人員整理の方法にはいくつかの手法がありますが、いずれも透明性を持って公正に進めることが重要となります。

  • 希望退職の実施
    従業員が自らの意思で退職を選択できるため、柔軟な調整が可能になります。
    この方法では特別な退職金や再就職支援施策等を設けることが多く、双方の合意に基づいたスムーズな調整が可能です。

  • 早期退職優遇制度
    一定年齢以上の従業員に対し、早期退職による特典を提供する方法で、ライフプランの見直しと合わせて利用されるケースが多い。

  • 配置転換や他部署への異動
    退職には至らず、適性に応じた配置転換や異動による再配置を行うことで、戦略的な人材配置を実現します。

注意:解雇には「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3種類があり、いずれも労働契約法や関連判例により厳格な要件が定められています。正当な理由がない場合には法的に無効とされるリスクがあるため、解雇に関する判断は慎重に行う必要があります。解雇や人員整理を検討される際には、必ず法務の専門家に相談してください。
なお、当noteの記載内容に基づいて行動された結果生じた損害や法的トラブルについて、著者は一切の責任を負いませんので、あらかじめご了承ください。

3. 人員整理を進める上での留意点

人員整理は経営判断において難しいテーマです。整理の実施にあたっては、次の点に留意することが重要です。

  • 法的リスクの確認
    特に解雇や希望退職に関しては、法的な制約や労使関係の影響があるため、専門家と相談しながら進めなければなりません。
    労働契約の内容や解雇理由を法的に確認することが大切です。

  • 従業員との信頼維持のための説明
    人員整理の意義や背景を正確かつ真摯に説明することは、従業員との信頼関係を維持するために欠かせません。
    経営側の決定に対する理解を得ることで、心理的な抵抗感も軽減されるでしょう。

  • 経営者の心理的負担の軽減
    人員調整において、経営者自身の精神的負担は大きくなりがちです。
    心理的負担を軽減するために、第三者の助言を得ることが有益です。

4. 人員調整のプロセスにおけるサポート

人員調整の過程では、法的リスクや心理的な負担を軽減するために、外部専門家のサポートが非常に有効です。
希望退職や人員整理をスムーズかつ適法に進めるためには、以下のような支援が必要となります。

  • 法的リスクの管理
    労務や法務の専門知識を持つ外部パートナーとの連携や、法的リスクを最小限に抑えるためのアドバイス

  • 経営者への心理的サポート
    経営者にとって人員整理の決断は大きな心理的負担を伴います。
    専門家の対話やアドバイスにより、経営者自身が心の負担を軽減できるようサポートします。

  • 各種要件設計支援
    目的や状況に応じた退職者向けパッケージ内容の提案・調整や、プロジェクト全体の座組及びプロセス整理

  • 社員への説明支援
    透明性を確保し、従業員との信頼関係を保つための説明方法や、離脱・残留社員及び組織のためのコミュニケーションのアドバイス

5. まとめ

企業が成長を続けるためには、時に経営の合理化として人員調整を選択する局面が訪れます。これは企業の継続的な発展を目指し、経営基盤を守るための重要な経営判断のひとつです。
最後の手段として可能な限り避けたいと考える内容かもしれませんが、会社自体がしっかりと前を向いて進んでいくためにも、必要に応じて検討できるように本日のnoteの内容について、頭の片隅に入れていただければ幸いです。

おわりに

組織の健全な成長と、事業の合理的な運営を両立させるために、状況に応じた柔軟な支援を行っています。
私自身、多くの組織調整プロジェクトを手がけ、経営者の方が抱える様々な課題解決に尽力してきました。
もし、人員調整の必要性に駆られたり、組織運営で課題を感じることがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
ご連絡はこちらまで

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