キャリア未来地図インタビュー Vol.1 土田大二郎さん(木彫家) 〜 【木彫り起業】で創った自分だけのキャリア 〜
キャリア未来地図研究所 研究員の田部井です。
「人生100年時代」になり一つの会社で一生を終えることなく、誰もが第2、第3の柱を必要とする時代になりました。しかしながら、「会社の看板なしにどのようにキャリアを創ればいいんだろう?」「将来は不安だけど具体的に何をしたら良いかわからない・・・」「今の会社の仕事に対しモチベーションが上がらない」など、仕事への不安や悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
今回から始まるこのインタビュー記事では、会社の力に頼らずに自分で稼ぐ力を身につけた人達がどのようにして今のキャリアを創り上げていったのか、【ロールモデル】となる人達のキャリアの道のりをご紹介致します。
今後自分だけのキャリアを創るために、今悩んでいる方の「まだ見ぬ自分の姿」をイメージするヒントになれば幸いです。
目次
・土田さんの経歴
・病弱で長く続かなかった社会人生活
・人生を変えた木彫りとの出会い
・木彫りが本業になるまで
・いよいよ木彫起業をスタート!ー最悪の立ち上がりー
・最後に
・編集後記
土田さんの経歴
土田さんは山口県宇部市出身、現在は同県防府市に住む39歳です。病弱だったこともあり苦労の多い学生・社会人生活を送られましたが、現在は木彫で生計を立てて10年目。木彫り教室運営や講座の開催等をされています。現在の木彫家としての仕事にやりがいを感じているという土田さんは、どのようにして今のキャリアを築いていったのでしょうか。インタビューを通して土田さんの道のりを辿っていきましょう。
病弱で長く続かなかった社会人生活
―これまでの経歴を教えてください。
小学生の頃に病気になり、中学校では不登校になりました。高校はなんとか卒業したものの、卒業後はバイトをいくつか変わりながら、2年くらい働いていました。今思うと就職活動がうまくいかず、意欲が無くなっていたんです。その後も体調を崩して休むことを繰り返していました。体調が戻ってきた25歳で、個人的に興味のあった農業の会社に就職し、2年程働きました。その後は太陽光発電の会社へ転職して3年程勤務しましたが、このまま会社員生活を送りたくないなという漠然とした想いはありました。
人生を変えた木彫りとの出会い
―木彫りを始めたのはいつからですか?
木彫りとの出会いは小学校の図工の授業です。初めて彫刻刀を触って、それがすごく好きで楽しかったーその感覚がとても記憶に残ったんです。
趣味として木彫りを始めたのは高校卒業後、19歳の時です。小学校の頃の感覚をふと思い出し、今ならまたできるかなと思い立ちました。木を買いに行って、小学校の時の彫刻刀を引っ張り出してきて。初めて彫刻刀を触ったときの楽しかった想いが蘇りましたね。本も読まず思いつくまま、完全に自己流でやっていました。没頭すると、平気で3・4時間彫り続けていました。一時的に辞めても、時間が経つとまた彫りたくなるんですよね。木を彫っている時間は精神的なしんどさも忘れられる、体調が悪かった自分にとっては救いでした。
木彫りが本業になるまで
―木彫りを仕事として始めようと思ったきっかけは何でしたか?
高校の時からパソコンを触ることが好きで、独学で学んでいました。20代前半でブログやホームページに木彫りの作品掲載を始めました。そこからブログでコメントをもらったり反応がで始めて、ある時「作品が欲しい!」と連絡があったんです。作ってるものに対して反応があったことがとても嬉しくて、初めて作品をお売りしました。こんな感じで何人かの方とブログ上でのやり取りが増えていったんです。ブログ発信はとても楽しかった。ずっと家にいたので、どこかで人と繋がっていたい気持ちがあったのかもしれません。
―ブログに関して想い入れのあるエピソード等はありますか?
ブログを見てくれた県内の大工さんから「もっといい木をやるぞ」と声をかけていただいたことがありました。自分が知識がなさすぎてあまりにも木彫りに適さない変な木を使っていたので(笑)。直接会おうよということになって、車で1時間くらいかけて、待ち合わせして木をいただきました。
こんなに彫りやすい木があるんだ!とびっくりしましたね。これならもっとできるぞ、とますますのめり込んでいきました。家にいながらにして人と繋がれることを更に実感した出来事でした。
―木彫りを本気で仕事にしようと思われたきっかけはありますか。
Facebookを見てくれていた仏師(仏像を彫る職人)から、「展示会に作品を出しませんか?」とお誘いがあったんです。それまでは木彫りを仕事にして生活している人がいるなんて夢にも思っていませんでした。その道のプロに声をかけてもらって自信がつき、それが転機になりましたね。
展示会は干支展というもので、僕は巳の作品を出させてもらいました。そこで作品を買っていただいた時に、「あ!これは仕事になるんだ!」と意識を持ち始めました。そこから「自分は木彫りで何かできるんじゃないか」という感覚が少しずつ湧いてきて、情報を探し始めました。
―具体的にはどのようなことをされたのですか?
自分は特別な技術があるわけではなかったし、どんな作品を作りたいかもわからない、今から一から学び直すには遅いと思っていたんです。仕事にするにはビジネスの仕方を学ばないと、と思い、ビジネス系のメルマガなどを読むようになりました。そこで【趣味起業養成講座】というのを見つけ、講師の方に思い切って連絡してみたんです。やりたいことを伸ばすという考え方に共感して、「よし!やってみよう」と受講に踏み切りました。そこで教えていただいた、すごく上手くなくても自分よりもできない人に教えていくことで仕事になる という考えにすごく背中を押されました。「もっとうまい人がいるのに自分でいいのかな」と思っていましたが、「今の自分でも十分教えられる人はいる」と気付いたんです。それなら自分にもできそうだ、と可能性を感じました。
また、結婚して子供ができたことも大きかったですね。「この子に父親が楽しくない仕事をしている姿を見せたくないな」と思い、挑戦するなら今しかないという想いがより強くなりました。このタイミングで仕事を辞め、起業を決めました。
いよいよ木彫り起業をスタート! 〜 最悪の立ち上がり 〜
―起業後の立ち上がりは?
起業の立ち上がりは最悪でしたね(笑)。自分の予定では、講座終了後に月10万円くらいは稼げている予定でしたが、全然収入がないじゃん!と気づいて。やると決めていた木彫りの通信講座もスタートできておらず、この先も上手くいかないかも・・・と不安がよぎりましたね。
―起業が成功したターニングポイントはありますか?
ここまでお金が減ったら辞めるというような基準を持っていたので、とにかく色々と試してみました。最初の課題はメルマガの登録者数をどうやって増やすかということ。最初は登録人数が本当に少なかったんです。でも無料のステップメールを作ってから流れが変わりましたね。無料ならということで登録者数が増えていき、興味のある人と繋がることができたんです。まだ不安はありましたが、目に見えて登録者数が増えていったことで「これは今までと違うぞ!」と手応えを感じました。ステップメールでは14回に渡り木彫りのやり方等のお役立ち情報をお届けしました。そうすることで信頼関係ができて、その後の有料の通信講座のご案内にも興味を持って受講してくださる方が増えていったんです。無料講座を始めて半年くらいで軌道に乗って、現在メルマガは500人以上の方に登録いただいています。
今では、有料の通信講座と対面での木彫り教室も運営しています。
通信講座では、材料を送り、彫り方をマニュアル化して、専用サイトを使って添削をしています。マニュアルは彫るときに横に置いてもらえるように、印刷してお送りするなど工夫しました。現在受講者は35〜40名程、期間は2年程度です。先生という立場ではありますが、上下関係ではなくサポート役で、横にいてフォローするような感覚です。
地元での木彫り教室は、通信講座と同じタイミングで始めました。
通信・対面それぞれで「もっとこうした方がいいな」という気付きがあるので、それを双方の講座に活かしています。工場勤務の時に学んだマニュアル作りやその時のパソコン作業、業務改善の習慣がここで役立っています。
最後に
―これまでを振り返っていかがですか?
やっぱりやってよかったと思いますね。自分の形があって、他の誰かではなく僕だからこそ来てくれている人がいるのがすごくやりがいです。ここまで続けてこれたことで、やっている意味はあるんだなという実感があります。木彫りで生計を立てている人なんて周りにはいませんでしたし、始めはできるという確信はなかったんです。実は周りにも大反対されていました(笑)。ただ、自分なら何かできるかもという根拠のない自信みたいなものがあったし、会社員勤めの状況を変えたい気持ちもあった。やっぱりブログがあったことは大きいと思います。独立する前にブログでオーダーが入らなかったら辞めようと思っていたんです。でも、そこでオーダーが入って、売れたことが決め手になりました。今思うと、それが「よし、やってみるか!」と覚悟が決まったきっかけでしたね。
今後は自分の作品をもっと作りたいと思っています。
編集後記
病弱な学生・会社員生活を経て、今では木彫り家という自分だけのキャリアを築いている土田さん。本業で培った仕事やパソコンのスキルと、プライベートでの木彫りという特技を掛け合わせて、自分だけのスキルに磨きあげていきました。始めの一歩をどう踏み出したのか・今の自分でできることをどう見つけていったのか等、とても学びの多いインタビューでした。
是非、皆さんが新しいキャリアに踏み出すきっかけとなれば幸いです。
ー お知らせ ー
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ー 開催日程 一覧 ー
2022年12月度 12月10日(土) 9:30-12:30
2023年 1月度 1月14日(土) 9:30-12:30
2023年 2月度 2月11日(土) 9:30-12:30
2023年 3月度 3月11日(土) 9:30-12:30
※ 4回とも同一内容になります。
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