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思いがけず出会う「花姿」の嬉しさ
『「名前」を知ることの意味』で話題にした「ビロードモウズイカ」。
その後、様子を見ていたが、あまり変化はなかった。
ネットで見た花姿を夫に伝え、来年になるであろう「ビロードモウズイカ」の開花を心待ちにしてた。と同時に、不安でもあった。なぜなら、あの場所で背丈を伸ばすのは難しいだろうと薄々感じていたからだ。
「この先、160㎝くらの背丈になるらしいけど、あの場所で咲くことはできるかな?」
夫は無言だった。あの場所で花を咲かせることは難しいだろうと感じたのは私だけではなかったのだ。
◇
ある日、夫が少し興奮気味に帰宅した。
『路傍の草』で話題にしていた場所とは違うところで、似たような草が生えているのだという。
しかも、日に日に背丈を伸ばし、100㎝超えるほどの高さになっているのだとか。
仕事で、たびたびその場所を通り、その成長の様子に驚き、「もしや?」と思ったのだそう。
2人はそれぞれにカメラを抱え現場へと向かった。
ひと目見て私は確信した。夫が見つけてきた草は、「ビロードモウズイカ」が咲いている姿だと。
一見、目立たないようにも見えた。なぜなら、橋のたもとにシュッと背を伸ばして立っていたからだ。
既に、黄色くて可愛い花が咲き始めていた。
車をとめられる場所を探し、橋のたもとへと駆け寄っていく。小躍りしながら、カメラを向け、何枚も何枚も飽きるまで写真を撮った。
◇
それから数日後のことだ。
もともと見つけていた『路傍の草』は枯れ始めていた。生き延びることができれば、来年、花を咲かせたであろう「ビロードモウズイカ」。
これも雑草の宿命か。
胸が苦しくなった。覚悟はしていたが、やはりそれでも悲しい。
だが、咲ける場所では咲けるのだ。たとえ雑草という立場であっても、花を咲かせることはできる。
天高く咲きほこれ、「ビロードモウズイカ」!
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