【起業ノウハウ】一戸建て賃貸業⑵調査手法
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起業前にトライアル
起業する前に、勤務先にバレずに、こそっとやれることは、地味に幾つもあるとご存じでしょうか。
業種ごとにググってもたくさんヒットするし、こちらnoteにおいても読み物がいっぱいあります。私も脱サラしているので、いいことを書いているなぁとスキしました。
続編第2回は、一戸建て賃貸を起業するためのノウハウとして、相続物件の調査方法を取り上げます。読者には、起業前にやってみて損はしない、お手軽なトライアルになるとお伝えします。
最初は仲介業者の相続物件
本編である一戸建て賃貸のススメ(その3)で申し上げたことは、相続人に提案して相続物件を直接売買するというスタートです。
相続物件のうち、放置家屋と雨漏り系は大幅ディスカウント、シロアリ系は無理ゲーと、見送るポイントも添えて解説したところでした。
・・・読み返してみると、やはり起業した直後の直接売買は難しいと思ったので、最初は仲介業者が取扱う相続物件を購入するところからシナリオを始めることにいたしました。
本稿では、ネットで物件を選定して相場観を養っていただき、補完調査を行い、実際に物件を見るところまでを読み解きます。
現住に交渉の余地なし
本編で書ききれなかったことは「現住物件は交渉が成立しない」点です。
売主が住んでいる建物を売るとき、やたら高くふっかけてきます。それも自慢しつつ一方的に言い募って600万円なら売ってもいい、とか呟きます。
私は、600万円を収益還元率20%で暗算するので、こんな家が一切修理しないで年間120万円の収益が出せるものか、すなわち家賃10万円で借りる世帯がいるものかと腹を立ててしまうので、話が合いません。
現住物件の売主希望価額は、巣を失くすという動物本能なのかわかりませんが、一戸建て賃貸の仕入価格から掛け離れています。そういう売主に100万円なら買ってもいいよと、つまり指し値を示しても口論になるだけで、物別れとなります。
交渉の余地のない物件の接触は、まるで脈のないところを押すようなものなので、眼中なくて結構です。
それでは、あらためて仲介業者の相続物件の話に戻りましょう。
情報収集は2種類の方法を組み合わせる
さて、私は相続物件に限って情報収集しますので、2種類の方法を組み合わせて調べています。
ひとつは、インターネットでの検索であり、オープンソースインテリジェンス「オシント」と呼ばれるものです。
もうひとつは、「オシント」で特定した相続物件の所在地に行き、現地の住人や出入り業者に話を聞くことであり、ヒューマンインテリジェンス「ヒューミント」と呼ばれます。
構成割合は、オシント9対ヒューミント1と行きつくでしょう。
まず「オシント」から始めよう
オシントの基本は、インターネットで情報収集していきます。とっても、お手軽でしょう。
読者には、携帯でなく、PCを使用することを勧めるとともに、次の点に留意願います。
・毎日アクセスする必要はないこと。
・一度調べ始めたら、情報が相当量となること。
・マルチウィンドウでページを開いて見ること。
・ページ保存しても、すぐには使わないこと。
・印刷をしておく資料がたくさん発生すること。
地域の不動産情報を見る
不動産売買は地場産業なので、エリアごとに宅建協会が存在し、それぞれ不動産情報のホームページを持っています。読者の選んだ地域にも、不動産情報のホームページがあると思われます。
ローカルネタで恐縮ですが、旭川市では主として3サイトあり、そのうち最大手IRIでは全検索「下限なし~500万円」により価格の安い順に並べてます。
全検索なのは、土地カテゴリーに既存建物がある物件が稀にあるためです。また、上限500万円なのは指値の可能性があるためで、もとより表示価格は売主希望価格にすぎません。
仲介物件をどんどん見ていく
掲載物件については、パっと見ていいなと思ってクリックし、不可ポイントがあれば選定から外して次に行くというリズムで絞り込みます。
すでに価格検索でいいなと思っているので、掲載されているものはほとんどアクセスしています。この作業により、建物の様子、道路の広さ、その地区の便利さなども、徐々に掴めてきます。
宅建会社が取り扱っているとはいえ、建物が売りに出されている時点で、売主には何か事情があります。しかし、その「何か」はわからないまま、もし相続物件だったらラッキーぐらいの感覚でアクセスを続けます。
ネットの売買物件詳細は、仲介業者により記載の程度が異なるので、書き方がまちまちです。もしも売却理由が相続と表示されていれば、売主は手放す気まんまんです。
仲介業者が、売主と専属または専任契約を結んでいる場合、3か月に一度は物件情報を更新するのですが、その時に希望価格が下がっている物件がたまにあり、売主は売り急いでいることがわかります。
選定から外す基準
物件の備考欄に告知事項がありますと表記している仲介業者は好感が持てますが、よほど安くないと食指を伸ばしません。
よさそうなマンションが売れ残っていても浮気しません。マンションには必ず厄介な面倒事があり、しかも自分一人では解決できません。一戸建てからブレないようにしましょう。
どの仲介業者もコメントしにくいのが積雪落雪の問題です。隣や背後の家屋とトラブルにならないか、前面道路が雪で埋まらないか、駐車場は大丈夫か、私は写真だけで振り落とします。
所在地はあまり気にしませんが、「僻地」はパスします。
駅はいざ知らず、スーパーもないところに住みたくありません。生活に乗用車が必要な地区は、除雪も大変だからです。おそらく借主もそう思うでしょう。
安い一戸建ては、だいたい放置家屋なので痛んでおり、屋根・外壁・設備の修理が必要となります。少なめに修理費用を見積り、家賃n万円から逆算して、不採算と判断した物件は200万円台でもザラにあります。
例えば、207万円の仲介物件は(物件の取得価額207万円+仲介手数料33万円+修理費用120万円)×収益還元率20%=72万円となり一発アウトです。旭川市内で月額6万円もする賃貸物件は供給過剰なので、私なら手を出しません。
グーグルビュー&大島てる
さて、修理して賃貸できそうな物件は見つかりましたか。
サイトの情報は、量は多いが質は良くないと感じていただければ、なかなか目が肥えてきたといえるでしょう。辛口上等!
仲介業者によっては物件の所在地を表示しないところもありますが、それでも地図は載せていますので、グーグルマップの地図と航空写真で同じ所在地をあてて、「グーグルビュー」と掲載写真とを見比べて建物を特定します。
グーグルビューは必ず過去を見ていただき、違和感がなければ問題なしです。私の見た経験では、警察の立入禁止テープがあった物件や、玄関にコンパネが貼られていたヤバい物件がありました。
さらに「大島てる」というサイトでは、事故の有無がチェックができます。デタラメな投稿もあるようですが、だいたい合っているのではないでしょうか。事故が多い地区もわかるようになるでしょう。
ここまでの選定作業で残った仲介物件は、印刷するかPDF保存しておきます。仲介物件は3月以内に更新されますので、次回更新後のデータと比べるためです。
土地の登記簿を申請する
選定した仲介物件について、所有履歴や権利関係を確認するため、登記簿の写しを申請します。
土地建物は、権利関係の登記がされているものであり、登記簿は所有者や抵当権等が記載されている開示情報です。ただし、行政の開示情報であることから、有料で、申請者が地番を特定し、正規の手続きをとらないと入手できないように制度化されています。
いざ申請しようとしてフリーズするのが、住所表示と地番が異なるという点です。古から、土地や建物を、行政機関ごとに独自に管理しており、歴史的に表示が異なっているという状況にあるのです。法務局の地番はブルーマップと呼ばれており、民事法情報センターが発行し、ゼンリン社の地図に青く地番が印刷されているものです。
登記情報提供サービス
いまは法務局に行かなくても、登記情報提供サービスにより登記簿等はネットで交付してもらえます。
不動産登記で1筆331円かかりますが、クレジット払いなのでオンライン決済しPDFを即時発行してもらえます。
しかも、申請システムにブルーマップ機能が内蔵されているので、地番を特定してからスムーズに入力できるとは有り難い。取扱時間も長いので助かります。
所有履歴と権利関係
仲介物件の記事に「建物」の登記内容は一通り記載されているので、私は「土地」の所有履歴と権利関係を確認します。
不動産登記簿の甲欄には、所有者が順位番号で記載されていますから、最新の所有者が、いつ、どんな原因で、どこの誰なのか見ることができます。
原因に「令和〇年〇月〇日相続」となってたら、相続物件です。あわせて、乙欄の根抵当権が抹消されているか否か確認してください。仲介物件の場合、原因に「令和〇年〇月〇日弁済or解除」と表示されており、売買のため根抵当権が抹消されているはずです。
さらに、私は記載事項に出てきた人物や銀行支店をネットで検索して、関係性を調べる作業を行い、プリントアウトし現地調査に備えます。
そして「ヒューミント」へ
現地へ行き、ここまでの把握内容を確かめることが、仲介業者に接触しないでできる調査の区切りとなります。
売り物件の外観を見ることは仲介業者に断る必要はありません。また、現地に行く目的は、外観を見たり近所の人の話を聞くことなので、手ぶらで、肩の力を抜いて大丈夫。読者は、ネットで売りに出ている物件を見に来たという正当な理由を擁しているからです。
正午前後に行くと外に何人かはいるでしょう。通行人が居ない時は、一番きれいなお宅をピンポンしてみましょう。読者が「あの家が売りに出ているのですが、どうですか?」と水を向けるだけで、近所の住人がいろいろと教えてくれるはずで、意外な事実を知ることもあります。決して悪い話ばかりではなく、近くにスーパーができるよみたいな朗報かも知れません。
まとめ
仲介物件といえども、土地建物の仕入れとして、自分から見たり聞いたりする雰囲気は味わえたでしょうか。
ゼロから起業する場合、本稿の調査手法「不動産情報・登記簿・現地踏査」の3点を用いるのが低コストで無駄がないと思われます。
いざ、欲しくなるような相続物件が見つかった時、どのように収支計画を立てるのかを、次稿で考えてみましょう。
続きは⑶収支計画