【起業ハウツー】一戸建て賃貸のススメ(その3)
一戸建て賃貸を5項目に細分化し、項目ごとにお伝えします。
一戸建て賃貸の定義
一戸建て賃貸について、私の定義は5項目あります。
①相続物件を購入し、
②建物の3要素である躯体・電気・設備を点検のうえ、
③新規居住者が気になるであろう箇所を、
④補修または交換する自前施工を行い、
⑤空き家を一戸建て賃貸とする。
本稿では①相続物件について記します。
相続物件
被相続人のご逝去に伴い、相続により取得なされた土地建物について申し上げます。
相続時点において、相続人は自分の居住している場所を確保していることが多いため、いざ血縁者の土地建物を相続させてもらってもプラスアルファ的な感覚を抱くのではないでしょうか。言い方を変えれば、相続財産は積極的に移住したいと思うような土地建物にはならないのではないでしょうか。
空き家問題の原因のなかには、このような発生メカニズムも含まれていると推察されます。一方で、住んでいない土地建物の固定資産税及び都市計画税をきちんと納付しておられることと存じます。
空き家の劣化の進行
しかしながら、およそ空き家は時間がたつほど加速度的に劣化が進むものです。典型的な部分として、屋根の日焼け、そして水道管の腐食が挙げられるでしょう。ぱっと見には気が付かないまま、家屋の劣化が進んでしまうところが相続人には悩ましいかも知れません。
プロである私自身も物件を購入した後、はじめて気が付く所ばかりでした。屋根の日焼けは目視できるのですが、天井のシミが雨漏りかスガ漏りか結露か特定できず、塗り直しは外注丸投げなので費用がかさみました。
また、上水道の腐食は、鋼管を専用機器で測定しないと良否がわからないはずですが、水道業者が一瞥しただけでダメ出しされた物件もありました。
放置は修理不能
空き家について、私は有効活用を標榜しているものの、年余にわたり放置してしまうと、一戸建て賃貸として修理できない状態になってしまうことをご理解ください。
いざとなったら更地にすればいいという御仁もおられるのですが、木造一軒家を取壊すのに120~150万円もの金額を要し、かつ、良心的な解体業者を見つけることは容易ではありません。そして、旭川市は、地区によって土地の需要が極端であり、宅地の流動性に乏しいところもあるため、更地を売却できる見込みは限られていると考えられます。
数字で説明いたしますと、相続物件を127万円かけて解体し更地にしたところで、100万円でしか売却できなかった時、仲介費用が33万円持ち出しとなります。
しめて計算すると、売却代金100-解体費用127-仲介費用33=△60なので、手取りはマイナス60万円となります。なにより、売却まで結構な年数が経っていることを見逃せません。
それでしたら、修理して活用できるうちに、数十万円で手放した方がプラスとなり宜しいのではないでしょうか。
相続物件への提案
相続物件について、活用の予定がなければ、思い切って売却し、縁を切り、租税公課の納付を終わらせることを提案します。
なにより、建物の所有者は無過失責任であることから、管理義務のほか、夏季の雑草や冬季の積雪による事故がついて回ることが心身ともにご負担となることを申し上げます。
施設賠償責任保険という建物の安全性の維持管理の不備を補償する損害保険があり、空き家も加入できるのですが、あいにく契約している方を見聞きしたことはありません。
相続人への提案
私の知る限り、相続物件を高く売ろうとしている方は、まず売れ残らせてしまいます。
ご自身の目標を高額売却におく場合は、売主の言い値で仲介業者は広告募集してくれるため、時間をかけてでも、お好きにして問題ないでしょう。
だけれども、相続物件を手放すことを優先する方には、売れ残らない方法を選択したほうが現実的な気がします。
要は、売却までの日数を短くすることと、雑草と積雪のトラブルから完全解放されることの2点を重要視するかどうか。
私が買取りする場合、どうしても低額となりますが、無条件で売買し、無過失責任を引継ぎます。
状態によっては提案を見送る
私が、空き家の相続人と接触して、その状態を口頭で確認する機会がありましたら、必ず聞くことが2点あります。
ひとつは、屋根の状態です。
北海道では「木造亜鉛メッキ鋼板葺」が主流ですが、それ以外でも、屋根の良し悪しや構造は問題とはなりません。
大事なのは、天井にシミがあるかどうかです。もし見つけたら、住んでいた方に詳しくお話を伺います。雨漏りか、スガ漏りか、はたまた結露か、記憶を辿っていただき、原因を探ります。
そして、直せそうなら大幅ディスカウント。もし、漏れる原因箇所が特定できないなら、その物件はパス。傷んでいる分だけ、屋根の修理はお金がかかるし、雨漏りをしっかり直せる業者は限られているからです。
もうひとつは、シロアリの有無です。
東日本ではヤマトシロアリ、西日本ではイエシロアリが多く、中古物件では売主の瑕疵担保責任となるため、仲介業者が神経をすり減らすセンシティブな問題です。
ヤマトシロアリは駆除できる可能性がないともいえませんが、柱を取り換える覚悟が要ります。イエシロアリは無理ゲーレベルで、そのコロニーは巨大すぎ、すでに建物の躯体は激しく痛んでいるためです。
以上の2点は、建物として解体相当であり、もしも仕入れたら一戸建て賃貸というビジネスの致命傷となります。すみやかに見切りをつけ、なにも提案してはいけません。
まとめ
相続物件を取得することが、このビジネスモデルのスタートとなることがご理解いただけたでしょうか。
しかし、購入する物件はダボハゼ的に何でも良いわけではありません。
取得価額を見誤って相当の修理費用がかかる物件を、ついつい高額売買してしまうと、コケる第一歩になるとも言い得るからです。さらに、高額になってしまうパターンは、屋根やシロアリに限らないのが相続物件といえるでしょう。
購入する物件について、どのような土地建物を選定するのかは続編⑵調査手法として稿をあらためます。さらに、「高額」とはどういうことか続編⑶収支計算にて説明いたします。
本編では、引き続き定義②~⑤を掘り下げますので、お付き合いください。
つづきは(その4)
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