【起業ハウツー】一戸建て賃貸のススメ(その4)
一戸建て賃貸を5項目に細分化し、項目ごとにお伝えします。
この記事では、躯体・電気・設備の点検について説明します。
一戸建て賃貸の定義
一戸建て賃貸について、私の定義は5項目あります。
①相続物件を購入し、
②建物の3要素である躯体・電気・設備を点検のうえ、
③新規居住者が気になるであろう箇所を、
④補修または交換する自前施工を行い、
⑤空き家を一戸建て賃貸とする。
本稿では②建物の3要素について記します。
建築基準法の改正
建物は、見方によっては規制の塊といえます。
いざ建物を新築しようとすると、まず建築確認申請という書類を公庁に提出し、建築確認済証をもらってのち着工のうえ、仕上がったら完成検査を受けて、検査済証を受け取ってから完成引渡しという諸法令となっています。
その建築確認申請の基準が、緩くなったり厳しくなったりするのが改正で、かつて大きな転換点がありました。
昭和56年(1981年)の建築基準法の改正は、同年5月31日までに確認申請を受けた建物は「旧耐震」、同年6月1日以降の確認申請を受けた建物は「新耐震」と呼ばれています。
相続物件は古い建物ばかりなので、ほとんどは「旧耐震」なのですが、これからは「新耐震」も出てくるかも知れません。さしあたり、もし「新耐震」ならば物件の価額が若干高くなり、売買契約書が煩雑になるという知識を持っていてください。
なぜかいとえば、市場に流通している物件を仲介業者経由で購入するのではなく、相続物件を相続人である売主と直接売買することを想定しているからです。
躯体の修繕費と耐用年数
躯体とは、建物の基礎と外側、そして内側の見えない部分のことです。
新築では厳密に定義するものの、中古物件では構造体を修理しないのであまり関係のないものです。
さて、取得価額の計算上、屋根や壁といった建物本体のほか、私は窓や間仕切りといった付属物も躯体に含めています。予算管理上、一つの計画で修繕費のうち資本的支出が取得価額の50%を超えると耐用年数の簡便法が使えなくなるためです。
耐用年数とは、取得した建物を何年で費用化するかを区分したもので、木造建物は新築だと22年となっており、22年経過後の中古に対して資本的支出を50%以下に抑えると「簡便法」が適用でき耐用年数4年となります。
要は、壊れたものを直す費用は必要経費となりますが、使えるものを取り換える費用は資本的支出にあたり、半分を超えて取り換えてしまったら全体の使用期間が新品並みになるという税法上の考え方です。
いまはピンとこなくても大丈夫なので、話半分で結構でしょう。
電気
コンセントやスイッチは古いタイプのままとなっていませんか。
電気工事は有資格者でないと施工できないため積極的に外注しましょう。私は第二種電気工事士の資格を取って自前で交換しています。
パナソニックのコスモシリーズは素敵で、見栄えが良くなるうえに、少しお高いですが全部交換しても修繕費として必要経費におさまります。
照明器具は、LED灯を備え付けた方が親切だと思います。新規居住者は、手持ちの照明があっても、そのまま使うでしょう。
光ファイバー工事は、プロバイダー経由でないと一切やってくれません。賃貸借契約時に、借主が敷設した場合の買取保証特約を付けるなど、導入の機会を見逃さないようにしましょう。
設備
住宅内部の設備はいろいろありますが、台所の整備、トイレの更新、フロ場の改修の3点を、どこまでやるか見極めます。
交換で済めばラッキーですが、相続物件は交換するのが難しいものがあります。頻出するのが洗面台で、昭和の住宅は流し台の横に洗面台があるケースが多く、風呂場へ移設することが難しいです。
オーナーとしては思案のしどころで、私もよく悩みます。そういうときは、もし自分が借主としてn万円の家賃で住むならこうしてほしい、という設定をし、ここまでやるぞと決断しています。
なぜ点検するのか
賃貸目的で相続物件を購入しても、躯体の経年劣化、電気設備の老朽化、水回りの陳腐化といった状態のままでは、新規賃貸借いわゆるリーシングが困難です。
なぜなら、売買直前まで物件に人が住んでいたとしても、その人が慣れていたり我慢していた部分がたくさん残っているためです。
SUUMO画像を見たところ、貸主の都合丸出しの、女性なら気になるような部分が多いため、そのような賃貸物件へ借主が秋波を送ることはないでしょう。
世帯向けの賃貸住宅は4LDK以上が望ましいのですが、世帯の引越し先が幾つかあるとき、優先順位をつけるのは、ほとんど女性ではないかと思われるためです。
そのためにも、点検を新規居住者の目線で行うことで、新規居住者が気になるであろう箇所を特定していき、シーリングに向けて舳先を切ります。
まとめ
本稿は、実は「もし自分が借主としてn万円の家賃で住むなら」という明確な視点で相続物件を点検しているところに妙があります。
n万円という設定も、物件の取得価額と修理費用とを足した総取得価額を見積り、その価額に対して収益還元法で家賃を逆算して求めることから、はっきりとした計算根拠があります。
どのように総取得価額を見積り、修理予算を管理し、収益還元法により家賃を算定していくのかは続編⑶収支計算、先立つものは続編⑷資金調達として稿をあらためます。
本編では、引き続き定義③~⑤を掘り下げますので、お付き合いください。
つづきは(その5)