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【起業ノウハウ】一戸建て賃貸業⑶収支計算

前回を読み返す⑵調査手法
最初から読み返す【起業ハウツー】一戸建て賃貸(その1)

収支計算をする前に
 欲しい物件が見つかった時、ビジネスとして成り立つか否か、収入と支出とを試算して利益を出すため、物件ごとに収支計算を行います。紙に書いたら「収支計算書」となり、簡単な算数なので慣れると「暗算」します。
 続編第3回は、まず不動産投資の全体を把握するために、不動産投資の現状についてデータから読み解きます。

不動産投資は期待利回り5%
 一般財団法人日本不動産研究所の第49回不動産投資家調査を見てみましょう。調査書2ページをご覧ください。ワンルームタイプもファミリータイプも札幌圏の期待利回りは5.0%です。

ありきたりの収支計算
 試みに、種銭2,000万円・期待利回り5.0%で収支計算を組むと、収入は100万円しかなく、支出が管理費5万円、租税公課9万円の合計14万円で、差引86万円の利益という収支計算となります。
 手持ち資金2,000万円を投資しても、インカムゲインが86万円しかないあたり、ありきたりではないでしょうか。
 手持ち資金ではなく、もしも全額借入により資金調達していれば、金利2.0%で40万円の利払いがありますので、差引46万円の利益になります。
 なるほど、借入金があっても収支計算では利益を計上しています。しかし、元利均等35年で返済していくことから年間返済額79万円のために現金86万円を充てなければいけません。その場合、差引7万円のみ手元に残るので、もしも空室が発生した場合は月額家賃約8万円がなくなることから、2か月目で返済資金に事欠きます。 

うまい話あるある
 グーグルで「不動産 投資」と検索すると、うまい話がいっぱいヒットします。自宅に居ながらにして不動産投資なんて如何なものかと思いましたので、読者に代わって私がアクセスした限り、いずれも期待利回り「一桁台」で算盤を弾いていたことを報告いたします。
 語弊があるため中略しますが、空室リスクが考慮されていないあたり「うまい話」と揶揄される所以でしょう。

収益還元率
 期待利回りと収益還元率は厳密には逆ですが、計算結果が一緒なので、続編では一応同じとして話を進めます。
 収益還元率は、本編その1でも取り上げた重要指標であり、①土地建物の取得価格、②修理費用、③月額家賃、の3母数により率が変動します。
 こちらの続編では、私が実際に計算している収支計算表を解説することで、読者の理解を深めていただければと存じます。


目標は収益還元率20%以上

 一戸建て賃貸は、小なりといえども収益還元率20%以上を目指します。
 この目標の達成には、自らの慣れと工夫が必要ですが難しいことはありません、とあらためて申し上げます。
 20%以上としている理由は、リスク対策が2つあるからです。
 ひとつは、取得価額を見誤ったり修理費用が膨らんだ時でも、収益還元率が10%を切ることはないことです。
 もうひとつは、事業拡大し新規の賃貸物件を借入金で全額賄ったとき、家賃収入に占める返済割合を4割以下に抑えてあるので、空室に一定の期間は耐えられることです。

私の取得価額計算表を解説します

 読者には、私の使用している簡易エクセル表をご覧いただき、ナマの事例により収支計算の感覚をお伝えいたしたい。お手数ですが、PDF形式でアップロードしましたので宜しくお願いいたします。

1 取得費用一覧

 まず、消費税はすべて税込表示です。表の項目には、課税、非課税(土地)、不課税(収入印紙)、混在(所有権移転費用)がありますが、細かいことは気にしないで、支出金額を入力していきます。黄色が入力スペースで、欄外の簡易数式により判定が表示されます。
 さて、土地建物2,000,000円を購入すると、諸費用として不動産取得税等170,000円もかかりますので、取得に係る費用一覧に加えておきます。
 ただし、170,000円は土地建物の取得対価ではなく必要経費にあたるため、帳簿上は別の勘定科目となります。
 以上を貸借科目と必要経費とに振り分けしたところ、本物件の取得価格は2,025,000円となります。

2 資本的支出と必要経費

 相続物件はそのまま賃貸に出せないので、必ず修理が必要です。
 本編その5で提唱しているリメンド(reMend)は、世帯で住むとき気に入ってもらえる位の修理することであり、故障した部分があれば同クラスの製品に取り換えるなど、内覧者の初見を先読みします。
 また、本物件について、建具は間仕切りの増設、天井は張替えのため、建物に含まれます。
 なお、ストーブ工事は外注にお願いしていますが、トータルで20万円未満の設備工事となるため必要経費にしました。

3 合理的按分計算

 土地建物の取得価額は2,025,000円ですが、適正に帳簿へ反映させるため、土地の価額と建物の価額とに按分しなければなりません。
 公益社団法人全日本不動産協会のホームページにあるように、私は固定資産税評価額で按分しています。
 この物件に関しては、土地は50年以上経過した造成地のため安く、一方で建物は建替えに伴う築浅なので高いという特徴がありました。

4 耐用年数判定

 合理的按分計算で算出した、建物の取得価額に対して、簡便法が使えるのかを判定します。
 この建物は築28年なので、木造住宅の法定耐用年数22年を経過しています。建物の取得価額1,627,620円に対し、50%相当額813,810円までは、資本的支出をしても、簡便法が適用できます。
 この物件は、躯体に係る施工が少なく、建具と天井のみの造作代金138,750円だったため、簡便法を適用し、中古資産の耐用年数4年(法定耐用年数22年×残存率20%、端数切捨)となります。

5 みなし贈与となる場合

 耳慣れない専門用語だと思いますので、少し長くなりますが敷衍させていただきます。
 相続税法第7条には低額譲受が規定されています。「時価」よりも「著しく低い価額」の対価で財産の譲渡があった場合に、時価と対価との差額がみなし贈与とされます。みなし贈与とは、民法上の贈与には該当しないものの、贈与と実質的に同様のため、課税公平の観点から置かれている規定となります。
 問題は、「時価」及び「著しく低い価額」が明確に規定されていない点にあったのですが、有名な地裁判決において、相続税評価額は時価の80%だから低いものの「著しく低い」とは言えない、と整理されました。

 本物件の「時価」は、取引価額、市場価格、不動産鑑定評価額のいずれも存在せず、市場流通性の低い土地建物であることから、相続税評価額が時価相当と判断しました。
 時価と売買価格との差額919,043円が算出されましたが、贈与税基礎控除110万円以下のため、申告不要となります。
 このお題は一戸建ての売買取引では必須の知識なので省略できません。話が長くて申し訳ありませんでした。

6 収益還元法による月額家賃

 月額家賃を、収益還元率20%で計算します。
 本物件では、土地建物2,025,000円+全修繕費375,000円の合計2,400,000円に対して、収益還元率20%を計算しますので、年額家賃480,000円と計算されます。
 したがいまして、月額家賃40,000円という設定になります。

まとめ

 自分で読み返し、表と数値で示すことはリアルだと感じました。
 本物件は、口コミで月額家賃5万円のリーシングに至ったので、身をもって一戸建てのニーズを実感できたとお伝えします。
 収益還元率20%を見込んでいたので、仮に修理費用がプラス600,000円膨らんだ時、土地建物の総額3,000,000円となり、月額家賃40,000円としても、収益還元率は16%になるので、6年ちょっとでモトを取れる計算をしていました。
 さて、次の記事では、自己資金いわゆる「先立つもの」について解説いたします。

続きは⑷資金調達

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