【起業ノウハウ】一戸建て賃貸業⑽修理計画と業者手配
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本稿では、私の提唱するリメンド(reMend)をおさらいするとともに、自前施工と専門業者との仕切りについて考察します。
もう一度、修理計画の必要性
相続物件の取得後に修理が必要な理由は、もし何も手を加えず、ありのままの状態で賃貸を募集した場合、新規賃貸借いわゆるリーシングが困難だからです。
家屋には、売買直前まで相続人が住んでいたとしても、その人が慣れていたり我慢していた部分がたくさん残っています。
そのような状態の家屋に、引っ越してまで住みたいと思う世帯はまずいません。なんで前の住人に倣って我慢するのって抵抗感がハンパないです。
そこで、取得物件を、世帯の方が思わず転居したいと思っていただける水準へ引き上げるために、修理することが必要となるのです。
リメンド(reMend)を提唱します
リメンド(reMend)は、事業者が行う修理なので、客観性があります。
その客観性とは「世帯の方がこういうのでいいんだよと感じてもらえる線引き」のことです。
世帯の方は、なにも新築に住もうとしているわけではないので、家賃と比べての割安感や清潔感があればサクっと納得するし、逆に、内覧して我慢できない箇所が見つかればスルーします。
したがって、借主の目線で我慢できない箇所を削っていくことで、賃貸物件の快適性を引き上げ、インセンティブを強め、内覧希望者を増やすという方法論こそ、リメンド(reMend)の本質となります。
客観性は賃貸物件に共通する
客観性について掘り下げると、「ないと嫌だ項目」と「あったら嫌だ項目」とが拮抗していると考えられます。
家賃が高いと「ないと嫌だ項目」が増えるものの、私の提唱するリメンド(reMend)において家賃は低いため「あったら嫌だ項目」を減らすことに軸足を置いています。
あったら嫌だ項目
借主から言われなくても修理する項目として、次の6点が優先され、もし残っていたらリーシングが難しくなるでしょう。そもそもオーナー自身が住みたくないと感じるはずです。
⑴塗装が剝げてみすぼらしい
⑵室内に異臭がする
⑶台所が狭くて小汚い
⑷トイレの便座が古くて気になる
⑸フロ場が暗くて使いずらい
⑹照明がなくコンセントやスイッチが古臭い
ないと嫌だ項目
優先項目を直している間に、建物や周囲の気が付かなかった情報が入ってきますので、自分の能力と物件の賃貸力にとってのPDCAサイクルが、現場でランダムに循環します。
新しい居住者のために、こういうところは変えた方がいいと思う箇所も出てきますので、思いついた閃きをメモに残しておき、あとで再考しましょう。
修理計画とは気になる箇所への対処
ここで話を戻して「あったら嫌だ項目」すなわち共通する修理6項目のポイントを説明します。
なお、自前施工が無理、すなわち自分一人で出来ない工事だとわかったら、はやめにヘルプサインを専門業者へ出しましょう。
また、業者手配は飛び込みがディフォなので、朝方か夕方に会社に行き、取引先も後ろ盾もない起業者ですと自己紹介して、三顧の礼をもってお願いいたします。
計画表は作らずに予算管理する
さて、リメンド(reMend)は自前施工を旨とします。
自分一人で工事することから、施工が一日に何度も変更となり、部材が足らず順番が前後したり、やらないままにすることもあります。
何もかも思ったようには進まないことから、計画表は作るだけ無駄になると強調しておきます。
ゆえに、修理計画は、自らの目利きに基づき、予算管理をアバウトに行うだけで良いと申し上げます。収益還元率20%を意識しましょう。
確かに、何軒も輻輳して修理する時は、別個に管理するノートを残しておかないと進捗を忘れてしまうでしょう。しかし、最初から複数軒を並行修理することはありません。
なけなしの工具・器具・備品は、ひとつの現場に集中して配備しないと、段取り良く工事できないと直ぐにわかるはずです。
1 外壁の塗装
自前施工のカテプリ、つまり費用対効果が最も高い工事が、塗装です。
とりわけ外壁は第一印象のアピール度が違います。建物によりますが、足場を組まず、梯子を伸ばして軒天まで延長ローラーが届くようなら、ぜひ自前施工を行うべきです。
壁を掃除し、養生テープやマスキング材はできるだけ幅広の製品を採用し、水性シーラーで下塗り、塗料は原色と同じ系統で2度塗りします。
施工で留意すべきは、①養生は仕上がりに直結するので丁寧に貼ること、②飛散防止のためハケは使わず細いローラーのみで仕上げること、③塗れない穴やヒビは乾いてから同色のシーラントで埋めること、④どのような資材が必要となるのか自分の流儀を見つけること、の4点です。
ただし、「屋根の塗装」は自前施工の範囲外です。
足場を組み、2液式油性塗料を高所で扱うことは、自分一人では出来ないので、専門業者に任せましょう。
打ち合わせでいろいろと確認されますが、色は原色、施工水準は10年もてばヨシとしてお願いします。
2 室内臭の除去
におい。動物が本能的に感じる警戒信号で、人間もまた然り。
誰しも、残り香があったりカビ臭のする建物に住みたくないと思っています。
まっさきに解決すべき課題ですが、自前施工では技術と経験を要する工事となります。RセッシュやFァブリーズでは間に合いません。
根治解決は、壁紙、室内塗装、そして天井に及ぶこともあります。なにしろ一軒一軒具合が悪いので、どこまでやるのかはケースバイケースです。
前の住人の生活空間に異臭は染みついています。
基本的に自前施工の対応範囲で、部屋は上から壁紙を貼って消します。板壁には薄手の室内用木工塗料を塗ります。押し入れの石膏ボードがカビ臭ければ水性塗料、ベニヤ板には油性木工塗料を塗ります。天井の臭いやシミを消したい時は、ダイケン製ダイロトーンを貼ります。室内施工なので養生を徹底してください。
畳の部屋が腐っている場合、小垂木とスタイロフォームで下地を作り、杉材を下張りしてからフローリングを打ちます。その時に小垂木の水平を取ることを忘れないでください。
いずれも、予備知識なしでは失敗必定なので、ブログやyoutubeを見てもわからなかったらコメントをお願いします。
3 台所の整備
台所は、女性の視点で整備します。
予算と日数があれば全部取り換えても良い分野ですが、そうともいかず、限られた予算で最新かつ快適な設備を導入しましょう。
台所は混合栓が主流で、浄水器内蔵タイプが高級品です。
単独栓の場合、私は三菱ケミカル製クリンスイMONOを設置しています。個人的にも使っているタフで維持費安な高性能浄水器です。
台所シンクには、調理台と洗い物台の2つがありますか。洗い物台がない場合は、クリナップ製ステンレスパイプ棚を上部に設置します。
時間があれば、研磨剤とポリッシャーを使ってステンレスを磨きましょう。見た目が全然変わります。
包丁ケースは汚いので必ず新品にします。
台所の排水口は密封されていますか。テープが巻けないようなら、セメダイン製すきまパテで封印します。
4 トイレの更新
お手洗いも、女性の視点で更新します。
書きずらいのですが、男性の尿はねは周囲に飛び、便座の横についているスイッチが汚れて触りたくないという女性は多いです。
その影響かどうかわかりませんが、2021年のLION社からの報告では60.9%の男性が座りシッコしています。
一方で、パナソニックは墨汁によって研究し、立ちションを前提としたアラウーノという新型便器システムを開発しました。私もSⅡを自宅に設置して使っていますが、設計思想に感心したものの、フチなし便座ではないあたり改善の余地があると思います。さらに便座はABS樹脂のため尿酸カルシウムが付着しました。ヒンジも弱く、フタが何度も外れます。ブロー装置の音も官能的ではありません。
トイレの更新は、壁紙の交換を推奨します。そのために、一度タンクは外した方がいいと思います。
床のクッショクフロアを張り替えるには、便座を撤去し、床フランジという基底部品を外すため、慣れが必要となります。ただ張るだけなら便座の周りを切り取るパターンもありですが、必ず透明シーラントで防水しましょう。
壁紙も床もやらないときは、せめて瞬間式のウォッシュレットに交換してみてはどうでしょうか。ただし、貯湯式のシャワートイレでスイッチ一体式は安価なものの、冒頭の話を思い起こしていただきパスです。
5 フロ場の改修
お風呂は女性が沸かしたり掃除したりするものです。
しつこいようですが、女性の視点で改修しましょう。
ボイラーを交換するか否かというポイントから始めます。
自前施工の範囲外となるため、協力会社を見つけて相談することとなります。都市ガスが安い地域以外は、灯油ボイラーによる給湯システムを検討しましょう。意外な提案も出されることがあると思います。起業したばかりの頃は、協力会社の良心を信じるしかありません。
ほか、洗面台が古いと見るたび気になります。積極的に交換すべきもので、専門業者へ部材支給すれば2万円程度で取り換えてもらえ、古い洗面台も廃棄してくれます。トータル8万円ぐらいの支出でも、とても喜ばれる設備のひとつであり、750ミリより600ミリの大きさが使い勝手がいいです。
台所の横にある洗面台を、浴室兼洗濯室に移設する工事は上級レベルですが、やってみたくなることがあります。その時は協力会社に相談しましょう。
なお、フクビ製あんからを床タイルへ貼ったり、フクビ製バスパネルを天井へ貼る工事は自前施工となります。浴室壁面の塗装も自前施工します。鏡も簡単に交換できます。
6 照明のLED化
2023年11月の水銀に関する水俣条約第5回締約国会議で、すべての一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入の廃止が2027年末と決定しました。
もはや賃貸住宅の照明はLEDのみの時代となったのです。家屋を賃貸する以上、対応しないわけにはいきません。
現在のLED照明は性能や寿命に対して、価格が安いと思いますし、長持ちするので早めに交換しても損はしないでしょう。
電気関係については、現場で何かと閃くことがあると思います。すぐにメモへ残しておき、あとでアマゾンや楽天で該当製品を検索して設置を検討します。
まとめ
あったら嫌だ項目のうち、主要6点を説明いたしました。
物件により、まだまだ「あったら嫌だ」はあると思われます。
リメンド(reMend)によって、「あったら嫌だ項目」を削り、賃貸物件の水準を引き上げ、インセンティブを強めることは、私の読者にしかできません。
世帯の方の立場になり、女性の視点で見直すという発想の転換は、ありきたりのオーナーにできるわけがないからです。
続きは⑾自前施工