歯科医院を開業するための費用はどのくらい必要なのか? 【歯科医院ブログ】1
■はじめに
歯科医院の開業には最低でも約5000万円が必要です。いろいろな業種がある中で、歯科医院の開業は特にお金がかかります。「テナント開業」か「戸建て開業」か、チェアユニットを何台でスタートするか等の開業時の条件によって必要資金は大きく変動します。それだけ歯科医院の医療機器や設備は高額であるということです。
したがって、銀行からの借り入れが必ず必要なので、先々の資金繰りに苦しまないように、慎重な設備投資の判断をしていく必要があります。ここでは一般的な「テナント開業」で、チェアユニット3台での開業を例として試算してみます。
■テナント開業(不動産賃貸借契約)にかかる費用
開業する場所を決め、借りるための契約をしなければなりません。手続き的には、居住用のマンションやアパートを借りる場合と同じです。家主さんと不動産賃貸借契約を結びます。敷金礼金や保証金、前家賃、不動産業者への仲介手数料がかかってきます。都市部での家賃の相場は、1ヶ月50万円くらいなので、敷金300万円、礼金50万円、仲介手数料50万円、保証会社契約料50万円、前家賃50万円で500万円くらいが必要になってきます。基本的に1ヶ月の家賃の額で変わってきますので、家賃が安い場合は賃貸借契約の際の初期費用も安くなります。
■内外装工事にかかる費用
内外装工事の相場は、およそ1500万円から2000万円は必要と言われています。歯科医院を開業する際には、一般的な店舗と違い特殊な設備工事が必要のため内装工事に多くの費用がかかってきます。チェアユニットの給排水配管工事を行うには床上げ工事が必要になり、レントゲン室には放射線の防護工事などが必要になってくるからです。
■歯科器材にかかる費用
導入する歯科器材のグレードや数などによって変わってきますが、開業時には約1500万円から2000万円が必要と言われています。仮にチェアユニット約300万円程度のグレードを3台導入とすると、バキュームシステムやエアコンプレッサーなどの工事費を含めて約1000万円が必要となります。また、次に大きな歯科器材がレントゲン設備です。近年は、デジタルレントゲン設備やCTを入れる場合が多いので約1000万円の設置費用がかかります。さらに、滅菌器、超音波洗浄機、レーザーなども必要になってきます。
■歯科治療に必要となる費用
歯科治療器具や歯科材料がこれにあたります。歯科治療ではさまざまな器具を患者様ごとに使用しますので、最低でも30セットの準備が必要です。また、麻酔や印象材、技工物の金属などの医療消耗品からマスクやグローブなども一定量をストックしておく必要があります。これらを合わせると約200万円が必要となってきます。
■開業費
これは歯科医院の開業にかかる費用のことです。開業準備のための費用と歯科医師会に入会する場合の入会金などです。開業準備費用の中には、衛生士などの人材募集費用や開業時の内覧会費用やホームページ作成費用などが含まれます。これらを合わせて300万円ほど必要です。
■運転資金
開業してから経営が軌道に乗るまでの必要な資金です。患者さんは徐々に増えていくものなので、十分な収入を得られるようになるまでに一年程度はかかります。また、保険診療報酬は、レセプトを提出してから2ヶ月後に入金です。最初の2ヶ月は、保険診療の窓口収入と自費治療だけが収入源です。その間のクリニックを運営するための不足資金を補うものです。院長の生活費も含みます。この運転資金は、1000万円くらい準備しておくのが一般的です。
■新規開業にかかる初期費用のまとめ
賃借費用:約500万円(敷金礼金、仲介手数料など)
内装外装費:約1500万円
チェアユニット:約1000万円(3台導入、工事費込み)
レントゲン:約1000万円
その他歯科治療に必要となる費用:約200万円
開業費:約300万円(開業準備費用、歯科医師会入会金など)
運転資金:約1000万円(約3ヶ月分)
合計約5500万円
■その他(戸建て開業の場合)
戸建て開業をされる場合は、上記の費用に土地代と建物建築費がさらにプラスになります。開業される場所によって土地代が大きく変わってくるのでまちまちですが、戸建て開業の場合は開業するための費用としてトータルで1億円が見えてきます。この場合は、テナントの賃貸借契約に関する費用と開業後の家賃が不要になります。
■おわりに
これまでご説明してきたように歯科医院の開業には、最低でも5000万円という多額の設備投資が必要になってきます。当然、その設備資金の多くは、銀行からの借り入れでまかなうのが一般的です。開業にともなって、院長先生は少なくとも5000万円程度の借金を負うという現実が待っています。だいたい20年返済になっている歯科医院が多いようです。この開業時に借りた5000万円を20年かけて返していかなければなりません。なので、どのような設備を導入するのか、どのグレードにするのかという選択を予算と照らし合わせながら慎重に判断していかなければなりません。そして、ここで必要になってくるのが「事業計画書」です。銀行融資の際に作成して提出しますが、この精度の高さが後々の資金繰り状況を左右します。事業計画書の精度が低いと資金繰りが苦しくなってくる可能性が大なので要注意です。開業後に資金繰りで困らないためにも、開業時の設備投資は石橋をたたいて渡るくらいの慎重さが求められます。