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なりたい欲に支配されて

 あの人のようになりたいと思って、その人に成りきって空想を続けてしまう癖が幼少期からずっとある。その”あの人”は別に芸能人でもアイドルでもモデルでもスポーツ選手でもない。
 そこらへん歩いてる人など、普通の一般人に対してである。

 あの人だったらどんな扱いをされてるんだろ、どのような賛辞をかけられるんだろうと、ただひたすら白昼夢を見るかのようにぼけーっと時間を忘れて考えてしまうことがある。あの顔と外見を得て、あの人の着ぐるみを着て、生活がしてみたい。
 子供の頃から、身近な同級生に対する憧れが強く、他人への変身願望が強い。ただ、間違えないで欲しいのは、自分がその人になりたい欲があるだけだから、別に仲良くなりたいとも話したいとも1ミリも思わない。寧ろ、その人と親しくなることで、自分のその人の差がより顕著になるから、近づいてほしくないという感情のほうが強い。
 幼少期からコンプレックスまみれで、それに縛られすぎている人生であることは間違いないんだけど、長年、滓のように溜まったこの感情はいまだになくならず、そんな夢想をしていることが30過ぎてもいまだにある。
 でも、この感覚・感情には慣れすぎているのもあるけど、嫌いなわけではない。

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