2年半の地方副業のふりかえりとその先
「本屋さんと働いてみたい」
メーカー勤務を続けながら「本屋 副業」とか「本屋 ボランティア」で検索をかけつづけていた2021年の春。Loino(ロイノ)という地方副業先をみつけられるサービスでついに見つけた副業募集。
本屋でもなんでもないのに面接で「みんなが本屋になれる社会にしたい」と熱を込めて伝え、そのパッションに期待して採用いただき、『本屋のリニューアルのサポート』がスタートした。
本屋さんのリアリティ
その書店は2つあった店舗のひとつをたたんで1店舗に従業員を集め、内装から什器やレイアウトまで大幅に刷新するという変化のタイミング。「新規事業の仕事をしてきた経験が活かせる絶好のチャンス!」と意気込んだ。
社長との毎週1回のミーティング。どんなことを大切にしているのか。何を変えて、何を変えないのか。どんな歴史があり、地域でどんなつながりがあるのか。そういった話をひとつひとつ聞いていき、半年後に現地へ訪問。
本だけでなくおもちゃも扱うその本屋さんは、お客さんと店員さんとの距離が近く、よく話をする。荷ほどきから棚入れ、コミックのパッキングまで体験させていただき、その物量に驚きつつ、こんなにも業務量がある中でお客さんと他愛もない話を笑顔でしている姿に感銘した。
一方で、本屋さんの経営は厳しい。雑誌の多くが休刊し、定期購読の読者も増えない。コミックは売れるが、なかなか小説や実用書は売れず、ビジネス書はほとんど売れない。おもちゃのほうの売上も伸び悩んでいる。本で読み、頭では分かっていたけれど「これが本屋さんのリアルなのか」とカラダでも痛感し、その尊さと危うさが身にしみた。
できたことと、多くのできなかったこと
それから2年半の間で、いくつかできたことはあった。
・社長が思い描いているリニューアルのコンセプトを整理して言語化
・近くの飲食店と協力して読書会をスタート
・インスタグラムでの集客を開始し、店員さんも個人の発信を習慣化
小さい組織ながら、社長・専務・店長・店員それぞれ立場がちがえば趣味嗜好もちがい、その間での意思疎通のズレや、期待と実態とのギャップで前に転がらないところも、第三者として準当事者だからできる発言や持ち前の情報整理力でじわじわ実行へとこぎつけられた。
一方で、できなかったことは数え切れないほどある。
・コンセプトは言語化するも、実際にリニューアルするところまで至らず
・読書会をはじめるも決まった時間に場所を確保できず、集客も難航
・インスタグラムのフォロワー数は300で頭打ちに。ペルソナを決め、インサイトを深ぼろうとしたものの実際の声を集められずに途中終了
・現地への訪問はコロナもあり2回のみ
・楽天ポイントの分析、通常閉店時間後のイベント企画は手つかず
新しいことに挑戦するハードルを下げ、まずやってみるところまではできたが、軌道には乗せられず、期待された成果を出せない。焚き付けて、動いてもらっておきながら。。正直情けない気持ちもいっぱいだ。
これからの自分ができること
苦くてしょっぱい気持ちでおわった副業だが、自分自身にも火がついた。
「本屋さんをなんとかしたい」
副業期間中、近所にある京都の本屋さん巡りでは飽き足らず、奈良や大阪に足を伸ばし、東京出張の合間をぬっていくつもの本屋さんを回ってきた。
京都の天狼院書店、レティシア書房、こもれび書店
奈良のとほん
大阪のみつばち古書部
東京のPASSAGE、ブックマンション、古書みつけ、透明書店、リーディンライティン、ROUTE BOOKS、文喫
やっていなかったTwitterもInstagramも始めてみて、本を読んでる人や読書会をしている人をみつけてはどんどんフォローしていった。吉祥寺で期間限定でオープンした「会話の多い本屋さん」にも応募して、選書をしたり現地でスタッフとして店頭になってみたりした。そうしているうちに気がついた。
「自分が本屋にならないと、本屋をなんとかなんてできない」
本を売る人、本を売る場所がある人だけでなく、読書会を開く人、本について記事を書いている人、著者にインタビューをする人、本にかかわるシゴトをしているひとたちは、みんな本屋だとおもっている。
だれかの手伝いをする、という中途半端な立場でいつづけても、なにもできないことは、前職でわかっていたはずなのに、つい尻込みして傷つかないことだけしてしまっていた。
自分がうごいて、自分がはじめる。まずは『ちょうどいい読書会ってなんだろう』というテーマで、人と本のつながる場作りからやってみる。ちょうど12月から3ヶ月間で「やりたいことをカタチにする」ための4th place labがはじまるらしいので、ここで自分がビギナーになるところから再始動だ。