「この子は顎がしゃくれています」我が家に犬が来た!
この子は何でこんなに安いんですか?
あ〜、この子、人懐っこいんですけどね、顎がしゃくれてて。
人間の世界も美醜でランクが付くように、犬の世界もビジュアルが売値に直結するようだ。
婚約者とは宮城県で2年間同棲した後、賃貸の更新をせず東京に引越して来た。
ペット可の物件を選んだのは「いつか犬を飼いたい」と話していたから。
そのいつかはきっと来年度以降だとお互いに想定していた。まずは東京での暮らしや仕事の基盤を整え、落ち着いた頃にお迎えしようと話していたのだ。
西新井に家の近くのバス停から15分ほどで行けると分かった私たちは意気揚々とバスに乗り込んだ。ボタンを押さないとバスが停まらないことに気付かず、随分と遠回りをしたが無事に目的地に着いた。
その日はアリオ西新井の無印良品で買い物をして、私が行ったことがなく彼のお気に入りだという串家物語で夕食を済ませる予定だった。
アリオの一階には大きな無印良品と、通路向かいに大きなペットショップ「コジマ」があった。
万有引力はここにあったんだ。
頓痴気なことを言いながら無印良品より先に彼はペットショップに吸い込まれていった。ペットショップでの生体販売について是非が問われる昨今である。あくまでも見るだけ、ガラスの向こうから怖がらせないように眺めるだけ。そうお互い言い聞かせ合った。
その日はお盆休みというのもあってか非常に混み合っていた。愛想の良い秋田犬、塩対応の猫、どこを見ても可愛い可愛い可愛い…そして私たちは一匹の白いポメラニアンの前で止まる。
何でこの子はこんなに安いんだろう?
13万円。他のペットと比較しても破格だった。持病があるのだろうか?
そして冒頭に戻る。
この子の顎、しゃくれてて…
結局、可愛くないと飼い手って中々見つからないんですよね。
確かにしゃくれてはいる。
しかしこれが安価な理由に直結するとは、俄に信じ難い。しゃくれも可愛いよね。むしろしゃくれているからこそ、この子は可愛いよね。
両親は3桁万円近い犬を飼っている。
弟夫婦もまた、50万円超えの犬を飼っている。この子の売値は何分の1だろうか。
私たちは迷わず家族に迎えることに決めた。決して安価だったからではない。迎えるべきは保健所の犬だったかもしれないとは、今でも正直思う。生体販売は闇が深い。私は間違えたのかもしれない。ただ、この可愛い子犬が、この子の兄弟は40万近くで売られているのに買い叩かれていたこの子が、私たちを惹きつけてたまらなかった。
この子が1歳を迎えたら、犬との生活やしつけの段取りが分かってきたら、生育に十分な環境と呼べるその日には保健所から1頭迎え入れたいと思う。
犬はたくさんのことを教えてくれる。
生き物を飼うということは、学びと癒やしの恩恵をこれほどに受けれることとは思わなかった。両親が犬を飼ったのも、弟夫婦も、皆私がとっくのとうに家を出た後だった。
犬って最高🐾
結局、契約やらなんやらに時間がかかり串家物語には行かなかった。