宇宙は鉄をつくる為に存在している
宇宙は何故生まれたのか、そんなことを考えたことはありませんか?
実は、その答えは意外なものかもしれないのです。
◆地球は"水の惑星"ではない?
地球をよく"水の惑星"と呼ぶことがあります。
確かに地球表面上の71%は水で覆われているのですが、
実は水は地球の全重量のおよそ0.02%しかなく、
地球の重量の約1/3、34.6%を占めているのが鉄なのです。
ちなみに最近の研究では、太陽のような恒星であっても、その周囲に惑星が常に形成されるわけではないことがわかってきました。
そして、地球のような惑星が形成されるためには、適切な量の金属が必要となるのだそうです。
つまり、大雑把に言えば、人類が住むことのできる惑星が形成されるためには、鉄が必要があると考えられるのです。
◆鉄は我々が生きるのに必要なもの
生物全般にとっても、鉄はかけがえのない存在です。
例えば、私たちの血液が赤いのは赤血球が赤いからであり、
その中にヘモグロビンが含まれているからです。
ヘモグロビンは鉄を中心とした構造を持っており、呼吸を通して取り入れた酸素を体の隅々まで運ぶという重要な役割を担っています。
そして運ばれた酸素を用いて、体の隅々でエネルギーが作り出されるのです。
他にも、呼吸や光合成、DNA合成、窒素固定など、生命体に必須ないくつもの機能において、鉄は中心的かつ不可欠な役割を果たしています。
鉄が無ければ地球上のほとんどの生命体は生きていくことができないと言えるのです。
◆鉄が生み出す地球のバリア
また、生命にとって、宇宙からの有害な放射線は危険極まりないものですが、これが地表面に届かないのは、地球の持っている磁場のお陰です。
そしてこの磁場は、地球内部に存在している鉄の一部が溶融し、電流が流れているために形成されているのです。
つまり地球内部の大量の鉄が、地球表層を生命にとって安全な環境へと変えていると言えるのです。
◆物質の最終到達地は鉄
宇宙の元素存在度を詳しく調べると、他の元素の相対量と比べ、鉄は特異的に多く存在しているのです。
宇宙全体においても、鉄は特異な存在なのです。
これは単に偶然なのか、あるいは何らかの必然性なのでしょうか?
その答えは、鉄の原子核の持つ安定性にあります。
鉄は全ての元素の中で最も原子核が安定しており、そのため恒星の内部で元素が核融合を繰り返しても、鉄よりも重い元素は形成されないのです。
つまり恒星の内部における核融合の最終到達地は「鉄」なのです。
鉄より重い元素は、超新星爆発など他の要因で作られますが、
その量は鉄を超えることはありません。
これは宇宙の中で鉄の存在度が高いことを示しています。
◆宇宙は鉄を繰り返し生み出す
この宇宙は最初にビッグバンという大爆発を起こして誕生したと言われていますが、ビッグバン直後の宇宙にはまだ水素やヘリウムといった物質しかなかったと言います。
多くの物質は不安定で、くっついたり離れたりを繰り返しますが、
あるところで収斂し、最終的には鉄になります。
それは先ほどもお伝えした通り、鉄は原子核が最も安定しているからです。
ビッグバンの後、惑星を形成する際に鉄が生み出され、
また、恒星の内部における核融合においても鉄が生み出されていきました。
その後、恒星が超新星爆発を起こし、その爆発物が宇宙を飛び交い、
どこかでそれが集まって、また新たな太陽系や銀河が生み出されます。
そういった事を何百億年という長い時間の中で繰り返すことによって、
この宇宙は鉄という物質を何度も生み出してきたのです。
◆いずれ宇宙はすべて鉄になる
現在の宇宙の年齢は138億年と言われていますが、
その10倍、20倍の時間が経ったとき、宇宙の物質はすべて鉄に収斂していってしまうと言われています。
本質的に宇宙は鉄を生み出すために存在しているのだとすれば、
鉄とはもしかしたら特別な意味を持った物質なのかもしれません。