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53歳から始める鉄拳8 その9

Youtubeのトップページは、過去の閲覧履歴を参照しておすすめの動画が出てくる。「へ~、おじさんって、こういうのが好きなんだ~?」と言わんばかりの嬉し恥ずかし性癖披露機能なわけだが、やはり私のトップページでは最近は鉄拳の動画が多めになってきている。

で、トップページでおすすめされている上級者と思わしき対戦動画なんかを寝る前の暇つぶしとして鑑賞するのだが、そこに出てくるキャラクターたちは軒並みカサカサというかキビキビというかシャカシャカというか、とにかくもうめまぐるしいほどに前後左右に小刻みに動きまくっているのである。トイレでも我慢してるのか? と心配になるほどに落ち着きのないその動きの気忙しさに「ほえ~。上級者ってこんなに動き回るのか~」と感心するとともに、「なんでまたこんなに動き回る必要があるのだろうか?」とその狙いがイマイチ掴めずに困惑することも多い。

スト6なんかでも、上級者はヘコヘコ、と言っては言い方が失礼かもしれないが、立ったり座ったり進んだり下がったり時には技を出してみたりと、しゃがみガードと前進後退と小技を小刻みに切り替えて間合いを調節しているそうだが、やっぱり鉄拳も格ゲーだからして間合いの調節とか左右に移動して不意の突進技を避けられるようにするとかなのだろうか。

そんで、「上級者があんな感じで動いているなら俺もやってみっか」とカサカサ動きを見様見真似で適当に試してみたが、なんか動画とはぜんぜん違う動きしかできなかった。

上級者は流れるように各種移動をスムーズに切り替えていくのだが、私の場合はギアが錆びついているような、関節痛に悩まされているような、ギクシャクした動きにしかならないのだ。

この原因は、恐らくなのだが鉄拳世界における「横移動と前ステップはいついかなる場合でもガードでキャンセルできる」という物理法則を私がイマイチ理解できていないからなのだと思う。

前ステにしろ横移動にしろ、「その最中でもガードできてガードすれば移動はキャンセルされて瞬時にガード状態に移行してその場で止まる」ということが頭では分かっているのだが指はまだ理解しきれておらず、どうしても、横移動しっぱなし、前ステしっぱなし、になってしまうのだ。

そうするとどうしてもガードが間に合わなかったり、各種移動の切り替えがスムーズにならなかったり、いろいろと弊害が出てくるのである。

実は、鉄拳というゲームは実は、「移動が難しいゲーム」だったのだ。

これはかなり盲点というか、しっかり遊ぶ前はまったく気づかなかった点なのだが、しかし考えてみれば2Dではなく3Dなわけだから、当たり前といえば当たり前な気もする。

必殺技コマンドがないから簡単だと思った?

実際、私のいる段位での試合では、前後にノソノソ動くばかりで、まあたまに前ステとか後ステとかもするけれど、横移動で避けるなんてことはめったに起こらないし、お互いすり足でにじりにじり近づいたり離れたり、付き合いたての中学生カップルのようなもどかしさを感じさせる挙動が多い。

こういうゲームをしていると、どうしても「攻撃する」ことや「防御する」ことに意識が向きがちなのだが、これからは「移動する」こともしっかり鍛錬していかねばならない。

話は変わって、いや変わらないのかもしれないが、鉄拳におけるレバー操作は前回も書いたようにかなりシビアである。リリには「バラードステップ」という、相手の懐にもぐりこむような挙動がある。コマンドは236のレバー操作で、いわゆる波動拳コマンドである。

このコマンドにはアーケードのスト2から何十年と馴染んできたわけなのだが、こと鉄拳においてはうまく出ないことが多い。いや、ステップ単独の入力であれば別に問題なくできるのだが、派生のパンチやキックを出そうとすると、どうしても別の技が誤爆しがちである。

私がこのステップからいちばんよく使う技は、236LKの「ワラッ!」って言いながら出る蹴り上げである。ダウン中の相手にも当たり、かなりでかいダメージを叩き出せるので、ステップからはこのキックばかり使っている。

ところが、この技を236LKと最速で出そうとするとめったやたらと9LKや3LKに誤爆するのである。つまり、レバーが6でうまく止まらず、LKを押した時点で3や9と同時押しになってしまい、結果的にそちらの技が出てしまうのである。

前回も書いたが、鉄拳はパラノイアのように技数が多い割に攻撃ボタンが少ないため、必然的に各種レバーとの同時押しに技が割り当てられている。したがって、ストシリーズにおける「あんた実際にはレバーが9に入っちゃってるけどまあパンチ押してるから波動拳にしといてやるよ」といった忖度は存在せず、鉄拳界においては「ああ? 236って押してるからステップは出しといてやるけど、今あんた9と同時にLK押したよなあ? じゃあライジングキックで構わねえよなあ? 文句あんなら9押すんじゃねえよ!」といったスパルタンな判定が下されてしまうのである。

いやまあ実際、ステップしてからライトゥー出したり踵落とし出したりすることもあるわけだから、そこは確かにそうでないと困るわけだが、この「きっちり6で止めて同時にLKを押す」ってのがパッドだと遊びが少ないせいかあるいは方向キーが円状になっているせいか、なんかやたらと難しく感じるのである。

だから、対人戦においても、いや、対人戦においてこそ、心理状態が通常とは異なっていることも重なり、意図している技と実際に繰り出されている技の齟齬がかなり多く、「んんんん~~~! ああああ! もおおおお!」みたいに己の操作の不甲斐なさに悶絶することが少なくない。

移動にしろ技にしろ、とにかく鉄拳は「レバーの俊敏かつ正確な操作」が予想以上に求められている。まあとりあえずはこのことが認識できただけでもよしとして研鑽を積んでいくしかあるまい。


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