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angenoir165
いたずらを灯す夜
ふわり。
手のひらに乗るほどの光が、宙を飛んでいく。夜闇を照らしながら飛ぶ光は、角を曲がる幾人かを飛び出しては驚かすということを繰り返した後、不意にある場所を目指して飛んでいった。
ある屋敷のバルコニーにたどり着いた光は、伸ばされた手に迷いなく戻る。
「お帰り~」
語尾を伸ばす話し方で、光に声がかけられる。光はちかちかと瞬いた後、消えた。
「こら。魔法をいたずらに使うんじゃありません」
嗜める声に灯の魔法使いの少女はぺろりと舌を出し、笑う。
「灯は、導くものだもんね。惑わしちゃダメか」
「そうね。そして、灯は誘うものでもあるわ」
どこへとは言わず、二人は夜空を見上げた。星灯りはただ静かに沈黙していた。